わたしが覚えていますから
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
今回からは、久しぶりに訪れた北海道での出来事を2回に分けてつづりたいと思います。
東京が気温38度という猛暑に見舞われた日、
わたしは20年ぶりになるでしょうか、北海道に向けて、ひとり旅を出発しました。
北海道医療大学で講義をするためです。
ひとりで空港内を移動することは、人に尋ねながらできますが、
万が一、何かトラブルがあった時、混乱をして乗り遅れることなどを避けるために、航空会社のプライオリティーサービス(空港介助サービス)を使いながら搭乗しました。
空港スタッフの方は、スムーズに、搭乗ゲートへと案内して下さいました。
また、飛行機内では、お手洗いに立った後、ほかの方に目立ちすぎないようにさりげなく、手を添えて座席を教えて下さいました。
新千歳空港に降り立ったとき、ガラス越しに目に飛び込んできたのは、
わたしを講義に招いていただいた鈴木英樹先生ご夫妻でした。
オンラインでしかお会いしたことがなかったのですが、
なんだか初めてでない感覚に、ワクワクの初対面でした。
講義の時間が迫っていたので、すぐに車で大学まで送迎。
車窓から見える景色はだんだんと北海道らしくなり、広大な風景が目に飛び込んできました。
今回担当させていただいた講義は、未来の作業療法士、理学療法士の学生さん150人を対象としたものです。
最初にプレゼンテーションソフトのトラブルがありましたが、
鈴木先生はわたしを急かすことも無く、
落ち着かせてくださるような声かけをしてくださり、無事に講義がスタートしました。
今回、私は頸椎(けいつい)の手術で感じたこと、リハビリ科の大切さなどを、
90分の講義時間をたっぷり使ってお話しさせていただくことができました。
ひとりで1コマの講義を話すことができるか不安でしたが、
熱心な学生さんの姿勢に、わたし自身も饒舌(じょうぜつ)に想いを伝えることができました。
講義が終わり、ひとりの学生さんがたくさん記録をしたノートを持って、
わたしのところまでやって来てくださいました。
少し話をしたのですが、すぐにわたしは空港に戻らなければならなかったので
「メールでやり取りをしましょう」ということで、名刺を学生さんに渡しました。
空港に戻る車内で、1通のメールが届きました。
- もし、さとうさんが、この先、今日のことを忘れてしまったとしても、
素敵な講義を聞けたことは、私がずっと覚えています。
さとうさんに出会えて、私の中の認知症に対する意識が変わりました。
まだまだ伝えたいことはありますが、それは感想の方にしたためたいと思います。
未来の作業療法士、理学療法士さんに大切なことが伝わったこと以上に、
こんなにもあたたかい言葉をかけて下さった優しさがうれしく、
心に響くメールを何度も何度も目を通しては、涙があふれる思いでいっぱいになりました。
そして急いで戻った空港では、
コロナ禍に突入していたので、2年前になるしょうか…
オンラインで開催された「パーソン・センタードな視点から未来を見つめる学会」(2021年5月開催)で、お世話になった介護支援専門員の佐々木翔大さんと初めてお会いすることができました。
新千歳空港内のおいしいお寿司をリサーチしてくださり、
「北海道に来たと実感」と、わたしのこころも胃袋(笑)も喜んでいました。
食後は、ゆっくりと思い出話や佐々木さんの活動、お仕事の話などを伺うことができて、
改めて、わたしが伝えていく際に気になっていた部分の再確認もできました。
この日は翌日に控えて、新千歳空港内のターミナルホテルに宿泊。
翌日に予定されている空港のユニバーサルデザインに関する会議の準備として、カームダウン・クールダウンルーム(気持ちを落ち着かせる場)の見学などをした後、初日の楽しかった思い出とともに、空港内の温泉施設でゆっくりと過ごしました。