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認知症で家族も分からなくなった母 兄が面会を拒みます【お悩み相談室】

手ぶりで拒否感を示す男性、Getty Images
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認知症地域支援推進員で介護支援専門員の田中リエ子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

 Q.認知症の母(84歳)は施設に入居しています。最近は家族のことも認識できなくなってきました。兄はそんな母を受け入れられず、全く面会に行きません。しかし、母は兄が大好きで、私が面会に行くと兄の話ばかりします。兄に面会を促しますが「無理」の一言です(52歳・女性)

A.自分のことを認識してもらえなくなった親と会うのは、誰でも不安で怖いことだと思います。会わない期間が長くなると余計に不安は募りますし、お兄さんもお母さんに対して思いがあるからこそ、怖いのではないでしょうか。こうした精神状態のときは、無理に面会に行かせるのではなく、お兄さんが受け入れる気になるまで待つことをおすすめします。

相談者が今できることは、面会に行ったときのお母さんの様子をお兄さんに伝えることです。「今日の面会では私たちが子どものころの話で、盛り上がったよ」「看護師さんと楽しそうにおしゃべりしていたよ」など、なるべくポジティブな話ができるといいですね。お兄さんは認知症になると何もわからなくなるというイメージを持っているかもしれないので、できることもあるということをなるべく伝えられるといいと思います。お母さんと撮った笑顔の写真をお兄さんに送るのもいいですね。

今のお母さんの様子を具体的にイメージできるようになれば、お兄さんも徐々に受け入れていくはずです。現状ではお兄さんは認知症に対して偏見や誤解があるかもしれないので、少しずつ受け入れられてきたところで、認知症について正しく理解してもらえるようになるといいですね。認知症のことを全く知らなかった方が、家族が認知症になって初めて一生懸命に勉強されて、詳しくなるというのは、よくあります。

認知症は進行していく病気であり、今後ますます家族のことがわからなくなっていく可能性があるので、相談者としてはなるべく早く面会に行ってほしいという焦る気持ちもあると思います。しかし、認知症の人は重度になっても、大事な家族が面会に来るとパッと表情が変わって、一瞬だけでも家族のことを認識したように見えることがあります。普段のお母さんを知っている相談者であれば表情の変化を読み取れると思うので、そのことをお兄さんに伝えると、また面会に行こうという気になるのではないでしょうか。

お兄さんがこまめに面会に行くのが理想ですが、どうしてもお兄さんでなければだめだということはないと思います。相談者や施設のスタッフなど、お母さんのことを大事に思って接してくれる人が側にいれば、お母さんの気持ちは十分満たされるのではないでしょうか。「お兄さんに会わせてあげたい」という相談者のやさしい気持ちは、お母さんに伝わっていると思います。

【まとめ】兄が家族のことを認識できなくなった母を受け入れられず、面会を拒否するときには?

  • 無理に面会に行かせようとせず、受け入れる気持ちになるのを待つ
  • 面会時の母の元気な様子を兄に伝える
  • 母を大事に思って接する相談者や施設のスタッフがいれば、兄ではなくても母の気持ちを満たせることを理解する

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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