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幸せケアプラン

掃除の仕方や洋服のたたみ方…ケアプランに「自分流」をしっかり反映

IADL(手段的日常生活動作)調理、掃除、洗濯、買い物、金銭の管理、電話の対応

公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。けれど、どのようなことが記されているのか、どんな目的があるのか、案外、知られていないのではないでしょうか。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、「幸せケアプラン」づくりを指南します。

前回はADL(日常生活における基本的動作)について解説しました。ADLとは「食べる、用を済ます(排便する・排尿する)、カラダを洗う、眠る」という生きるための行為のこと。その一つひとつに「個別性=自分流」があり、尊重されない(ないがしろにされる)と「とても不快」な気持ちになることをご理解いただけたと思います。

今回は「IADL」です。
またもや「なんじゃ、そりゃ?」と目を見はりたくなる英語の4文字ですね。
元々の英語表記は次の通りです。
「Instrumental Activities of Daily Living」
日本語では「手段的日常生活動作(行動)」と訳されています。具体的には「調理、掃除、洗濯、買い物、金銭の管理、電話の対応など」のことです。「道具を使って行う暮らしの行為」と私は説明しています。

これまでは、女性が多くの家事を担う傾向がありました。だからといって、すべての女性が調理や掃除、洗濯が好きなのでしょうか?
答えは「NO」です。
私は、ケアマネジャーを対象としたセミナーで、「クイズ料理・掃除好き嫌い!」をやることがあります。ケアマネジャーの8割が女性のみなさんなので、誤解されないように、はじめに「上手・下手」を質問しているわけではないことをお断りします。

するとどうか…。一般的に女性は「料理・掃除が好き・得意」と世の男性は決めつけがちですが、実はそうでもない。苦手・嫌い・面倒だと挙手する人が一定数いらっしゃいます。手を挙げた人たちに追加質問します。
「ではみなさんが要介護2とします。苦手な料理をケアプランでやるべきことと取り上げられたらやる気になりますか?」
たいていの人が首を振ります。
「でも、孫のために…友達が集まる○○の日のために、とケアプランに書いてあったらどうですか? 少しはやってみてもいいかな・がんばってみるかなと思いませんか?」
ここで大きくみなさんがうなずきます。
女性だからといって、みんながIADLに関わる家事が好きなわけではありません。男性なら大工仕事が好きとは限らないということです(私自身がまったく苦手!)。
本人が「やりたい」と動機づけられるためには、それぞれの人にとっての目的や理由が大切だということ。これを、頭に入れておいていただければと思います。

公的介護保険サービスで、IADLを支援してくれるのが訪問介護の「生活援助サービス」というカテゴリーです。自立した生活を維持するために必要な家事などが対象となります。厚生労働省などは、利用者が自分でできるように、ヘルパーが支援しながら一緒にやる形を推奨しています。このため、ケアプランでは「○○ができるようになる」と記されることが多いです。けれど、最近は、時間に制約があり、ヘルパーさんがすべてやってしまう家事援助になっています。また、やれることに制約がある(ペットのエサやり、庭の草むしり、お中元・お歳暮の購入、お仏壇の供花などはできないとされています)ので、民間の家事代行サービスのような自由度はありません。

だったら何も伝えないでよいでしょうか?
それは「NO」です。伝えないと、ヘルパーさんの流儀や効率性でやってしまわれてしまうからです。

IADLの項目で「自分らしさ」をデザインするためにどうすればよいでしょう?
今回の必殺ワザも「自分流のやり方」を正確に伝えることです。わがままでもぜいたくでもありません。自分流のやり方でない洗濯物のたたまれ方をされたらどうですか? 食器類のしまい方をされたらどうでしょう。
ケアマネさんや訪問介護のサービス提供責任者さんに「私のこだわり」をしっかりリクエストしましょう。

具体的にご紹介しますね。
※もちろん生活援助サービスの時間の制約や食材の種類、ヘルパーさんの力量次第のところもあります。全てをやってもらえるわけではなく、折り合いをつける必要があることも念頭にお読みください。

■調理する
調理がケアプランに表記されることはよくあります。とくに偏食から低栄養になる高齢者も多いので大切な要素です。
ただ「1日3食を調理できるようになる」と書かれてもあまりにピンときません。調理法だってメニューによって異なります。それに近年はレンジでチンするだけでとてもおいしく食べられるレトルト食品が進化。小ロットでも手に入るようにもなりました。わざわざ自分で調理しなくても、おいしい食事がいただけます。
「調理ができるようになる」だけではなかなかモチベーションも湧かないもの。ならば好みのメニューや調理法を入れたり、誰かのため(目的)ということを入れ込んだりしてみてはどうでしょう。
<ケアプランでの表記例>
「週に1回は好きなナスやカボチャなど季節の野菜の煮物を娘といっしょに食べる」

掃除のこだわりは? モップor掃除機orほうき

■掃除する
「掃除ができるようになる」と書かれているのと「転倒の危険がないように掃除をして、安全にお部屋を歩けるようになる」と目的やめざす環境がしっかりと書かれているのではどちらに納得感があるでしょうか?
掃除にも「自分流」がどなたにもあるはずです。

〇自分流の掃除のこだわり(マイルールを伝える)
・「掃除機」でなく「モップ」や「ほうき」で掃除
・床の雑巾がけは水拭き× から拭き〇
・お風呂掃除の仕上げは「拭き上げ」
どうでしょう?
これくらいのリクエストはどんどんしましょう。
そして大切なのは「どんな部屋で暮らしたいか」ということ。
その目安が「これまでどんな部屋で暮らしてきたのか」。同じ家に暮らし続けていても、今ではかなり散らかっていて落ち着ける空間ではなくなっていることもあれば、サービス付き高齢者向け住宅のように狭くてきれいすぎて落ち着かないという声もあります。かつての様子を写真や口頭で伝えるのがベストです。

■洗濯する(洗う・干す・取り込み・アイロンがけ・しまう)
「洗濯ができるようになる」という表記。これだけでは洗濯という作業の「どこに困っているのか」がわかりません。洗濯には「洗う」「干す」「取り込む」「たたむ」「しまう」があります。二槽式洗濯機ならもうひと手間増えます。
さらに洗濯の仕方にもこだわり(マイルール)がありますよね。
ヘルパーさんにはとくに具体的に伝えておきましょう。
衣類ごとの「洗い方(手洗い、つけ置き洗い、柔軟剤の有無など)」や「干し方」(干し方によって型崩れが起こるので要注意)。靴下ひとつとっても、つま先つまみか口ゴム部分つまみかで好みや習慣は分かれます。「たたみ方」にいたっては上着・下着類で、これもさまざま。自分流でないと「モヤッ」とするもの。注意したいものです。

■買い物する
ケアプランで「買い物に行けるようになる」という表記があります。
これでは本人らしさも具体性もなにもありません。
場所、店名、物品は表記してもらいたいもの。実は「距離」や「頻度」は理学療法士のみなさんにとっては貴重な情報。「距離が表記されているとリハビリ時の機能訓練の目標設定がしやすい」とも言います。是非、書き込みましょう。
<ケアプランでの表記例>
×「買い物に行けるようになる」
〇「300m先のスーパー大黒に食材を週2回は買物に行けるようになる」

ご自分が行きたい買物先は店名まで具体的に伝えましょう。パン屋さん、花屋さん、豆腐屋さんなどの「なじみのお店」はケアマネさんにとっては大切な情報です。手書きでいいので地図に書きこんで渡すのもいいでしょう。

■金銭の管理
金銭の管理というと「通帳と印鑑の管理」が主。あと、身近では「買い物時のお金の支払い方」です。かつては現金が中心だったので、高齢者は「小銭の計算と財布からの取り出し」に苦労するのが定番でした。ところが、今ではクレジットカードやプリペイドカードでの支払いがかなり普及し、高齢者にもありがたいアイテムとなりました。一方で、認知症の人など、こうした新しい支払い方法に戸惑われる方も多くいます。
どういった方法ならば、スムーズに支払いができるのかを、ヘルパーさんやケアマネさんに伝えておくと良いでしょう。

■電話の対応
かつては、離れた人とのコミュニケーションと言えば「電話」でしたが、令和になり、コミュニケーション手段はいろいろになりました。デバイスには固定電話のほか、ガラケーと呼ばれる携帯電話、スマホ(スマートフォン)、タブレット、パソコンなど様々なものがあります。方法にもe-mail、SNS(Facebookやインスタグラムなど)があります。こうしたものを使いこなす高齢者は増加中で、80代でLINEを使いこなす高齢者も出てきています(※80代のわが義母がなかなかのLINE上手でびっくり。絵文字もバッチリです)。
<ケアプランでの表記例>
×「電話でやりとりができる」
〇「電話やスマホで長男夫婦や孫たちとコミュニケーションがとれる」

いかがですか?
ケアマネさんが書いてくれたケアプランのなかに「自分らしさ」を入れ込んでもらうコツを理解いただけたでしょうか。
自分デザインとは「自分流、自分のやり方」を具体的に入れ込むことです。それと苦手・嫌いなやり方を伝えることも大切です、念のため。

IADLも写真(画像)や動画で伝えるのがグッド。料理の盛り付け、好みの食器類、洗濯物の干し方・たたみ方、かつてのお部屋やトイレの飾りつけの様子、買い物にワクワクするお店と物品コーナーなど、「自分の心地よさ」を基準にしっかりと伝えましょう。

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