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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

親知らずの抜歯で嚥下障害を疑似体験 食べられない母の大変さと介護食の極意

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回は、毎月お母さんの付き添いで訪れていた歯科で、ご自身の口腔チェックも受けていた駒村さんがついに、虫歯宣告を受けてしまったときのお話です。

親知らず

私は毎月母に付き添って歯科医院に行っており、ついでに、私自身の口の中の状況を診てもらっています。毎月チェックしているのですっかり安心していたのですが、昨年11月、まさかの虫歯宣告。右上の親知らずと、その隣の奥歯が虫歯になっているとのこと。重なっている部分なので随分進んだ状態にならないと虫歯を発見しにくいそうな。
大ショックです。父からは「金儲けやと思って歯を磨け」とあんなに言われていたのに!

大学生の頃、親知らずを抜歯したことがあります。その際、大学病院の先生が手こずり、口を開けたまま、手術に4時間かかりました。耳元で「アッ」という声が聞こえ、その度に先輩の先生を呼びに行き、助言を受け、ホチキスのようなものでバチバチ留めても血が止まらなかった時の先生方の焦燥感は、顔に布がかかっている状態でもひしひしと感じられ、恐怖でした。それ以来の親知らずの抜歯です。

親知らずを抜くと、顔が腫れ、熱が出る可能性もあります。血が出るのであまり力を入れて母の介護をするのも良くないでしょう。私の負担軽減のため、デイサービスに母を長めにお願いする必要もあります。仕事の兼ね合い等も色々考えた結果、一週間のお休みがとれる正月休み前の昨年末、2022年のあさイチ最後の放送を終えたその足で口腔外科に行きました。
ところが、歯の画像を見た先生から、「これは割と大変そうですね〜。隣りの歯もダメになる可能性もありますし。今日抜いちゃおうと思ったけど、骨も削るし、日を改めましょう」
難易度の高い手術になりそうとのこと。

次に一週間の休暇を取れるチャンスは三か月後の春の高校野球の期間。例年一週間程放送中止になります。あとは母の体調次第。母の容態が悪くなると、抜歯どころではなくなります。何ごともないように祈りながら迎えた3月下旬。多少の波はあったものの、母は落ち着いた状況だったので、ついに抜歯です。
相当時間がかかると覚悟していました。が、
「あ、抜けましたね! 大変かと構えていたら、そうでもない。そうでもないと思っていたら大変になる。そういうものですね。ハハッ」
所要時間30分ほど。先生も拍子抜けするスピードで、無事に隣の歯も温存でき、抜歯は成功した模様。有り難い。

しかし、そこから我慢の日々です。
4時間ほどして麻酔が切れたら激痛に襲われ、夜も痛くて眠れない。口は開かないし、血の味がします。しっかり噛めないので最初は液体しか飲めませんでした。

もしや、母のために作っておいた介護食だと食べられるのでは!?

噛みづらさを解消するために細かく切ったり柔らかく煮たりしていた食べ物のストックが、うちの冷凍庫にはたくさんあります。

たくさんのストックで、冷凍庫はいつもギューギューです
たくさんのストックで、冷凍庫はいつもギューギューです

何度も作るのが面倒なので、一度にたくさん作って小分けに保存。さらに、災害用に備蓄していた市販のものもあり、賞味期限も近いしそろそろ食べないとなと思っていたところ。ローリングストックの消費にもちょうど良い!

噛む力が弱くなった高齢者向けに開発された、あらかじめ柔らかく加工されている食パン(上)。備蓄しているレトルトの介護食(下)。ミキサー加工されているので、噛まずに食べられます
噛む力が弱くなった高齢者向けに開発された、あらかじめ柔らかく加工されている食パン(上)。備蓄しているレトルトの介護食(下)。ミキサー加工されているので、噛まずに食べられます

口が開かないのも母と同じ。カレースプーンを口に入れようとしても口を開けられません。口に入れる食材の高さが高いと口の中に入らないし、小さくして入れたとして、咀嚼するときは唇を通過した時より開かないと噛めないため、咀嚼のたびに痛みが走ります。

噛まなくてもよいマッシュポテト、クラムチャウダーのクラム抜き…これらはうってつけでした。

マッシュポテト(左上)は、母には、その日の状態に合わせて、牛乳などでとろみをつけて濃度調整をしますが、私はそのままレンチンして食べました(左中)。クラムチャウダー(クラム抜き)のストックもありました(左下)。我が家の定番サムゲタン風スープ(右)は新たに作りました。母用は、もっと煮込んでもち米のとろみを出しますが、私は飲み込みが悪いわけではないので、液体で。鶏肉は柔らかく、口が開きにくくても食べられます
マッシュポテト(左上)は、母には、その日の状態に合わせて、牛乳などでとろみをつけて濃度調整をしますが、私はそのままレンチンして食べました(左中)。クラムチャウダー(クラム抜き)のストックもありました(左下)。我が家の定番サムゲタン風スープ(右)は新たに作りました。母用は、もっと煮込んでもち米のとろみを出しますが、私は飲み込みが悪いわけではないので、液体で。鶏肉は柔らかく、口が開きにくくても食べられます

甘いものが食べたくなってこし餡の大福を買ってきたのですが、小さくちぎっても餅が上顎にくっつき、それを舌で取ろうと口を縦に開けるので、その開く幅が大きくなると痛みが走ります。食材の性質の考慮は重要と再確認。

親知らずのお陰でまた少し介護食について勉強になりました。思いがけず、この経験は生かせそうです。

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