たまには許して そっと離れることを 聞く“だけ”こそ家族には難しいことも
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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またあなたの、愚痴が始まった。
『家族は聞いてあげれば、それで十分』
それが周りから、耳にタコができるほど聞いた、
介護者の私がしてあげられること。
——でも。
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他人ならまだしも、
距離感ゼロの、家族の話を聞くだけなんてできない。
『聞いてあげるだけでいいからね』
でもそれこそ、私には重すぎるアドバイス。
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ただ聞くことを、
出来なくたっていい。
逃げたっていい。
そうやって今日も私は、
家族の重みから自分を守る。
これも大事な
日々の介護のこと。
その言葉は、介護家族に対して、
医師や介護職によって多用されがちではないでしょうか。
かくいう私も何度、口にしたかわかりません。
それは、介護者さんのご苦労や気持ちを思いやるからではありますが、
実際には
「家族の気持ちを、じっと聞く」
ということ、
これこそが本当に難しいもの。
他人ならできても、家族だからこそ、近すぎて受け止めきれない事柄・感情。
多くの人が、身におぼえがあるはずです。
なので、
「——とは言っても、家族の話ほど、聞けないもんですよね」と
その難しさを率直に話してもらえたら、
どんなに介護者さんの心が楽になることでしょうか。
なかなか行き場のない、介護者家族の気持ち。
ひとりで背負わせすぎないためには、
お互い理想にとらわれずに、
腹をわって出てくる言葉が、必要なのかもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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