積極発言も提案もOK! 自分デザインのセルフケアプランのすすめ
イラスト/河原ちょっと
公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。けれど、どのようなことが記されているのか、どんな目的があるのか、案外、知られていないのではないでしょうか。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、「幸せケアプラン」づくりを指南します。
今回のお話は「ケアプランを自分でデザイン」のススメです。
多分、多くの方はびっくりされると思います。
「エッ? ケアプランって自分で作っていいんだ!」
これって、ほとんどの人は知らないコトです。まるで都市伝説のようだと思わないでください。
「なぜ、そんなことができるんですか?」
できるんです!
立派に介護保険のルールで、利用者本人がケアプランを作ることは認められています。
それをケアマネ業界では「自己作成プラン(セルフケアプラン)」と言っています。
これはとても「いいこと」だと高く評価しています。
でも実際にやっている人はほとんどいません。
なぜでしょう?
ケアマネさんがしっかりと聴き取ってくれ、私の思いもケアプランに反映しているし、信頼関係だってバッチリだから、という人もいらっしゃるでしょう。
ケアプランに多少の不満はあっても「あのケアマネさんはよく動いてくれる」から、と目をつむっている利用者(家族)の方もいらっしゃるかもしれません。
実はもう一つが本音ではないかと私は推測します。
みなさんが市区町村に「ケアプランを自己作成するので書類をください」と申請すれば書類はもらえます。
そこからが実はひと苦労なんです。
セルフケアプランだと、ご本人やご家族がサービスを提供してくれる介護事業所と直接交渉をしなくてはいけない。それに利用した後の請求業務まですべてをしなければいけないという「決まり」があるのです。
さすがにこれは大変なので、地域包括支援センターにお願いすれば業務を肩代わりしてくれることにはなっていますが、地域包括支援センターの側も業務がいっきに増えるので及び腰です。
このような手続きの詳細を聞いて、「正直、セルフケアプランはけっこう面倒で手間がかかるなぁ」と思われるのは当然。だったらケアマネさんにケアプラン作成をお願いするのでいいやとなるのも無理はないかと思います。
ただし、「すべて任せている」という言い方は一見カッコ良く聞こえますが、実は「丸投げ」になってしまっていませんか?
私は「ケアマネさんを丸々アテにしてはいけない」と言っているわけではありません。みなさん、利用者本位の立場でとてもがんばっています。
ケアマネさんに協力する意味でもケアプランのプランニングに積極的に(可能ならガッツリと)を関わりましょう、という提案です。
でもどうすればいいのか?
積極的に「発言」あるいは提案をしてください。
どのタイミングで?
安心して下さい、要介護認定の更新時には必ず、ケアマネさんが、利用者さんとケアチームが集まった「サービス担当者会議」(要するに作戦会議)が開かれることになっています。まさにそこです!
その時にケアプランの話し合いをすることが定められているからです。
(とはいえ、ほとんどが30分~45分以内のため、プラン説明が中心の「確認」の場になりがち。「話し合い」の場面になっていないのが現状かもしれません)
とはいえ大勢の専門職さんに囲まれると「圧」が強くって、正直ビビッてしまうかと思います。
「実は…、こうではなく…」と発言して、普段お世話になっているケアマネさんの顔を潰したくないという気持ちもあるでしょう。
だったらどうすればよいでしょう。
更新月の「前月」のケアマネさんの訪問時がチャンスです。
新しいケアプランを作るために、かならず「この1年間の変化(改善したこと、低下したこと、維持できていること)」と「現状の困りごと」、そして「これから1年間、どのような暮らしを希望されるか(これが、これまでにこの連載で記してきた「意向」です)」の聴き取りタイムがあります。これをケアマネさんたちは「アセスメント」と呼んでいます。
この時がグッドタイミングです。
※ケアプランでの「意向」については、こちらの記事をご参照ください。
『ケアプランの「主訴」「意向」とは? 伝わりやすい言葉に言い換えよう』
聴かれるばっかりではなく、積極的に発言しましょう。
できれば、ケアマネさんに提案する自分デザインの「セルフケアプラン」を作ってみましょう、というのが私の提案です。
面と向かうとなかなか言葉ってでてこないものです。
セルフケアプランと言うと大げさになりますが、小まめに書いた「意向・提案」メモでも十分に効果があります。
かつての写真を用意したり、スマホの動画に直接語りかけたものを視聴してもらったりするのでもいいでしょう。
なによりご自身の頭の整理になるだけでなく、「自分らしい暮らし」を自分の言葉で伝えることができるようになります。
ご家族には、介護を受けているご本人から聴き取る時間(代筆タイム)をとられることをおススメします。同時にするのが大変なら、スマホやボイスレコーダーで録音をして、文字起こしアプリを使って文章化するのもいいでしょう。
「書面に文字化」することは「見える化」です。
ケアマネさんにはコピーを渡し、現物は控えとして持っておきます。
渡す書面には「手書きのサイン」と「押印」を。印影はいまでもインパクトあっていいと、私は思っています。
これを渡した時に「ありがとうございます! 参考にさせていただきます」とニッコリと笑顔になればグッドなケアマネさん。
「あ、はい。わかりました」と表情がいくぶん暗くなるケアマネさんは、ちょっと要注意?かもしれません。