認知症では?プライド高い父を傷つけず受診させるには【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
訪問介護管理者の滝口恭子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.3年前に母が亡くなってから、一人暮らしをしている父(83歳)。料理上手で社交的で自慢の父なのですが、最近同じ話を繰り返したり、一緒に出かけたことを忘れていたりすることがあります。認知症の専門医に診てもらいたいと思いますが、プライドが人一倍高く、傷つけてしまいそうで言い出せません(55歳・女性)
A.夫婦だけで暮らしている高齢者の場合、どちらかが亡くなると、急激に人と話す機会が減ります。その結果、認知機能が低下してしまうケースは少なくありません。相談者の言う通り、一度病院を受診できるといいですね。
受診をすすめにくいとのことですが、アプローチの方法は2通りあります。もしお父さんにかかりつけ医がいれば、事前に家族だけで相談に行き、今の状況を伝えます。そしてお父さんが受診したときに、かかりつけ医から「年齢的にみて一度テストをしてみましょうか」など自然な流れで提案してもらい、「長谷川式認知症スケール」など認知症かどうかを簡易的に調べられるテストを実施してもらいます。テストによって認知症が疑われたら、専門医を紹介してもらうという流れがスムーズだと思います。
かかりつけ医など相談できそうな医師がいない場合には、地域包括支援センターで相談することをおすすめします。地域包括支援センターには、認知症の医療や介護に関する専門的な知識、経験がある「認知症地域支援推進員」がいて、医療機関とのつなぎ役も担っています。また、職員が自宅に見守り訪問をしてくれることもあります。地域包括支援センターの職員には看護師もいるので、認知機能を調べる簡易的なテストをしてもらい、受診につなげるという方法もあります。
お父さんは社交的な方ということなので、こうした第三者からのアプローチでうまく受診につなげられるのではないでしょうか。
もの忘れが多くなると、年齢的に認知症と結びつけてしまうこともありますが、もしかしたらほかの病気が原因となって一時的に認知機能が低下していることも考えられます。また、認知症の一歩手前である「軽度認知障害(MCI)」である可能性もあり、この場合は、人と関わる機会を増やすといった対策によって、認知症に進むのを予防することができます。認知症だった場合は、一人暮らしを継続するのであれば、ガスコンロに安全装置を設置する、見守りカメラを設置する、といった環境整備が必要です。
このようにいろいろなケースを考えてみても、早期に診断してもらうということが非常に大事なのです。
一人暮らしだと、どうしても人と会話をする時間が減ってしまいます。家族としてはこまめに連絡をとって、なるべくお父さんと話す時間を作れるといいですね。
【まとめ】認知症が疑われる父。プライドが高く、受診をすすめにくいときには?
- かかりつけ医に事前に相談し、認知機能を調べる簡易的なテストをしてもらう
- かかりつけ医がいなければ地域包括支援センターで相談し、医療機関とつなげてもらう
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫