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夜中に片付けを始める認知症の母 起こされてしんどい【お悩み相談室】

キッチンに立つひと、Getty Images
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訪問介護管理者の滝口恭子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(81歳)と2人暮らしです。私が働いている日中はデイサービスに通っているのですが、最近昼夜逆転していて、夜になると部屋の片づけや探し物を始めて、「○○が見つからない」など、私のところに聞きにきます。私自身も眠れず、しんどいです(49歳・男性)

A.睡眠不足はつらいですよね。その中で仕事と介護をされていて、とても深刻な状況だと思います。昼夜逆転は、アルツハイマー型認知症に多い症状ではありますが、まずは原因を探る必要があります。よくある原因としては、2つ考えられます。

1つ目は、日中の過ごし方に問題がある場合です。デイサービスでは、日中どのように過ごしているのでしょうか。散歩やレクリエーションなどで体を動かしているのか、日光を浴びているのか、もしくは本人がこうした活動をいやがって室内で静かに過ごしているのか、昼寝をしているのか。日中に体を動かさなければ、睡眠障害が起こりやすくなります。まずは日中の過ごし方をデイサービスのスタッフに確認してほしいと思います。

2つ目は、心理的な不安がある場合です。最近、お母さんが不安になるようなことが起きていないでしょうか。例えばテレビで災害のニュースを繰り返し見るなどすると、漠然とした不安を感じることがあります。訪問介護の現場でも、大きな災害が起きた後テレビのニュースでその映像が頻繁に流れると、利用者の落ち着きがなくなったり、外に出て探し物をしたりすることがあります。例えば台風で大きな被害が出たニュースが流れていたときには、認知症の利用者が子どものレインコートを探していたことがありました。

認知症の人は“今”ではなく自分が子育てに奮闘していたころの記憶の中にいることがあります。台風が来ているから、幼い子どものためにレインコートを用意しなければ、という気持ちになるのでしょう。実際に子ども用のレインコートを入手して渡したら、安心したようで落ち着きました。不安の原因がわかれば、それを取り除くための対応をすればいいわけです。

お母さんが片づけや探し物をするのは目的があるはずなので、リラックスしているときや調子が良さそうなときなどに、なぜ片づけるのか、何を探しているのかを聞いてみるといいと思います。

同時に眠れていないという相談者の負担を、できるだけ早く軽減するのも必要なことです。ショートステイを利用するなどして、休息の時間を持つようにしましょう。ショートステイを利用すると夜間のお母さんの様子について、スタッフ目線での気づきがあるかもしれません。

非常につらい状況だと考えられますので、1人で抱え込まず、ケアマネジャーやデイサービスの管理者にも相談してほしいと思います。

【まとめ】認知症の母が夜になると片づけや探し物を始めて、眠れないときには?

  • デイサービスのスタッフに日中の過ごし方を確認し、活動できるように対応してもらう
  • 最近不安になるようなことが起きていないかを探る
  • お母さんがリラックスしているとき、調子が良さそうなときに片づけや探し物の目的を聞く
  • ショートステイなどを利用して相談者の休息の時間を確保したり、周囲に相談したりする

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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