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父から1日に何度も電話 スマホが鳴るだけでストレスに【お悩み相談室】

スマートフォンで電話をかける高齢男性、Getty Images
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認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.数年前に母が亡くなり、父(80代)は軽度の認知症で老人ホームに入居しているのですが、1日に何度も電話をかけてきます。無下にはできませんが、着信音が鳴るだけでストレスですし、電話に出られないとスタッフに「娘と連絡が取れない」と言うので困っています(50代・女性)

A.誰もがスマートフォンを持つようになってから、こうしたお悩みはとてもよく聞くようになりました。認知症の方は電話をかけたことを覚えていなかったり、理解力や判断力の低下によって、相手が仕事中かもしれない、食事中かもしれない、など相手の都合を考えられなくなったりすることがあります。根底にはさみしさや不安もあるかもしれません。

ストレスを緩和する対策としておすすめなのが、電話をかけてもらう日時を「月・水・金曜日の18時」など、相談者の都合であらかじめ指定しておくことです。紙に書いてお父さんの居室の壁など目につきやすいところに貼っておき、スタッフにもその日時が近くなったら「もうすぐ電話をかける時間ですね」などと声がけしてもらうように頼んでおくのです。日時を決めたうえで、相談者から電話をかけることにするのもいいと思います。軽度の認知症でも予定を自己管理するのは難しいことがあると思いますが、電話をすることを予定として“見える化”したり、相談者から電話をかけたりすることで着信音が鳴るストレスは、軽減するのではないでしょうか。

それでも早朝や夜中にかかってくるということであれば、認知症が進行している可能性があるので、一度主治医に相談することをおすすめします。

避けたいのは、お父さんからスマホを取り上げること。連絡手段がなくなったとなると、混乱してBPSD(行動・心理症状)が悪化し、「連絡が取れないなら会いに行く」と娘さんのことが心配になり勝手にホームから出て行ってしまうかもしれません。

今はお父さんからの電話がストレスかもしれませんが、認知症が進行すると電話をかける操作ができなくなったり、スマホを何だか認識できなくなったりするので、お父さんからの着信はなくなっていくと思います。そうなると逆にさみしくなるものではないでしょうか。認知症が進行したある方は、スマホを電話だと認識できなくても、“娘とやりとりしていた思い出がある大事なもの”というイメージが残っているようで、宝物のように持ち歩いていました。今のお父さんはスマホを操作できてコミュニケーションが取れるわけですから、相談者の無理のない範囲で対応できるといいですね。

【まとめ】老人ホームにいる父から1日に何度も着信があり、困っているときには?

  • 曜日や時間帯をあらかじめ決めておき、その日時になったら電話をかけてもらう、あるいはこちらから電話をかける
  • 約束した曜日や時間は紙に書き、居室の目立つところに貼っておき、スタッフからも声をかけてもらう

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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