生きがいなんてどこに? 探し合う仲間の輪が広がった先にある幸せ
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
やることがない。
デイサービスも肌に合わず、
家にいても、なにもやることがない。
食事の時間ばかり気になって、
うろうろしては、家族に煙たがられる。
だから、ついイライラして、
気も荒くなっていく。
「認知症の進行予防に、
生きがいを見つけたらいい」と
医者にも家族にも言われるが、
退職した今、そんなものどこにある?
若いときはたしか山登りが好きだった。
でも今は、山への興味も湧かない。
気力が薄れていくのを誰かに止めてほしいのに、
どうしたらいいのかわからない。
ふいに、自宅の壁に目がとまる。
山の写真が飾られていた。
——こんなことをするのは、妻しかいない。
もう登れやしないし、思い出も薄れている。
それでもなんだかこの気持ちを
大切にしてみたくなった。
この胸にともった、小さな希望を。
「ひとりでいる時、なにもやることがなくて困っている」
認知症があるご本人や、
またはその様子を知るご家族から、
そんな悩みをよく聞きます。
特に、認知症があるご本人さんは、
日々の不便に自信を失うこともあるがゆえ、
「日々の生きがい」や「お気に入りのルーティン(日課)」が、
より、大切になってくるのです。
人生の余暇ができたとき、なにをするか。
誰もがその過ごし方を、思い浮かべたことがあるでしょう。
とはいえ、新しく生きがいを見つけたり、
または生きがいにつながるかもしれない、
好きなことや趣味を、ご自身で思い出すことが難しくなったりしている場合、
やはり、そばにいる人のサポートが必要になってくるようです。
ただ、それを、介護するご家族だけがになうのは、
荷が重すぎる気がします。
だからこそご家族だけで難しい場合は、ご本人に関わる人たちの手を借りて、
みんなで模索するのがよいように思います。
そんな輪がまわり始めたとき、
ご本人の意欲が、様変わりしてゆくのがわかるでしょう。
生きがいを探しあう関係。
それは認知症がある人だけでなく、
周りの人をも、幸せへ導くのではないでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》