食べて元気に爽やかに まぐろのタルタルと新じゃがで楽しい食卓づくり
撮影/志水香代
インクルーシブパティシエの志水香代さんが、年齢や障害の有無などにかかわらず誰もが同じ食卓を囲んで楽しめることを目指した「インクルーシブフード」のレシピを紹介します。今回は、見た目ものどごしも爽やかな「まぐろのタルタル」と、「新じゃがマッシュ&クリーミーアボカド」です。ポイント食材は塩とオリーブオイル。身近な調味料で滑りを調整し、みんなで食卓を楽しみます。
それぞれのお口の機能に応じてかんだり、のみ込んだりできる食べ物の形態は異なるため、以下の「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021 」のコードをご参照のうえ、嚥下(えんげ)機能や咀嚼(そしゃく)機能などお口の機能に気になる点があれば、歯科医師や医師など専門家の指導の下でお楽しみください。
- まぐろが食べたい、お寿司がたべたい。そんなお声を多く聞きます。 いつも食べている硬さのご飯に合わせて、具を調整して作ります。水分がでてきてしまったら、非加熱のゲル化剤(ミキサーゲル)を振り入れて離水した水分をまとめ、口腔内の張り付きをなくし、滑りをよくすると食べやすくなります。手毬寿司やレンゲに載せた一口お寿司にすると、見た目にも楽しくなります。一緒に食べられるメニューでテーブルを囲むと、みんなの笑顔が溢れていました。
<ゲル化剤ととろみ剤>
「ゲル化剤」は食品や水分をゼリー状やムース状の塊(固形化)にすることで飲み込みやすくするものです。一方、介護食でよく使われる「とろみ剤」は、水分にとろみをつけることでゆっくりと安全に喉を通らせる機能がありますが、固形化はしません。それぞれの特徴に合わせて使うことが大切です。
まぐろのタルタル(コード3~4相当)
材料(1人分)
まぐろ 100g
オリーブオイル 小さじ1
大葉 2枚
塩 少々
ワサビ チューブ適宜
にんにく チューブ適宜または1かけ
作り方
- まぐろを切る(ポイント:筋を切ることと、長さを短くする)。包丁でたたく。
- 塩を振り、まとまるまでスプーンで混ぜて冷蔵庫で冷やす(色の変わりを防ぐため)。
- 大葉とにんにく(チューブ可)をみじん切りにし、2に入れ、わさびとオリーブオイルを合わせる。
<Point!>
舌で押しつぶしができる程度にする場合(コード3相当):
まぐろのたたきを強くし、にんにくはペースト状のチューブを使ってみましょう。
あえて噛む力を高めたいときは:
にんにくのみじん切りを使いましょう。きゅうりを角切りにして歯ごたえをだすのもいいですね。
歯茎ですりつぶせる程度にする場合(コード4相当):
まぐろのたたきを大きめにする。きゅうりを角切りにしていれても美味しいですよ。
<料理の工夫>
まぐろのたたき具合でコード別に調整が可能です。
オリーブオイルで口腔内の滑りをだし、塩で適度な粘りを出します。 大葉やわさび、にんにくなど、魚の臭み取りには香りのあるハーブやペッパーがおすすめ。
ポン酢を加え、あっさりと食べやすくするのも暑くなる時期はいいですね。
100円ショップで販売しているセルクルやグラス、一口レンゲを使用して、盛り付けに工夫すると食べやすい形態維持や行事に合わせられます。楽しく簡単にできますよ。
新じゃがマッシュ&クリーミーアボカド(コード3相当)
材料(2人分)
アボカド 1/2個
レモン汁 小さじ1/2
新じゃが芋 1個(80g程度)
お出汁 40ml
(※牛乳や豆乳でもできます)
青のり ※お好みで
マヨネーズ ※お好みで
作り方
- アボカドを皮からはがし、ビニール袋に入れ揉みつぶす。酸化して黒くならないように、レモン汁で色止めをする。
- 新じゃが芋は皮つきで電子レンジで温める。楊枝がすーっと入れば出来上がり。
- 柔らかくなった新じゃが芋にお出汁を入れ、お好みで青のり、マヨネーズを少々入れる。
<料理の工夫>
新じゃがとアボカドは、潰し具合を変えられます。じゃがいもは油脂を少し入れることで滑りとまとまりができます。アボカドは熟成の程度や切り方によって、お口の機能に合わせた「噛む」をつくることができます。いずれも普段の状態に合わせて作ってみましょう。
新じゃがマッシュにはゆで卵をザルでこしたものを入れると、タンパク質が摂れて旨味が増すのでおすすめです。