外からは見えにくい私の特性 自然な気遣いをしてくれたあの人も実は……
《介護福祉士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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不意に触られたり、声をかけられたりすると、
私は大声をあげてしまうことがある。
なぜなら、私には感覚過敏の特性があるからだ。
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「びっくりさせて、ごめんね」
「私こそびっくりさせて、ごめんね」
お互い謝りながら、私は不思議に思った。
『普通、そこまで驚く?』
誰からも出がちなそのひとことが、
彼女からは出なかったから。
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その日から彼女は
私の視界に入ってから
話しかけてくれるようになった。
ああ、そうだった。
彼女も、他者からは理解してもらいにくい、
特性を持っていた。
この自然な気遣いは、彼女ならではの視点。
私事で恐縮ですが、私は感覚過敏があるので、
日々の生活でつまずくことがあります。
そんな体質を私から言わなくても、そっと察して思いやってくれたのは、
実は障害や認知症がある知人・友人たちでした。
その人たちはそれぞれの症状によって、
外からは見えづらい困りごとを持っています。
だから、私のつまずきに対して過剰に驚くことなく、
察することができたのでしょう。
なにより、察してもらったその時の、
私が感じた安心感といったらありませんでした。
最近、障害や認知症がある方々が、
福祉の現場で、活躍されているのを見聞きします。
もしかしたら、バリバリと働くことはできないかもしれません。
けれど、いつものスタッフさんとはまた違う視点で、
そのお力を発揮されているのだと思います。
特に認知症の症状は様々で、
はっきりと表れないものであれば、
本人さえも自覚しづらく、
日々、小さなつまずきを繰り返してしまう場合があります。
そこを見逃さない、当事者スタッフさんたちの独特な視点こそ、
いま、現場に必要なものではないでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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