認知症とともにあるウェブメディア

フレイルでもフルタイムで働き続けることで要介護認定のリスクを抑制 3.6年間追跡調査で判明

Getty Images

65~84歳の東京都大田区在住の男女を3.6年間の追跡研究を行ったところ、フレイルであってもフルタイムで働く人は少なくなく、働くことが身体機能の維持に寄与し、新規の要介護認定を抑制することが分かりました。東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典副所長らの研究プロジェクトによるものです。藤原副所長は「フレイルな人でも慣れた仕事や通勤を続けることで身体機能の維持につながります。つまり、フレイルであっても、何らかのかたちで、フルタイムで仕事をする人は介護予防につながるということを示しています」と話しています。

フレイルでもフルタイムで働き続けていた人は新規要介護認定を57%抑制

これまでの藤原副所長らの研究などで、高齢者の就労や社会参加は心身の健康に好影響を及ぼすことが知られています。フレイル予防の一つにも「社会参加」があります。一方、これまでは元気な高齢者のみが進んで働き、就労による効果は限定的とみられてきました。そこで今回は、高齢者の就労状況とフレイルの有無が、要介護認定の主たるリスクに及ぼす影響について追跡調査をしたものです。東京都大田区に住む64~84歳の男女6386人を対象に、3.6年間の追跡調査を行い、分析したものです。

3.6年間で新規に要介護認定を受けた人は806人(12.6%)おり、そのうち、働いていない人が16.8%、フルタイムで働いている人が5.6%、パートタイムで働いている人が5.8%、不定期で働いている人が11.2%でした。フレイルでない人たちでは、働いていない人と働いていた人を比較すると、フルタイムとパートタイムが、新規要介護認定を31~34%抑制しました。フレイルな人たちにおいて、フルタイムで働いている人のみが、新規要介護認定のリスクを57%抑制しました。

要介護認定抑制のポイントは、規則正しく、責任を持って、その人らしくフルタイムで働く

研究で分かったのは、フレイルでない高齢者は、フルタイムでもパートタイムでも、働くことが新たな要介護認定のリスクを抑制することです。また、フレイルの高齢者は、フルタイムで働くことで、身体機能の維持を通じて要介護認定のリスクを抑制することができる可能性が明らかになりました。不定期で働くのでは効果がみられないことも分かりました。藤原副所長は、全国各地で行われているさまざまなタイプの「通いの場」で、「就労的活動」の大切さを示すものとして注目しています。

藤原副所長は「フレイルでない人は、パートタイムで働き、空いている時間にボランティアや趣味などの活動をしている場合が多く、社会活動の総量は維持されやすいです。一方、フレイルな人は就労以外の社会活動をする人は必ずしも多くありませんでした。フレイルな人でも、できる限りフルタイムで規則正しい生活をした方がいいという結果です、ボランティアや趣味の活動もいいですが、規則正しく、責任を持ってその人らしくフルタイムで働く方が、介護予防の効果が出やすいということを示しています」と話しています。

*この記事は、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典副所長への取材及び、「日本の地域在住の高齢者におけるフレイル・就業状況と主因別にみた要介護認定発生との関係:3.6年間の前向き研究」を参考に作成されています。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

認知症とともにあるウェブメディア