福岡から届いた「素敵便」
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
昨年12月、クリスマスまであと数日という日のことです。
講演のために訪れた福岡市で出会った女性がいました。
雪がちらつく中、講演会の翌日に出かけた福岡市認知症フレンドリーセンター。
建物のワンフロアにある空間には、
認知症のある私たちにとって生活のしやすいデザインや表示、
そして商品などが紹介されています。
センター長を務めている党一浩さんが「サインを書いてください」と私の著書を持ってこられたので、ページを開いたら、なんとびっくり!
私の担当の若年性認知症コーディネーター来島みのりさんのサインが、私より先に書いてありました。みんなで大笑いしてしまいました。
私は、約3年前から空港ユニバーサルデザイン委員会に参画させていただいています。
その活動の中で伝え続けているデザインや表示の大切さを、この空間では確認することができます。
ですから、これらの大切なことを、皆さんに知っていただける機会の場になることだろうと感じていました。
その時でした。
とてもおしゃれで素敵な女性が現れました。
お互いにちょっとびっくりしながら、あいさつをしたように思います。
その方が、認知症当事者の、のぶこさんでした。
この日のそもそもの目的が、のぶこさんにお会いすることだったのです。
センター内での皆さんとの交流会に参加させていただいた後、
一緒にみんなで、キャナルシティ博多(福岡市の大型商業施設)まで歩いたことが、
とても楽しい記憶として残っています。
そして、お別れをした後も、
時折、スマートフォンでのメッセージでやりとりをする機会がありました。
そんなある日、いただいたメッセージには
「福岡の味覚を届けましたので召し上がってみて下さい」
とありました。
メッセージには、支援スタッフの方と久しぶりに出かけたデパート巡りのことが
つづられていました。
疲れてしまってすべてを巡ることは、かなわなかったけれど、
久しぶりにデパートの雰囲気を味わい楽しかった、といったことが、
短いながらも、その時の様子とともに伝わってくる内容でした。
こんなに離れた東京にいる私のことを思い出してくださり、
福岡の味覚を届けてくださった「素敵便」。
私は、講演会で必ず伝えておりますが
認知症と診断を受けた後も、私たち自身は何も変わりはないのです。
夜になり、自分時間になって改めて、のぶこさんから届いた素敵便に心がしみました。
のぶこさんのお人柄と、
これまでどのように過ごしてきたのかという人生の歴史が感じられ
とても優しい気持ちになりました。
人生と認知症の先輩でもある、のぶこさん。
そして、
認知症になっても
その人らしさは残っているということ。
ぬくもりあふれる素敵便に込められたお菓子を大切に口に入れるたびに、
福岡で楽しかったこと、
福岡の仲間たち、出会った方々、何よりものぶこさんを感じることができました。
※この連載に、エピソードを掲載するにあたっては、のぶこさんに許可をいただいております。ありがとうございます。