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「生きているのがつらい」と繰り返す母にイライラします【お悩み相談室】

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東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.両親は2人暮らしで、母(76歳)とはこまめに連絡を取り合っているのですが、よく「長生きしたくない」「生きているのがつらい」といったメッセージが送られてきます。もちろん心配ではありますが、食欲はあるようですし、頻繁に聞かされるとイライラして気が滅入ります(47歳・女性)

A.お気持ち、よくわかります。お母さんに食欲がなく、やる気がないといった状態だと心配ですが、そうではなさそうなので、余計にイライラしてしまうのかもしれません。

お母さんは「さみしい」「自分のことを見てほしい」といったお気持ちがあるのだと思います。高齢になると人間関係が減ってしまう傾向があるので、さみしさを感じるのは自然なことです。お母さんの気持ちをくみとって、メッセージに対してやさしい言葉を返せば、その瞬間だけでもお母さんの心は満たされるかもしれません。ただし、時間が経つと同じことの繰り返しになる可能性があります。それだと相談者のイライラは解消されないですよね。

そこで提案したいのが、相談者のほうからこまめにメールを送ることです。「今日食べたランチがおいしかった」「雲の形がきれいだった」「近所にかわいい猫がいた」など、ささいなことでいいので、気分が明るくなるような話題のメールを送ってはいかがでしょうか。写真や動画つきだと、よりいいかもしれません。

デイサービスでの話になりますが、訴えの多い利用者の方に対しては、つい介護職のほうも接するのを避けてしまうことがあります。例えば目を合わせると何か訴えられるのではないかと危惧して、その利用者の前を通るときは目を合わせずにさっと通るといったことです。しかし、そういう方の前を通るときこそ、立ち止まって肩をさすったり、こちらから声をかけたりしたほうが、訴えは減る傾向があるのです。

お母さんからメールが来る前に、相談者のほうから積極的にメールを送るというのを意識してほしいと思います。

一緒に暮らすお父さんに、夫婦間のコミュニケーションを増やしてもらうとさみしさは軽減するかもしれませんが、長年の夫婦関係がありますし、関係性を変えるのは難しいと思います。地域の高齢者サロンや体操教室に参加するなどして、家族以外の人間関係を広げられるといいですね。いきなりお母さん1人で参加するのはハードルが高いかもしれないので、最初だけでも相談者が一緒に行けるといいと思います。

人と交流するなかで生きがいを見つけられると、お母さんのこの先の人生が、より充実したものになると思います。

【まとめ】高齢の母から「生きているのがつらい」といったメールが頻繁にきて、気が滅入るときには?

  • ささいなことでいいので、気分が明るくなるようなメールを相談者のほうからこまめに送る
  • 地域の高齢者サロンや体操教室などに一緒に参加して、お母さんの人間関係を広げてもらう

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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