車椅子の母との電車移動で感激!ハードもハートもバリアフリー化進行中!
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。車椅子の母親との電車移動は苦労の連続。だからこそ気づくうれしい変化を感じたときのお話です。
電車利用、ソフトもハードもアップブレード
久しぶりに利用した駅にホームドアが設置されていました。それと共に、足元を見ると、ホームの端がかさ上げされて、電車に向かって短いスロープがついていました。気づかない人もいるかもしれない小さな変化。しかし、私は感動しました。これで電車とホームの段差が縮小されたと!
実は、以前この駅で車椅子に乗る母を押して電車に乗りこんでいる最中、ドアに挟まれたことがありました。電車とホームの隙間はそんなに大きく開いているように見えなかったので、わざわざ乗降スロープを駅員さんにお願いするほどでもないと、私一人で介助していました。ところが、乗り込む際に車椅子の前輪がうまく車両に乗らず、近くの座席に座っていた男性が駆けつけて一緒に持ち上げてくださったのですが、その最中に、ガシャン!と。ちょうど、綺麗に、3人で挟まりました。
乗車位置は先頭車両の一番前のドア。運転席の運転士さんはすぐ目の前だったのですが、後でよくよく考えたら、安全確認をするのは最後尾の車掌さん。
乗車位置を悔いたと同時に、電車とホームの高低差を侮っていたと猛省。ハンドルに私の体重をかけて、てこの原理で前輪を持ち上げていましたが、限度があると悟り、これ以降、駅員さんに同行していただいて乗降スロープをお願いするようになりました。いつも嫌な顔ひとつせず対応してくださって感謝しかありません。
数年前のこと。まだエレベータが設置されていない駅で、ちょうど車椅子利用者が重なって、階段に取り付けられた車椅子昇降機の順番待ちが長くなったことがありました。インターホンで駅員さんにお願いするのですが、10分以上音沙汰がありません。ようやく、駅員さんが先頭の方のもとへやって来たとき、私のすぐ前の方が、「遅い!」「こんなに待たされるのは初めてだ」と、延々と駅員さんに苛立ちをぶつけ、駅員さんはそれを聞きながら黙々と昇降機の準備をしていました。確かに、私も余裕をもって出てきていたものの、次の予定を心配するほどではありました。車椅子ユーザーが妙な遠慮をすることなく出かけられる社会であるべきと思いますが、サービスをいいことに、助けてくれている人に対してどんな態度をとってもいいわけではありません。ハード面の改良が進むことで、不要なイライラによる険悪な状況もなくなるでしょう。
ハード面だけではなく、駅員さんの車椅子ユーザーへの理解も増しているように思います。
先日母と出かけた長野駅でのこと。予め車椅子介助をお願いしていたところ、名札に「介助士」の記載がある若い女性の駅員さんが同行して下さいました。たくさんの荷物を抱えて車いすを押していた私を見て「持ちましょうか?」と声をかけて下さったのですが、本来の業務ではないし、大荷物は慣れっこなので、「大丈夫です!」とお礼を申し上げつつ丁重にお断りしました。
無事に電車に乗り込み、終点新宿駅で降りると、介助の方が二人、私たちを待っていました。そんなことは初めてです。一人が先導役。もう一人は私の代わりにハンドル操作をして下さいました。
コロナも落ち着きをみせ始め、休日の新宿は雑踏が戻ってきていました。
「今日は人が多いから二人体制で来てくださったんですか?」
歩きながら質問してみると、
「いえ、長野駅から、お客様の荷物が多いから二人でと連絡があったんです」
そんな申し送りまでしてくださるのか! もちろん、他のお客様と重なっていなかったから来てくださったと思いますが、細やかな気づかいに感激しました。
これからバリアフリーはもっと広がっていくと思いますし、そう願ってもいます。ただ、最終的には「人」がかかわること。お互いを尊重しながら、感謝の気持ちを忘れずに、成熟出来たらと思っています。