奇跡の日? 狩る紅葉 準備万端、母娘旅 今年はどこへ行こうかな
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回のテーマは紅葉狩り。その人の立場になってみないと気づけないこと、ここにもありました。
恒例行事、紅葉狩り
木々の色づきは、心をときめかせます。
私が毎日通うNHKの最寄り駅は渋谷なのですが、原宿駅や代々木公園駅も徒歩圏内にあり、こちらを利用すると代々木公園沿いの道を通るので、私は好んでこちらのルートで通勤しています。少しずつ増える落ち葉を踏みしめながら、一歩ずつ深まる秋を感じ、冬の足音を聞きます。
私は母と毎年のように紅葉狩りに出かけていました。見ごろを迎える時期の休日、朝、起きて天気が良いと
「今から紅葉見に行こうか。どこ行く!?」
と急いで携帯電話を手に取り、紅葉情報を調べてロマンスカーを予約し、箱根へ出かけたこともありました。帰りに温泉にも浸かって、ちょっと忙しかったのですが、目的は全部果たした日帰り旅でした。
泊まりで計画したこともありましたが、私は常日頃からタイミングの悪い女なので、例年の見頃の時期を狙って予約をしてもその日が見頃にはならず、ただ緑色の山を見て帰ってきたことも。でも、いいお湯、美味しい食事、浮かれてついつい買いがちな売店で母はハンドバッグを買い、紅葉は残念でしたが楽しい旅でした。
車椅子移動になってからの紅葉見物は、場所選びの優先順位が全く変わりました。歩くことは出来るけれど長距離の歩行は不安という頃は、行った先で車椅子を貸し出してくれる場所を選んでいました。その後もバリアフリー最優先。道幅や混雑具合などをウェブやSNSにアップされている写真を見て推測し、必要であれば問い合わせをして、スムーズに動けるようなところを選びます。
紅葉の名所だけを基準に選ぶと山が多く、どうしても狭くて勾配がある道が多いので、無理なく移動可能かを見極め、断念することも多々あります。
公共交通機関の乗り換えやエレベーターの位置なども事前にチェック。乗り換えアプリは、私一人の場合、いつも「せかせか歩く」設定で検索していますが、母とのお出かけでは「エレベーター優先」に設定を変更。加えて、乗り換えにかかる時間をさらに見積ります。
ハイシーズンになると、ターミナル駅では大きな荷物で移動されるかたも増えるので、1回でエレベーターに乗れることは稀です。隣のホームに行くのに、まず改札階へ行くエレベーターを2回くらい見送り、ようやく乗って改札階で降りて、隣のホーム行きのエレベーターに並び、乗るまでにまた2~3回待つと、隣の電車に乗りこむのに20~30分かかることも。見えている電車が本当に遠いです。
それでも、東京五輪、パラリンピック以前は、階段に取り付けられた車椅子用階段昇降機しかなかった駅もあり、エレベーターが新設されたことで駅係員の方にお願いせずとも改札階へ行けるので、少しずつ環境が整備されて助かっています。
電車を降りてからも、駅のエレベーター出口から行き先までの動線を地図アプリでチェック。目的地に一番近い出口に必ずしもエレベーターがついているとは限らないので、なんとなくの地図を頭に入れて、迷子にならないようロスタイムを防ぎます。
そんなわけで、所要時間が相当かかるので、結局近場に出かけるようになりました。
最近は、それさえも難しいことが増えています。
計画を立てていても体調の変動が激しい母に無理はさせられないし、天気にも恵まれないと。
そうやって考えると、紅葉の見頃、当日の天気、体調、私のスケジュール、すべてが合致することは奇跡に近いです。
それでも、今年も紅葉見物に出かけるつもりで、お出かけに備えて母と美容室に行ってきました。寒くないようにストールなどの準備も万端です。あとは母の体調次第。この原稿が公開される頃は、もう都内の見頃の時期は過ぎているかもしれません。ちょうど見頃のとき、どこかへ出かけられていたら、いいな。
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