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異常な食欲で孫の分まで食べる認知症の母 健康面も心配です【お悩み相談室】

ごはんを食べるひと、Getty Images

地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(83歳)と暮らしていますが、食欲が異常にあって困っています。自分の分がなくなると、孫の分の皿に手を出して食べてしまったり、夜中に起きて冷蔵庫や棚のものを食べてしまったり。小太りなので健康面も心配です。(50歳・女性)

A.過食は、認知症のBPSD(行動・心理症状)の一つです。食事をしたことを忘れてしまったり、満腹であることを感じにくくなったりすることが原因だと考えられます。食べても食べてもおなかがすいてしまう方もいらっしゃいます。

家の中の食べものをすべて隠したり、冷蔵庫や棚にカギを設置したりするのは簡単な方法で、効果がある場合もありますが、私の経験からいうと、あまりおすすめしません。食べることは命をつなぐための行為ですから、認知症の人にとっても、非常に大事なことなのです。食べられないという不安は、BPSDを助長することにつながる可能性があります。また、必死に食べものを探して、家の中を荒らしてしまったり、勝手に買いに行ってしまったりして、別の問題を引き起こすことが考えられます。

おすすめの方法としては、一日の食事回数を増やすことです。一回の食事量を少なめにして一日5食にしたり、食事と食事の間に軽食をはさんだりすると、食べたいという欲求を満たせると思います。一食分の食事を一度にテーブルに並べるのではなく、少しずつ出すようにすると自分の分が食べ終わったからといって、孫の分にまで手を出すということは防げるのではないでしょうか。食べ終わったお皿もそのままテーブルに残しておくと、食べたことを自分で確認でき、納得しやすくなると思います。

持病や口腔(こうくう:口の中)・嚥下(えんげ:飲み込み)状態を考慮する必要はありますが、満腹感を得やすいように、小さめのおにぎり・バナナなど腹持ちのいいものを軽食にしたり、野菜のおひたしやひじきなど、よくかんで食べるおかずをとり入れたりするのもいいと思います。

こうした対策は少し手間のかかることではありますが、理解していただきたいのは、過食の症状は長くは続かず、一時的な場合が多いということです。もちろん認知症の進行状況や環境などによって個人差はありますが、一時的なものだと考えれば、家族としてもお母さんに余裕をもって接しやすく、それが結果的にお母さんのためにもなると思います。

BPSDは環境や人間関係などが影響して、引き起こされます。デイサービスや訪問介護などの介護サービスを利用している場合は、サービス利用中に気になる点はないか、関わるスタッフやケアマネジャーに聞いてみるといいでしょう。お母さんのことを違う視点からみることができ、新しい発見があったり、原因がわかることにつながったりするかもしれません。

【まとめ】認知症の母の食欲が異常にあり、困っているときには?

  • 一日の食事回数を増やし、その分一回の食事量を減らす
  • 腹持ちのいい食べ物やよくかんで食べる食材をとり入れて満腹感を得やすくする
  • 環境や人間関係が影響している可能性もあるので、関わる人たちでお母さんの様子をよく観察する

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