唐突に母との同居を決めた兄 私の「大丈夫?」に義姉が返した驚きの真実
いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒。骨折→入院という経緯で認知症を発症。突如、母の新たな住まい探しを迫られることになりました。ここで姉と兄による“介護押しつけバトル”が勃発!! その結果、ひとまず、母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが…。
※前回の『母の介護をめぐり勃発! ”オレ様”兄VS”女王様”姉の仁義なき戦い』はこちらから
いろいろとあった後、2022年9月から母の兄宅での生活がスタートしたのですが、時間を少しさかのぼります。母との同居が決まったとき、兄の妻である義姉に「大丈夫なのか」と聞きました。義姉は、面倒見のよい穏やかな女性で、私は実のきょうだいよりも話しやすいくらいです。
義姉によると、同居について、兄は家族にほとんど相談しなかったらしい。
きょうだいゲンカの怒りにまかせて唐突に決めたのでしょう。
常々、母は「最期はツヨシ(兄)の世話になる」と言っていましたが、兄のほうはとくに準備をしていなかったようです。
義姉や子どもたちは母との同居に反対ではないものの、不十分な受け入れ態勢に不安を感じているとのことでした。それでも兄が「なんとかなる」と押し切り、慌ただしく同居生活がスタートしたのでした。
母が兄宅に着いた日に、兄からLINEで母の写真が送られてきました。
私の目は、母の姿よりも、背景にくぎ付け。パーテーションで区切られたリビングの一角が、母の居住スペースでした。ベッドの横に、衣装ケースや段ボールが積まれています。認知症の母をこんな環境で生活させて大丈夫なのかと思いましたが、口に出すことはできません。「元気そうでよかった」と返信しました。
ここで時間を元に戻します。前回書いた通り、同居開始から1週間足らずで「お母ちゃんがかわいそうだから関西へ返してやりたい」と、兄から連絡がありました。
とても言葉通りには受け取れない。だって、関東へ行く前に「お母ちゃんは関西暮らしをのぞんでいるから、希望にそってあげよう」と私は何度も言ったのです。けれど、姉へ頭を下げるのがイヤな兄は聞く耳を持ちませんでした。「想像以上に母の世話は大変だったから、こちらに世話をまかせたい」これが兄の本音でしょう。兄としては、母にあまい私が二つ返事で受け入れると思っていたかもしれません。
しかし、こちらにも「はい、どうぞ」と言えない事情がありました。
そのころ、生まれて初めて著作の依頼を受け、仕事がめちゃくちゃ忙しくなっていたのです。母がこちらで暮らしている間は、スケジュールも調整していましたが、兄のところへ行くことが決まった時点でガッツリと仕事の予定を入れてしまっていました。
とはいえ、母の関東滞在は「最期まで」から「短期滞在」へと方向転換されていく雲行きとなっていきました。
一時的な引っ越しで介護保険は使える?
さて、ここからは介護保険制度の話を少し。
母の関東行きにあたって<これまで使ってきた介護サービスはどうなるのか>という問題が出てきました。要介護度は、自分の住んでいる市区町村で、介護認定審査会を経て決定されます。調べたところ、引っ越しをする場合、
①転出手続きをする際に、介護保険の「受給資格証明書」をもらう。
②転入先の自治体へ14日以内に提出する。
こうした手続きをすることで、転居先でも、これまで認定されていた要介護度を引き継げるとのこと。ちゃんと切れ目なく介護サービスを受けられる仕組みになっていました。
しかし、母の場合、兄一家と暮らし始めてすぐに、兄宅のある関東のC市に住むのは長くても数カ月で、その後は元の関西のA市へ戻る気配が濃厚となりました。
こんな中ぶらりんな状態では住民票の異動もできません。
これまで担当してもらってきたケアマネTさんに相談すると、A市の担当課に問い合わせてくれました。その結果、Tさんが担当を継続する形で、C市のケアマネさんに母の情報を提供。兄宅に母が滞在する間は、C市のケアマネさんがTさんの代わりにケアプランを作成し、介護サービスを提供してもらえることになりました。
介護ベッド1つをとっても、介護保険でレンタルできないと高額の出費を強いられます。住民票を移さないまま、C市で介護サービスが受けられることは、とてもありがたかったです。どこの自治体でも同じような対応なのか不明ですが、制度についてわからないときは、ケアマネさんや自治体の窓口に相談することをおススメします。
【感想&後日談】
引っ越し時の介護保険の話をもう少し。市外への引っ越しで、14日以内に転入先の自治体に受給資格証明書を提出しなかったらどうなるか。転居先で、要介護認定を新たに受けることになります。手間もかかるうえに、判定がこれまでと同じにならない可能性があるそうです。さらに痛いのは、改めて認定が出るまでの1~2カ月間の介護サービスの利用は全額自己負担! 考えただけで怖い。(ただ、こういう時にも助けになる仕組みがあります。認定が下りた後に、支払った額の一部が償還される可能性がありますので、活用しましょう)
ちなみに、介護保険制度のもとで「住所地特例対象施設」に指定された老人ホームや介護老人保健施設などに入居する場合は、もともと暮らしていた自治体から離れた地域の施設であっても、これまでの自治体の介護保険に加入したままとなります。この場合は、もともとの自治体に介護保険の「住所地特例適用届」を提出します。詳しくはケアマネさんや自治体の窓口に聞いてみてください。