うんざりする一方的な愚痴 対話に変えることで介護現場が安心の場に
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
高齢者施設で働く僕にとって、
休憩時間は、ほっとひと息つけるひととき。
なのにいつからか僕は、
この時間が、つらくなってしまった。
それは、同僚どうしの愚痴が多くなってきたから。
僕も人のことは言えないけれど、
毎日、人の悩みを聞かされ続けるのは苦しい。
ひとりになってSNSを開くほうが、ずっと安心する。
——でも、本当は。
人の心身に触れる、
介護職の僕たちだからこそ、
思いを分かち合って、働きたいんだ。
僕はほしい。
安心できる対話の場がほしい。
「○○さんの爪を切ってる時間がなかった」
「もう少し、他の職員のサポートがほしい」
「どうしてあの人、あいさつを返してくれないんだろう」
例えば、そんな休憩時間の会話は、
内輪であるからこそエスカレートしたり、陰気になったりしがちです。
なかには、それが辛くて、
職場の人間関係をこじらせてしまった、という話も聞きます。
ただ大切なのは、介護職員の愚痴は
決して単なる愚痴ではない、ということです。
どの話題も、現場の改善につうじる可能性があるものばかり。
介護スタッフもそれを分かっているからこそ、話さずにはいられないわけです。
だからこそ現場では、風通しの良い対話の必要性が叫ばれています。
一線を保ちつつ、お互いの気持ちをフラットに伝えあえる、対話の場。
それがあるだけでも、現場の改善に留まらず、
人間関係が格段によくなることを、私も体験しています。
「対話と言っても、なにをすればいいんだ」とまじめな上司がこぼしていたことがありますが、
ミーティングも、トップダウン形式ではなく、
介護職員ひとりひとりの声が、分け隔てなく行き交うような雰囲気であったら、
見違えるのではないでしょうか。
チームの基盤として対話の場がある。
それこそが、介護スタッフの安心につながるはずです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》