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独居の母が認知症に 近所の人は「施設へ」と言うけれど【お悩み相談室】

頭を抱える中年男性、Getty Images
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認知症地域支援推進員で介護支援専門員の田中リエ子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.一人暮らしの母(83歳)が初期の認知症と診断されました。一人暮らしを続けたいと言うので帰省したときに近所の人たちに事情を説明したところ、認知症への偏見が根強い地域で「早く施設に入れて」「一人暮らしは絶対無理」と言われてしまいました(54歳・男性)

A.認知症への偏見は、お母さんが住む地域に限ったことではありません。私は認知症地域支援推進員として、地域で認知症の人を支援するために活動していますが、一番大変だと感じるのが認知症に対する偏見をなくすことです。認知症になると何もできなくなるといったイメージを持つ人が多いので、近所の人たちも「火事でも出されたら困る」というのが本音なのではないでしょうか。実際に家族など身近な人が認知症にならないと、理解するのは難しいことだと思います。

認知症への偏見をなくすために最も効果的だと感じるのが、認知症の本人やその家族の声です。地域で開催する「認知症サポーター養成講座」などでも、実際に経験した人に話してもらうと、受講者に響きやすいのです。

相談者のできることとしては、認知症やお母さんの症状についての情報を近所の人たちに伝え続けていくことです。できるだけ具体的に「こんなことは苦手になっているけれど、こんなことはできる」といった話ができるといいですね。時間はかかるかもしれませんが、1人でも「見守る」と言ってくれる人が出てくれば、周囲も影響されていくのではないでしょうか。

近所の人たちが、具体的にどんなことに不安を感じているのかを聞いてみるのもいいと思います。例えば火事が心配ということであれば、火事を防ぐためにどのような対策をしているのかを伝える、ゴミをため込むことを心配しているのであれば、ホームヘルパーにサポートしてもらっていることを伝えるなど、1つ1つ対応策を示せれば、不安材料は減っていくはずです。

さらに「何かあればすぐに連絡してください」と自分や地域包括支援センターの連絡先を書いたメモを渡しておくのもいいでしょう。一緒に住んでいないけれど、息子としてお母さんのことを常に気にかけているということが、近所の人にも伝わるといいですね。

お母さんのことがきっかけとなって、地域での見守り態勢ができれば、今後ほかの住民にとっても住みやすい地域になるはずです。相談者のような人の声が、認知症に対する偏見をなくす力になるのです。

【まとめ】一人暮らしの母が認知症に。近所の人たちに事情を説明したら「早く施設に入れて」と言われてしまったときには?

  • 認知症やお母さんの症状についての情報を近所の人たちに伝え続ける
  • 近所の人が不安に感じている点を聞き出し、対応策を示す
  • 自分や地域包括支援センターの連絡先を近所の人たちに渡しておく

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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