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幸せケアプラン

推し活だってOK ケアプランには“トキメキ”や“充実感”を盛り込もう

CADL(文化的日常生活行為)楽しみ、趣味、お世話、人間関係、仕事、参加

公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。けれど、どのようなことが記されているのか、どんな目的があるのか、案外、知られていないのではないでしょうか。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、「幸せケアプラン」づくりを指南します。

前回までにケアマネのみなさんがケアプランをつくる時に使う基本用語ADL(日常生活における基本的動作=生きるための行為」、IADL(手段的日常生活動作=暮らしの行為」について説明してきました。それぞれに「個別性=自分流」があり、どのような生活習慣で暮らしてきたのか、が影響します。

今回は「CADL」です。
またまた「なんやねん?」「なんでっか?」(関西弁)とツッコミを入れたくなる英語の4文字。
実は、私が17年前に考案した「専門用語」です。
英語表記は次のようにしました。
「Cultural activities of daily living」
日本語では「文化的日常生活行為」と訳しています。具体的には「趣味、楽しみ・愉しみ、役割・お世話・お手伝い、仕事、人間関係、参加・交流、こだわり」などのことです。
「心地よさ、充実感、幸せ感、ときめき」と私は説明しています。

なぜ、私は、CADLという定義と理論が必要だと考えたのか?
それは、これまでの介護現場で利用者を支える視点といえば、もっぱらADLとIADL、健康管理中心だったから。つまり「生きるための支援」と「暮らしの支援」「カラダの支援」のみだったからです。

もちろん、いずれも生きていくにはとても大切な要素。でもそれだけ(例:排泄介助、入浴介助、食事介助)で果たして、ご本人は「生きている充実感や生きがい」を感じることができるだろうか? 便秘が解消されたり、オムツ交換が終わった時に一瞬「爽快感」があったりしても「生きがい」は生じるだろうか? 痛みやしびれ・かゆみ・嘔気が緩和・抑制されることで、イライラした感情は消えたとしても、それが人生の充足感につながるのだろうか?
私のモヤモヤ感は解消されませんでした。

では、CADL的要素は無視されていたのでしょうか?
いえいえ、実はCADLの内容である「生きがい、趣味、楽しみ、こだわり」という欄はケアプランの中にもあったのです。しかし、残念なことに、利用者のフェイスシート(利用者基本情報シート)にあるこの欄は、ほんの数文字程度か空欄がほとんどなのです。

「こりゃ、アカン!」と私は思いました。
「ケアマネさんも慣れてきたら書き込むだろう」と予測していましたが、それは期待はずれでした。
ならば「私が定義してみよう」と20年前に「文化性に着目」し「CADL」という概念を整理し、17年前から著書や研修で活用を始めました。

ケアマネのみなさんの反応は?
「これこそ、本人らしさですよね!」「この意欲動機づけシート(CADL用質問シート)で聴き取ると表情が明るくなり、ご自分の愉しみや趣味を話していただけました」という声が今もたくさん届いています。
ケアプランも「グッと作りやすくなりました」という声もたくさんもらいます。自分のCADLを意向として語ってもらい課題に設定してプランニングすると、ADLやIADL、健康管理が目標や手段になるからです。

充実感と心地よさ(幸福感)支え手(介護者・家族・仲間)、元気になる、目標

例えば、このようなケアプランはいかがでしょうか?
■意向・課題・・・1年後、〇〇推し仲間のAさんとロックグループ○○
武道館コンサートを楽しむ
●長期目標
・客席からステージに向かって立ったままコールをあげられる。
●短期目標
・座位の固定ができ、10分の立位を取ることができる。
・白内障治療で視力が回復し、ステージパフォーマンスが見られるようになる。
・右腕の動きが良くなり、ペンライトを左右に振れるようになる。
・お気に入りのロックファッションで表参道を30分歩けるようになる。

どうでしょう?
とってもワクワクしませんか?

CADLでケアプランを作るメリットをまとめてみました。
その1:「めざす目標」がはっきりする。
「趣味の再開」だけでなく、披露する(出店、発表)、競い合う(勝ち負けを楽しむ)、企画する、実現する、など多彩なゴールが設定できます。
その2:「多彩な顔ぶれ」が増える。ADL支援や体調管理では、支える人々は介護・医療専門職がメインになりがち。趣味なら趣味仲間や家族、趣味のお店のスタッフさんなども支え手さんになります。
その3:発想が「できる(できそうな)こと探し」に変わる。
介護・医療の専門職のみなさんだから、その人の趣味の世界が皆目見当もつかないのも当たり前。ならば趣味仲間などの支え手さんに相談し知恵と力を借りればいいだけのことです。
その4:チームが「まとまる・元気」になる。
自分が好きな趣味や愉しみのためにみんなが手伝ってくれるならご本人が前向きになるのは当たり前。ケアチームの顔ぶれに、趣味の仲間などが加わるのでにぎやかになります。
その5:思っている(見る、聞く、話すを含む)だけでご本人のココロは「充実感と心地よさ(幸福感)、ときめき感」に包まれる。
心身の機能が奪われても、認知症で不穏(落ち着かず、興奮している状態)になっても「楽しかった趣味やがんばった役割」を思いめぐらすだけでご本人の心は満たされます。

看取り期でも力を発揮する「本人らしさのCADL」。幸せケアプランづくりでは、とても重視します。次は、項目別に「ケアマネジャーにどのように伝えたらよいか」、その勘所を紹介します。

■楽しみ・愉しみ
要介護になると「おうち時間」がグッと増えます。趣味がない・趣味といえる程度のものはないと話す人でも「暮らしの中のちょっとした楽しみ・愉しみ」はなんらかあるものです。「住まいの飾りつけ、食べる・料理する、買い物する、おしゃれする、庭や花のお手入れ、テレビ・ラジオを視聴する、散歩する」など、自分なりの「こだわっている楽しみ」を伝えましょう。
例)一年間をかけて隣の空き部屋をディズニーキャラクターで飾り付ける

■趣味
趣味には500種類以上あるとも。大きく分類すると能動的な趣味(例:手芸、陶芸、スポーツ、演奏、歌唱)と受動的な趣味(例:鑑賞、観劇、観戦)におおまかに分かれます。自分なりの「こだわり」と「なにがなぜ楽しいか、夢中になれるか」を具体的に伝え、未来形で「何を楽しみたいか、やってみたいか」を伝えることをおススメします。
例)趣味を伝える
・能動的:ハンドベルでクリスマスソングを孫たちに披露したい
・能動的:ハワイアンキルトを子どもの新築の居間にプレゼントしたい
・受動的:〇〇美術館のゴッホ展に絵画仲間とおしゃれな花柄の杖で出かけたい

■役割・世話・手伝い
役目・役割、世話・手伝いは、所属の欲求と承認欲求に大きく影響するといわれます。家族や町内会での役割、ペットや花・植物のお世話、地域のちょっとしたお手伝い(空き缶回収)ができる自分に自信となり、さらに周囲からもらえる感謝の言葉はあなたの心の自己肯定感にとてもいい影響を及ぼします。
例)○○駅前の花壇のガーデニングボランティアに復帰したい

■人間関係(家族・親族、幼なじみ、友人、仲間)
人間関係は「心の栄養分」です。孤独・孤立は心だけでなくカラダの健康にも影響するといわれます。リアルに対面できれば一番。でも現代のコミュニケーション手段はいろいろ。「声」だけの電話もあれば、文字だけのe-mail、SNSの中には「顔出し」でやりとりできるもの(LINEなど)もあります。
だれとどんな方法でコミュニケーションをとりたいのか、具体的に伝えましょう。集合写真があればなおさらグッドですね。
例)軽井沢の○○コテージでゴルフ仲間とバーベキューで盛り上がりたい

■仕事
仕事も元気になる要素のひとつ。仕事をしてきたこと=「特技・得意なこと」です。自分に身についた特技(例:大工=木工作業、電気技師=オモチャの修理、美容師=髪のカット)を伝えることでアイデンティティーが守られ(元仕事人間さんは特に!)、やることで周囲から与えられる感謝の言葉があなたの心に自信を湧かせてくれることでしょう。
例)○○児童館で絵本語り部ボランティアを再開したい(元女優)

■参加・交流(イベント)
日本人の多くはお祭りや○○大会などの「ハレ」の場をとくに好みます。具体的には、神社の祭礼やお正月やお盆、七五三や還暦祝いなどの人生の節目などの儀礼ごとです。フジロックなどの音楽フェスなどはその進化系といえます。自分なりにワクワクするイベントなどの「名前、由来、時期、場所、誰と行きたいか」を伝えましょう。
例)2000年からバンド仲間と欠かさず参加のフジロックフェス。来年も同じ顔ぶれで行きたい

いかがですか?
みなさんのケアプランやご両親のケアプランがこんなふうにワクワク・楽しく・トキメクものになったらどうでしょう?

CADLは「あなた(親)の人生そのもの」です。
その伝え手は「あなた自身(子どもたち)」。これまでの記念写真やビデオ動画、お好みのファッション、記念品やお土産、エピソードなどを使ってケアチームのみなさんに楽しくプレゼンしてみましょう。

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