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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

初めての高齢者住宅見学 母娘の衝撃と「それはむちゃ」と思ったこと

お年寄りばかりの光景にひるむ親子 思わず固まる母

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒。骨折→入院→認知症発症という経過を経て、突如、母の新たな住まい探しを迫られることになりました。

母の新たな住まいを探し始めることになったものの、具体的にどうすればよいのかわかりません。母は、骨折後に要介護3になったため、要介護度としては特別養護老人ホームに入れる状態でしたが、特養は空きがなく、順番待ちとなりそう……。また、身体的には順調に回復していたこともあり、特養に入れたとしても、しばらくして要介護度が下がり、退所を迫られてしまうのではないかという心配もありました。
さらには、コロナ禍で、母も私もケアマネさんに会えない日々が続いてもいました。そこで、とりあえず知人に教えてもらった、母の家近くの“サービス付き高齢者向け住宅”(だと思っていたもの)を見学することにしました。

見学1:2022年7月 母の家の近くのサービス付き高齢者向け住宅(?)

3階建てで、部屋数約40室のこぢんまりとした施設。できてから15年ほどたっており、建物のくたびれ感は否めませんでしたが、母が住み慣れた場所を離れなくてすむのが何よりでした。かかりつけの医師を変えなくてよいのもありがたい。

玄関を入ると、受付のそばにベンチがあって、入居者とおぼしきおばあさまが座っておられ、ニコニコして「ここはいいところですよ~」と声をかけてくださいました。
ここで突然、告白します。私は性格がひねくれています。なので、このときも、おばあさまの言葉を「教えてくださってありがたい」と思うと同時に「ひょっとして施設の人に言わされている?」とも疑ってしまったことを白状します。ごめんなさい。

責任者として対応してくださったのは50代前後の優しそうな男性。当時はコロナ禍ということで内部見学はほとんどできず、小さな部屋で説明をうけました。

●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、介護保険負担額 あわせて約15万円
●部屋:個室12.00㎡ トイレ・洗面台・収納スペース・エアコン
●食事:施設内で調理
●アクティビティー:季節のイベントなどあるが、コロナ禍で取りやめている
●人員配置:夜間は1人

私は入ってすぐ「わ、お年寄りばっかり」と圧倒されてしまいました。これまでデイサービスを利用したこともなく、お年寄り慣れ(?)していない母も同様だった模様。入り口ですでに体がこわばっているのが感じられました。わかっていたことなのですが、はじめて高齢者の集団生活を目の当たりにした衝撃はけっこう大きなものがありました。

施設については、内部をしっかり見学できなかったので具体的にはわかりませんでしたが、責任者の方の説明を受けて「ここはムリ」と思ったポイントがありました。部屋の中に、緊急通報装置(いわゆるナースコール)がなかったのです。

夏になったにもかかわらず、エアコンをつけずに母が部屋に一人でいたことが心配で“もう、一人暮らしは無理”と思ったのが、母の新たな住まい探しのきっかけでした。

私「なにかあった場合どうすればいいですか?」
責任者「携帯電話で受付に電話してもらえればスタッフにつながります」

“それはむちゃでっせ”と心の中でつっこむ私。
転んでも起きあがれない緊急時に、ケータイを探して電話しろと?
たとえ手元にケータイがあったとしても高齢者が操作できる状況とは思えません。
90歳を超えた母が安全・安心に住むことは難しそうだと感じました。
丁重にお礼を伝えて、初めての見学を終えました。

「うううっ電話・・・」非常時に電話をかけるって、お年寄りにとってかなり高度な要求では・・・「ムリやな」

感想&後日談

ずいぶんあとになって知ったのですが、サービス付き高齢者向け住宅だと思って見学した施設は、「高齢者賃貸住宅」でした。
サービス付き高齢者向け住宅は、「サ高住」とも呼ばれ、最近、知られるようになっています。法律で、都道府県などに登録することが定められており、登録には部屋の広さやサービスなど、一定の基準があります。サ高住が誕生したのが2011年。今回の施設はそれより早くから運営していることなどから、サ高住の基準外だったのです。
都道府県によっては、サ高住には、緊急通報装置(ナースコール)の設置を求めているところもあるようです。今回の施設になかったのは、基準外だったことも関係していたのかもしれません。「基準にあてはまらない=悪い施設」ではありませんが、そういった基準があるというのは知っておくと、施設探しの際に参考になる(かも)と思いました。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

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