旅好きだった母が、コロナ禍を機に引きこもりがちに【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
訪問介護管理者の滝口恭子さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q. 母(74歳)は父と2人暮らしですが、コロナ禍をきっかけに引きこもりがちになりました。もともと旅行が好きなので誘ってみたのですが、「長時間歩く自信がない」「自宅以外だと眠れないかもしれない」と乗り気ではありません。どうすれば外に出る気になってくれるでしょうか(47歳・男性)
A. コロナ禍を機に引きこもりがちになった高齢の方は、多いと思います。年齢を考えても、この数年の間に、身体的な衰えを感じることが多くなっているのでしょう。確かに長期間の自粛生活のあと、いきなり旅行というのはハードルが高いと感じるかもしれません。
このため、旅行を長期的な目標としてはいかがでしょうか。1年後くらいに旅行に行くという目標を立て、そのために必要なことを短期目標として考えるという方法です。最初の短期目標としては、例えば相談者と一緒に買い物に出かける、公園まで散歩するといったことです。そして、徐々に出かける範囲を広げていくのです。
長時間歩く自信がないとのことなので、実際に足腰に不調を抱えているのかもしれません。その場合は介護保険の申請をすることをおすすめします。認定結果次第では、介護保険サービスで、訪問リハビリのサービスを利用することができます。理学療法士などリハビリの専門職が自宅に訪問して、1年後の旅行に向けて身体機能や歩行を改善するためのプログラムを組んで訓練をしてくれます。デイケア(通所リハビリテーション)に通って、リハビリを受けるのも1つの方法ですが、お母さんは引きこもりがちとのことなので、訪問リハビリのほうが導入しやすいかもしれません。
短期目標を1つずつクリアしていけば、自信がついてきて、旅行に行く気にもなってくるのではないでしょうか。ある程度自信がついてきたら、旅先を選んだり、旅先では何を食べるかといった話題を出したりして気分を盛り上げます。
こうした提案に対しても、拒否するようであれば、メンタル面に問題がある可能性があります。外出を嫌がるほか、いつも見ていたテレビを見なくなる、本を読まなくなるなどこれまで好きでやっていたことをやらなくなっている場合は、メンタル面に変化が起きているサインなので要注意です。まずはかかりつけ医に相談してみるといいと思います。
家族は焦らず、様子を見守りながら、お母さんのペースに合わせて少しずつ外出できるようになるといいですね。
【まとめ】コロナ禍を機に母が引きこもりがちになり、旅行に誘っても乗り気にならないときには?
- 旅行は長期目標ととらえ、近所に出かけることから始めて、徐々に外出する範囲を広げていく
- 足腰に不調がある場合には、要支援・要介護認定を受け、介護保険の訪問リハビリのサービスを利用する
- テレビを見なくなる、本を読まなくなるなど、好きでやっていたことをやらなくなっている場合は、精神的な問題がある可能性があるので、かかりつけ医に相談する
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫