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父が「ヘルパーが俺を見下す」と不満 交代は可能?【お悩み相談室】

介護されるひと、Getty Images
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訪問介護管理者の滝口恭子さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.父(78歳)が要介護で訪問介護を利用しているのですが、最近担当になったホームヘルパーに対して「俺を見下しているからいやだ」と言います。前のヘルパーにはそんなことは言わなかったので、事業所に交代を依頼しましたが、人手不足を理由に断られました(53歳・女性)

A.ホームヘルパーの担当者が最近替わったのですね。利用者の方にとって、ホームヘルパーが替わるということは、大きなストレスになります。このため、訪問介護事業所では、退職などの事情がない限り、できるだけ担当を変えないように取り組んでいるところが多いと思います。

厚生労働省の報告(2020年度)では、ホームヘルパー(訪問介護員)の求人数は求職者数の約15倍(有効求人倍率)です。お父さんが利用している事業所に限らず、深刻な人手不足で、利用者のご希望に合わせて担当者を変えられないという実情は、確かにあります。

だからといって、このままサービスを続けていくのは、お互いにとってよくありません。ホームヘルパーの役割は食事や入浴、排せつなどの支援といった「身体介護」と、調理、洗濯、買い物などの「生活援助」があります。さらに大事な役割が、利用者の体調や生活に異変がないかどうか、チェックすることです。例えば「音沙汰がなかった息子から珍しく電話がかかってきて、事故を起こしたからお金を振り込むように言われた」といった話を利用者から聞いたヘルパーは、詐欺の可能性に気づき、利用者がお金を振り込むのを引き留めることができます。「さっき風呂場で転んでしまった」と言われたら、すぐに頭を打っていないかなど、体調を確認することができます。利用者は信頼していない相手に、こうした話はしないでしょう。ヘルパーとの間に日ごろから何でも話すような関係性があれば、さまざまなトラブルを防げる可能性が高くなるのです。

できることとしては、サービス提供責任者(訪問介護サービスを提供する事業の責任者)が間に入り、お父さんの「見下している」という発言の真意を確かめるなどして、なぜそのように思わせてしまったのか、原因を探ることです。人と接するときに、心地いいと感じる距離感は人それぞれです。ヘルパーとしては親しみを込めたつもりの話し方が、利用者にとっては距離が近すぎると感じることもあります。本来は、サービスを開始する前に確認するべきことではありますが、事業所内でうまく情報共有がなされていないと、利用者との距離感を見誤るといったことは起こります。こうしたことが原因であれば、ヘルパーが接し方を変えることで、関係修復の可能性はあるかもしれません。

ただし、人と人なので相性があり、どうにもならないこともあるでしょう。人手不足で交代はできないとのことなので、訪問介護を利用する曜日や時間帯を変更すれば、担当者が替わる可能性があります。希望の曜日や時間帯ではなくなってしまうかもしれませんが、検討するのも1つの方法です。

特に訪問介護は1対1のケアなので、信頼関係が大事です。信頼関係がないままだとサービスのメリットが半減してしまうので、事業所と協力して現状を改善できるといいですね。

【まとめ】最近担当になったホームヘルパーに対して「俺を見下している」と言う父。ヘルパーの交代を依頼したが、人手不足を理由に断られたときには?

  • ヘルパーの交代によって、お父さんがストレスを感じていることを理解する
  • サービス提供責任者に間に入ってもらい、お父さんはなぜ見下されていると感じるのか、聞き取り調査をしてもらう
  • どうしても相性が悪ければ、別の担当者に訪問してもらえる曜日や時間帯に変更する

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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