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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

高齢の母も気に入りそう…やっと見つけた施設に立ちはだかった問題とは

認知症あるある?自分の希望と違うことはすぐに忘れる「なんで一人暮らしはあかんの。なんでー」今日だけで10回くらい話してるっす。けっこうメンタルやられます

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒。骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。母の住まい探しも再開です。

お悩みあるある「老人ホーム入居を嫌がる母」我が家の説得法

「親が老人ホームに入るのを嫌がり困っています」というのは介護相談で多い悩み事だと聞きます。私の母も同様でした。90歳を過ぎて認知症を発症し、幾度か転倒もしましたが、自分ではまだまだひとり暮らしができると思っていたのでしょう。初めて一緒に関西で高齢者住宅を見学に行ったときには、「あんなお年寄りばっかりのところに住むのは、まだ早い」と完全に拒否モード。(このときのお話は『初めての高齢者住宅見学 母娘の衝撃と「それはむちゃ」と思ったこと』をご参照ください)
あのまま暮らし続けていれば、高齢者施設への入居に相当抵抗し続けただろうと思います。

その後、状況が一転して、首都圏の兄宅へ引き取られた母ですが、すぐに「関西へ帰りたい」と言い出しました。毎日何度も私に電話をかけてきてはゴネまくる母。姉兄も母の介護をゴネましたが、当事者である母もかなりのものでした。
母の希望に沿ってあげたい気持ちはやまやまですが、自分たちの生活も守らねばなりません。姉兄とも相談して、母が関西へ戻るなら「高齢者施設へ入居する」を条件にしました。介護は、介護者が犠牲になりすぎないよう、どこかで折り合いをつける必要があると思います。根気強く母を説得して、ようやく「一番の希望“関西で暮らす”がかなうなら、高齢者施設へ入居する」との合意を得ることができました。
ただし、認知症の母はすぐに忘れてしまうので、同じ説得を何度もくり返すことにはなりましたが…。
ちなみに「私の家に住む?」と聞くと“秒”で断られました。狭い娘の家で気を遣いながら暮らすよりは、高齢者施設のほうが気楽だと思ったのかもしれません。

私が住みたい「一人暮らし」のできる高齢者施設

サービス付き高齢者住宅の中には自由度の高い施設も「トイレ、部屋、洗濯機、浴室乾燥機付き風呂」要介護でも快適な一人暮らしが出来そう

高齢者ばかりがいる施設に拒否反応があった母も、マンションタイプであれば抵抗が少ないのではないかと考えました。高齢者施設の検索サイトで、私の自宅から自転車で通える場所に、キッチンとお風呂の付いたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を見つけました。

見学4:2022年12月 B市のサービス付き高齢者向け住宅

最寄りの駅からは徒歩で5分程度。近くにはスーパーやカフェなどがあり、生活しやすそうです。5階建てで、部屋数は約25室。同じ建物内に居宅介護支援事業所と訪問介護ステーションがあります。外観は、普通のマンションと変わりません。

<施設情報>
●敷金:家賃の3カ月分
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、生活サービス費あわせて約17万円+介護保険利用料+電気代、医療費、生活消耗品代など実費
●部屋:個室約25.00㎡ トイレ・洗面台・浴室・IH付きキッチン・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:自社配食サービスで提供
●人員配置:夜間は1人
●特徴:部屋にリズムセンサーあり

母はまだ首都圏の兄のところにいたので、見学は私1人で行きました。当日、出迎えてくれたのは気さくな感じの50代男性です。いただいた名刺には“営業”と書かれていました。入り口にはフロントがありますが、大仰な飾りなどはなく、高齢者施設の受付というよりはクリニックのような雰囲気でした。
まずは、資料をもとに施設の説明を受けました。特徴として言われたのは、生活の自由度が高いこと。たとえば外出・面会は自由。説明を受けている間にも、外出する入居者が数人いました。食事についても自由で、昼と夜など2食もOK。スーパーで買ってきて食べる人もいるそうです。ホームに入っても「好きなものを食べられる」のはポイント高いっ。
かかりつけ医も変える必要はないとのこと。老人ホームでは、ホーム指定医にするよう言われることが多いので、これも母にはうれしい話です。
ググっと前のめりになる気持ちをおさえて、安全面について聞きました。見守りは朝と夕方の声かけのほか、ケアプランにそって施設内の介護・看護スタッフがサービスを提供してくれるとの説明を受けました。部屋に設置したリズムセンサーで入居者の異常を早期発見できるシステムもあります。夜間スタッフは1人で、手厚いとはいえませんが、及第点だと思いました。

一通りの説明が済み、施設見学に移りました。外観もそうでしたが、建物内部も廊下につけられた手すり以外は普通のマンションのように見えます。2階には、居宅介護支援事業所と訪問介護ステーションの入った部屋があり、少しだけケアマネさんと話すことができました。とても朗らかな感じのいい女性で、母とも相性がよさそうな気がしました。
住居となる部屋は1Kですが、スペースは広く、トイレはもちろん、キッチンとお風呂も付いています。
多くの老人ホームでは、入浴は週2日しかないようですが、部屋にお風呂があれば毎日でも入浴できます。お風呂好きの母はよろこぶでしょう。洗濯機を置くスペースもあり、ここなら介護サービスを利用しながら母の希望する「一人暮らし」に近い生活ができると思いました。すぐにでも申し込みをしたかったのですが、立ちはだかったのは“費用”。想定の予算をオーバーしたため、家に持ち帰って姉兄に相談せざるを得ませんでした。

【感想&後日談】

見学当日に説明をしてくれた男性の名刺には“営業”と記されていました。その後、何軒かの高齢者施設を見学してわかったのですが、複数の施設を運営する会社では、そのエリアの営業担当者が施設案内をすることも多いです。「この人は感じよいから、施設もよいハズ」と思ってしまいそうですが、営業担当者は“施設のスタッフ”ではありません。契約手続きが終了すると、営業担当者との付き合いは終了です。ですから、契約の前に必ず、施設で実際に働く施設長や介護スタッフと話をする機会をつくった上で、入居の判断をすることをおすすめします。
さて、母はこのサ高住に入居できたのでしょうか…。
やっと及第点の母の住まいを見つけたため、姉兄をなんとか説得して、契約申し込みをしようとした矢先のことでした。肝心の母の具合が悪くなり、入居はあきらめざるを得ない状況となってしまいました。この施設の売りである自由な暮らしが、母には厳しくなってしまったのです。高齢者の健康状態はかわりやすいもの。施設入居には、タイミングがあるなあとつくづく思いました。母も乗り気だっただけに、今でも残念です。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

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