認知症とともにあるウェブメディア

コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

マスクに血が!唇を傷つける母の前歯 食事も歯も諦めずにすんだ一手

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。上下の歯と歯が重ならず、下唇を噛んで出血してしまうお母さん。歯科医には抜歯を勧められましたが、なんとか抜かずに解決したいと模索したときのお話です。

マウスピースを作ろう

「あれ? また血が出てるね。」
ふと見ると、母の口から血が出ていることが増えていました。下唇を噛んでしまうのです。噛んだ瞬間、「痛っ!」と顔を歪めるのですが、マスクをしていると発見が遅れ、マスクに血が滲んで初めてわかることも。
意図せず口が動いてしまう不随意運動が増えて、上下の歯が噛むようにカチカチと勝手に動いてしまうのですが、上下の歯と歯が重ならず、空振りした拍子に下唇を噛んでしまうようなのです。同じ場所ばかり噛むので、そこだけ凹んで、白く口内炎のようになってきました。

月に一回クリーニングに行っている歯科医院の先生によると、グラついてきた左上の義歯を外し、歯がない状態になったことで、噛み合わせのズレが生じたのが原因ではないかとのこと。ズレを元に戻すのは困難です。とりあえず、下唇に当たる前歯が鋭利だったので、対処療法として、少し削って丸めて当たらないようにしました。
すると、血まみれになる回数は格段に減り、その上、食べる量が劇的に増えました。痛みが軽減するだけでこんなに食欲が変わるものかと驚くほど。母の調子が上がると、私の心も上向きに。しばらく気分良く過ごしていました。

ところが、一ヶ月、二ヶ月と時間が経つと、また血まみれになってきました。歯科の先生は、これ以上歯は削れないので前歯を抜くしかないとのこと。しかし、前歯は食べ物が口から出ないよう堰き止める壁の役割もあるので、食べ物を噛む時に口の中に留めておくのが難しくなります。食べ物を喉の奥へ送り込むことが困難になりつつある母にとって、これ以上歯を失うことは回避したい。食べられなくなるかどうかの瀬戸際です。

他に方法を探るべく、訪問嚥下リハビリテーション外来の先生に相談しました。
すると、
「マウスピースを作ってみるのはどうでしょう?」
マウスピースか……。私の脳裏をよぎったのは、過去に部分入れ歯を作って断念した記憶です。まず、型を取るのに一苦労。口の中を開いた状態で押さえている人は、絶対に指を噛まれます。力いっぱい。容赦なく。そして、そんな大変な思いをして作ったのに、不随意運動で舌が動くことで、いつの間にか部分入れ歯が外れてしまい、誤って飲み込むと怖いということで即使用中止になったのです。

それでも、チャレンジすべきではなかろうか。とにかく、食べられなくなることは絶対に避けたい。マウスピースを作ることにしました。
デンタルブロックを使って型を取る人の指を守り、母も、開かない口を一生懸命開けて頑張り、型を取ることはクリア。

開口困難、開口障害の方が開口を維持するためのデンタルブロック。誤って噛まれても介護者の指をガードしてくれます
開口困難、開口障害の方が開口を維持するためのデンタルブロック。誤って噛まれても介護者の指をガードしてくれます

そして、一ヶ月後に出来上がったマウスピースをはめてみると、ピッタリ! 不随意運動が起こっても、もう唇に刺さりません。加えて、人相も変わりました。下唇を噛み過ぎて、右端が、斜め下に歪んで突き出ている、歌舞伎の見栄を切るときのような口になっていたのですが、はめただけで元のまっすぐな位置に戻ったのです。あとは、すぐ外れないかどうか。すると、先生は、
「これどうかなっていう対策があるんです」
マウスピースを手にすると、穴を開け、デンタルフロスを通しました。これをスタイクリップなどで挟んでおくことで、万が一外れた時も喉の奥へ入るのを防げるとのこと。口からヒモが出ているのが気になりましたが、マスクをしているのでちょうど隠れます。いい感じです!

先生が誤飲防止にと、出来上がったマウスピースに穴を開けて、デンタルフロスを通してくださいました
先生が誤飲防止にと、出来上がったマウスピースに穴を開けて、デンタルフロスを通してくださいました

歯を抜く宣告を受けた時は、食べられなくなることも覚悟せねばならないと思いました。そんな、徳俵に足がかかっていたところからの大逆転。
たまにマウスピースが外れていることもありますが、紐が付いているおかげで、喉の奥の方まではいかずに済んでいます。マウスピースを再度、微調整したり、まだまだベストは探り中。様々な知恵と工夫で、乗り越えていきます。

型をとって作った模型と、出来上がったマウスピース(上)。口の中ではこんな感じで、下の前歯にマウスピースがすっぽりハマります(下)
型をとって作った模型と、出来上がったマウスピース(上)。口の中ではこんな感じで、下の前歯にマウスピースがすっぽりハマります(下)

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア