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副業ヘルパー

ヘルパー経験があるからこそ 親の訪問介護を頼む際に気をつけたいこと

消耗品の在庫確認・補充は地味に手間がかかる
消耗品の在庫確認・補充は地味に手間がかかる

新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めました。今回は、ヘルパーとして働く中で考えた「自分が訪問介護を頼む側になったときに心がけたいこと」についてです。

「遠距離介護は可能」という実感

超超短時間勤務の訪問介護ヘルパーとして、4年近く働いてきましたが、ひとつの収穫は、「自分自身の親の介護の見通しが立てられるようになった」ことです。
私の担当するお客様たちが、遠距離介護の実例を日々、見せてくださっているからです。
あるお客様は、平日5日は朝と夕にヘルパーが伺い、日中はデイサービス。休日はお子さんたちが交代で親の様子を見に来るという形をとっていました。
お子さんが1人、かつかなりの遠方で1カ月に1~2回しか実家に来られないというお客様の場合、1日3回、毎日ヘルパーが入っていました。訪問看護も入っていました。
こうやって在宅介護は回していくのか……と、その現場の一端を担いながら学ばされています。

わが家の場合、母はすでに特別養護老人ホームに入所していますが、実家には父がいます。82歳の現在、まだ元気ですが、これから先はわかりません。本人は、「近所に年寄り仲間がたくさんいるし、住み慣れたこの家、この土地から離れたくない」と言っています。
実家は、私の家から公共機関で1時間以上かかる場所にあり、同居の予定はないので、介護が始まれば「遠距離介護」となります。私自身は、家庭があり、仕事もしているので、毎日実家に通うことはできません。
父の願い、どれだけかなえてあげられるか。いざ要介護となったとき、どれだけ在宅生活を続けられるか…。もちろん状況次第ではあるものの、ヘルパーをはじめ、在宅介護サービスを駆使すれば、けっこうな期間いけるんじゃないかと、私は思っています。

我が家は、実家の父が要介護になったら遠距離介護に
我が家は、実家の父が要介護になったら遠距離介護に

訪問介護は家族の関わりが重要

とはいえ、ヘルパーさんたちに任せきり、というわけにはいきません。ヘルパーをやっていて常々実感することですが、やっぱりご家族がどう関わられるかで、介護の質が変わってくるように思います。食事に何をお出しするかについても、ご家族の「これを食べさせてほしい」という考えで決まってくるからです。
また、自分が訪問介護を頼む側となったら、とにかく「ヘルパーさんが働きやすい環境」を整えたいなとも思っています。ご家族の協力で、ヘルパーとしてとてもやりやすい仕事になったときが、多々ありました。反対に、「ここをもう少しどうにかしていただけたら、ありがたいんだけどな…」と思うときも、正直言ってありました。
せっかく来ていただいたヘルパーさんには、気持ちよく仕事をしてほしい。ただでさえ時間の限られる中、よけいな手間をかけずに済むように。そのために、こうしようと思っていることがいくつかあります。

「ヘルパーさんが働きやすい環境」を整えるために

物を減らし、部屋を片づける

一番はここかな、と思います。床に出ているものが少なければ、動きやすくなり、それだけで時間短縮になります。介護される側が歩くときも、つまずく心配が減ります。車椅子を使うようになれば、床を広々しておくのは必須になるでしょう。
物が多いと、探し物が大変です。下にあるものを取り出すために、上のものをのける必要もでてきます。そうした細かい手間が積み重なって時間がとられます。
とくに、介護の中心になるベッド周りは、ヘルパーさんの動きを邪魔しないように、よく片づけてゆとりを作りたいものです。

週に1回は実家に行き、食品などの在庫を確認

自分が実家に行けるのは週に1回、多くて2回が限度かなと思います。日々の介護はヘルパーさんに頼るとしても、食品の買い出しは、家族でやります。ヘルパーさんが「足りない」となって困ることのないように、日持ちのするものを十分な量、ストックしておくようにします。
洗濯洗剤やおむつ、ティッシュなどの消耗品の在庫も、切らさないようにこまめにチェックします。
その他、足りないものはないか、変えたほうがいいことはないか、随時確認するようにします。

消耗品の補充に目をくばる

すごく細かいことなのですが、実はけっこう重要な点だと思っています。在庫量を把握しておくのはもちろんのこと、洗剤が残り少なくなっていれば中身を入れておく、ティッシュも残り少なければ新しいものを近くに出しておくなど、消耗品の補充自体も忘れないようにします。
介護サービス中、洗剤等が「切れた」となったとき、在庫を探しに行く手間、詰め替える手間が発生します。それが地味に時間を使い、介護サービスの流れを悪くするものです。

その他、掃除機で吸ったゴミを捨てておく、洗濯機の洗濯槽が汚れると洗濯物に汚れがつくので定期的に清掃するなど、細かいポイントはいくつもあります。

要望は最小限に

最後はこれです。訪問介護が時間との戦いであることは、身にしみて知っています。限られた時間の中で、これだけはしてほしいことに絞り、「してもらわなくても大丈夫」なことはお願いしない。先に記した消耗品の補充などが最たるものです。
ヘルパーさんには余裕をもってサービスに入ってほしいと思います。そして、その余裕の中で、本人とていねいなコミュニケーションをとってもらえるとありがたいなと思います。訪問介護の利用は、身の回りの世話をしてもらうことだけではなく、ひとりで家にいる高齢者の話し相手になってもらえることも大きな要素です。

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