認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

特養で暮らす父「最期は自宅で…」を叶えてあげられない【お悩み相談室】

ノートに書き物をする高齢男性、Getty Images
Getty Images

東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.地方で一人暮らしだった父(89歳)の認知症が進み、現在は特別養護老人ホーム(特養)に入居しています。実家はそのままなので、整理していたところエンディングノートのようなものが見つかり、そこに「最期は自宅で過ごしたい」と書かれていました。父の最後の望みを叶えられないと思うと、とてもつらいです(58歳・男性)

A.相談者は、お父さん思いの優しい方ですね。お父さんはなぜエンディングノートを書いていたのでしょうか。想像するしかありませんが、息子さんに思いを伝えたくて書いたのではなく、そのときの自分の気持ちをただ書き留めておきたかっただけではないでしょうか。もし息子さんに読んでほしいという気持ちがあったなら、書いてすぐに渡したり、ノートのある場所を事前に知らせたりしたのではないかと思うのです。

多くの人は「最期は自宅で過ごしたい」と考えるものです。しかし、それはあくまで可能な状況であればといった意味合いで、子どもの生活を犠牲にしてまで最期を自宅で過ごしたいと願う人は少ないのではないでしょうか。親が子どもに対して望むこととして優先順位が高いのは、「自分自身の人生をしっかり歩んでほしい」「幸せに生きてほしい」といったことだと思うからです。子どもの幸せを願うのは親として当然のことなので、あえてエンディングノートに書かなかったのではないかと思います。

最後の望みを叶えてあげられなくて申し訳ないと思うその気持ちは、面会時に接するときに愛情や優しさとなってお父さんに伝わるはずです。逆に「家族が頻繁に面会に来るお父さんは恵まれている」「わざわざ面会に来てあげた」といった気持ちで接すると、それも伝わり、お父さんは尊厳が傷つけられたような気持ちになるのではないでしょうか。

そうした意味でも、エンディングノートでお父さんの思いに気づけたことは、とてもよかったと思います。相談者はこれまで通りご自身の生活を大事にして、時間があるときにお父さんの面会に行ければ十分だと思います。

【まとめ】特養に入居している認知症の父。「最期は自宅で過ごしたい」という望みを叶えられない

  • 子どもの生活を犠牲にしてまで最期を自宅で過ごしたいと願う親は少ない
  • 望みを叶えられなくて申し訳ないという気持ちは、お父さんと接するときに愛情や優しさとなって伝わる

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア