「どうしてる?」のひと言を臆せずに 認知症の友との縁はこれからも
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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認知症がある、あなた。
最近は、通院に、デイサービス、トイレのことまで、
ご家族やヘルパーさんの手を
しょっちゅう借りるようになってきた。
それを見てたら私、なんだかあなたに
声をかけづらくなってきたの。
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だって私、なんの役にも立てない。
あなたにとって私は、
たかが友だちだったのを、
思い知らされちゃった。
遠くで見守る。
これからは、そんな友だちでいようかな?
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それでもやっぱり、
あなたに、会いたいな。
最期まで、えっちらこっちら
歩いて行かねばならない道を
持ちつ持たれつ。
ずっと友だちでいたいのよ。
私たちは、友だちづきあいにおいて、
どちらかが認知症になったり、病にふせる状態が続いたりすると、
遠慮しすぎてしまう傾向がないでしょうか。
せっかくつないできた縁を、
気遣いから終わらせてしまうことは、
本当にもったいない、と思います。
たしかにそばにいるご家族に比べたら、
友だちにできることなど、限られています。
友だちは現実的なあれこれに役に立たない。
もしかしたら、それも事実かもしれません。
でも、友だちとは本来そんなものではないでしょうか。
無意味に感じるような時間をともに過ごしたり、
「言わなくてもいいや」と秘めていたひとりごとさえ、腹を割って話してみたり。
もし、そんな友だちとの時間がなかったら、
私たちの人生はどんなに無味乾燥なものになってしまうでしょう。
年齢を重ねるほど苦みも出てくる日々を
ちょっと俯瞰(ふかん)して、一緒に味わえる存在。
友だちは、人生の豊かさそのものかもしれません。
だからこそ「あの人に会いたいな」と
小さなあかりが胸に灯った時、臆せずに、
「どうしてる?」と声をかけたいものです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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