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幸せケアプラン

周りはどんなやりくりを?介護費用の相談相手と質問のコツ~お金編2~

幸せケアプラン「居宅サービス計画書」

公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。けれど、どのようなことが記されているのか、どんな目的があるのか、案外、知られていないのではないでしょうか。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、「幸せケアプラン」づくりを指南します。今回は、介護にまつわる「お金」をテーマとする2回目です。

メディアが介護にまつわる話題を取り上げるとすると、そのトップ3は「お金、介護離職、家族介護」の3つではないかと思います。いずれも「余裕のなさ」からくる問題ばかり。とくに「お金」は、介護保険では毎月の精算が必要なため差し迫った問題です。
前回は「どれくらいかかるか、どれくらい使えるか、どれくらい負担をしなくてはいけないか」を解説しました。
今回の「お金編2」では、だれにどのように相談をすればよいか、をお話しましょう。

相談相手は「ケアマネジャー、地域包括支援センター」の2つがベスト

率直にお話します。すでに介護保険を利用しているなら担当のケアマネジャーがいますから、その人に正直に相談しましょう。ちょっと頼りないな、と思うなら所属する居宅介護支援事業所の管理者さんでもよいでしょう。
一方で、「まだ利用していないけれど事前に知っておきたい」「親が入院中で退院を機に即介護が始まる予定だ」という、まさに“そこにある危機”の人もいらっしゃるでしょう。その場合は、「地域包括支援センター」がおススメです。リアルなアドバイスを望むなら、親が住んでいる市町村の地域包括支援センターに連絡しましょう。総合相談窓口があり、主任介護支援専門員(ケアマネジャーのこと)、社会福祉士、保健師等が相談に乗ってくれます。

どこにあるのか?が気になりますよね。
市町村の公式サイトで「地域包括支援センター」を入力して検索すると、一覧がズラッと出てくることが多いです。住所・電話番号・FAX番号から自宅や実家近くのセンターを調べて「直電」しましょう。
じかに訪問して、地図を見ながら話し合うのもよいでしょう。

ここであえて伝えておきたいのは、相談相手にファイナンシャルプランナーや社会保険労務士さんたちは適切ではない可能性が高いということ。これらの資格を持つ方々が雑誌の介護保険特集やウェブサイトで介護保険の解説をすることが増えました。たしかに親身で丁寧ですが、基本的に教えてくれるのは「介護サービスを使うにはどれほどお金がかかるか」でしかありません。
介護の体験をウリにしている方もいますが、ちょっと主観的です。地域の介護サービス事業所のリアルを把握しているわけではなく、あくまで一般論で理想論になりがちです。より具体的な情報を知りたい人にとっては、期待外れになるのではないかと思います。

お金の相談は「いくらかかる?」だけではNO!

「どうしたら負担を下げられますか?」「○円の予算でできることは何ですか?」「○○を可能にするにはいくらかかりますか?」「あと何円増やせばどんなサービスが可能ですか?」

私たちはなにかモノを購入する時に「いくらかかるか?」と尋ねますが、これを相談だと勘違いしていませんか。それはモノの価格の質問であり、単なる情報収集でしかありません。
相談する際には目的や現状を伝え、どのように改善したいのかまで伝える必要があります。その方向性を伝えないと、回答する人も抽象的な回答しかできません。

みなさんが気になるのは

  • どうやったら負担(サービス利用料)を下げられるか(価格相談)
  • ○○の予算(毎月負担できる)でできることは何か(予算前提の相談)
  • ○○を可能にするにはどれくらいの予算がかかるか(内容前提の相談)

大抵はこの3つでしょう。
実はもう1つ、大切な質問があります。

  • あと○千円~○万円増やせば、どのようなサービスが可能ですか(プラス予算による可能性)

ついつい負担を減らすために「低価格」のほうにブレてしまうことってありませんか? 値切ったことで質が低下してしまい、やり直しや修理をする羽目になることは、一般的な買い物(例:自動車、カバン、家電品)でもよくやりがちです。関西風にたとえると「安物買いの銭失い」ですね。
しかし、もう一度、思い出してください。
公的介護保険サービスは「90%~70%Off」の利用料なのです。つまり、わずかのお金をケチってしまったことで大きなメリットを捨ててしまうことになりかねないのです。

ケアマネジャーも困っている「いくら負担できるか?」という質問

私はしばしば、ケアマネジャーのみなさんから「質問力」の研修を依頼されます。その時に「なにが特に聞きづらいですか?」と問いかけます。
その答えのトップが「年金収入額を聞けない」というものです。私は「それを尋ねると警戒されません?」と確認すると、みなさん大きくうなずきます。
そりゃ、そうですよね。自営業とサラリーマン、公務員では、そもそも年金の種類も違えば、額だって異なります。年金以外に不動産や資産運用の収入がある方もいます。
次に「実はみなさんが知りたいのは介護にかけられる予算ではないですか?」
とケアマネジャーに問いかけます。再び、みなさんうなずきます。
だったら次のように質問しましょうとアドバイスします。
介護にいくらくらいかけるお考えですか?

利用者(家族)のみなさんの側からしても、勝手に年金収入で判断をされてしまうと困ったことになります。利用者の側から「介護にかける予算」の考え方をケアマネジャーらに伝えるべきです。
「できるだけ安くしてほしい」では、まったく不十分です。
「月々、介護にかけられる費用は○○○○○円前後です」
「月々、介護にかけるお金は○○○○○円くらいを考えている」
と参考値でよいので、具体的に金額を伝えましょう。
そして先に紹介した4つの質問を追加でしてみることをおススメします。

他の介護ケースの「やりくり」の例示をお願いしよう

「うちと同じようなご家庭での介護サービスの利用の仕方を教えて」

みなさんは「自分の親のケース」は特別だ、と思っているかもしれませんが、ケアマネジャーにすれば「よくあるケース」であることが多いです。同居介護だけでなく、近距離の土日通い介護、夕方・夜の部分介護など、いろんなパターンがあり、みなさん、かなり工夫されています。
要介護1の頃はわずかでも、要介護3になってからは利用する介護サービスが増えます。かかる介護費用がどのように上昇するのかをあらかじめ知っておくだけでも、不安の解消になります。
なにせ、ケアマネジャー1人あたり30ケースは担当しています。経験年数が長い人では100ケース近くの経験を積んできた人もいます。
正直、「他の人はどのようにやりくりしているか?」が気になりませんか? 実際に知りたくありませんか?
その話す内容や話しぶりでもケアマネジャーの経験レベルを知ることができます。

熱心な介護家族ほど雑誌や単行本の介護特集を読み込まれています。でも紹介されている事例はごくごく一般的なものばかり。実はあまり参考にならないのではないでしょうか?
だからこそ、他の利用者の方の実際の「やりくり介護生活」を質問しましょう。
「うちと同じようなケースで、他のご家族ではどのように介護サービスを利用されているのか、いくつか教えてもらえませんか?」
とズバリ質問してみてはどうでしょう。

「もちろん、どこのどなたかはわからないようにお願いします」と念押しすることもポイントです。なかには「個人情報なので話せません」と拒否するケアマネジャーもいるからです。
※個人を仮名にするなど特定できなくすると個人情報保護法の適用外です。

せっかくなので介護サービスの使い方やかかっているお金だけでなく、デイサービスに行っていない時の食事や日中の見守り、朝夕の薬のチェック、緊急時の連絡方法などの「ノウハウ」も知っておきましょう。やがて取り組まなければいけない「次の一手」の準備ができるからです。
特に認知症が進んだ時の日常生活でのもの忘れ対策や、散歩時の迷子対策、日中の過ごし方や見守りの仕方などは、同じ地域のご家族のお話は参考になるでしょう。 

ICTと地域のつながりで費用を抑えることもシミュレーション

かつて日中の見守りといえば「ご近所さん」にお願いすることがありました。しかしコロナ禍以降はなかなか難しくなっています。
一方でICTが進化し、街中の散歩なら「位置情報システム」を使えば、いまどのあたりを歩いているか、手元のスマホで確認することができます。屋内に見守りカメラを数台設置すれば、スマホでいつでも様子を確認することもできます。さらに薬の飲み忘れチェックや健康チェックも、子どもがオンラインでできるようにもなっています。

以前より少なくなったとはいえ、まだまだ地域のつながりはあります。要支援や要介護1程度の頃に親とご近所の散歩をしましょう。地域の知り合いや行きつけの馴染みのお店などに顔出ししてつながっておけば、それが「見守り・声がけ資源づくり」となります。
お金をかけても介護サービスには「やれる限界」があります。「知恵を絞る」ことで新たな可能性も広がることでしょう。

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