老後の生活費2千万円はリアル? 年金や退職金の使い道 専門家のアドバイスも
更新日 なかまぁる編集部
かつては、会社員の多くが60歳からもらえた年金。けれど、厚生年金は支給開始年齢が少しずつ引き上げられ、今春以降に61歳になる人(1961年4月2日生まれ以降の男性)からは、いよいよ原則65歳からの支給となります。また、「人生100年時代」とも言われ、政府は企業に対して従業員が70歳まで働けるように努力義務を課すようになりました。その先には、さらなる年金の支給開始年齢引き上げの思惑も見え隠れします。今後はますます、老後に必要となるお金について、自ら考え、備えておくことが求められることになりそうです。
そこで、認知症を専門とするウェブサイト「なかまぁる」では2022年2月、「Yahoo!ニュース」を通じて、65歳未満の2千人のYahoo!ユーザーを対象に「老後に必要なお金に関するアンケート」を実施しました。回答者は、24歳以下が3%、25~34歳が11%、35~44歳が28%、45~54歳が37%、55~64歳が21%となりました。
アンケートでは、大半の人が年金生活となる65歳以降を「老後」とし、みなさんにご意見を聞きました。
何かとお金がかかりそうだと予想される老後。「支出が増えると思うものは何か?」(複数回答)について尋ねました。
増加要因の双璧となるのはやはり「医療費」(回答数1765)、「介護費」(1214)でした。回答者2千人のうち、「医療費」は9割近く、「介護費」は約6割が、増えると見込んでいることになります。次いで多かったのは、自らのことではなく「子や孫に関する費用」(463)。親心、祖父母心の表れでしょうか……。そのほかは「日常の交通費」(355)、「食費」(311)、「趣味の費用」(232)や「旅行の費用」(213)、「衣服費」(64)と続きました。「趣味」や「旅行」については、増やしたいという願望も含まれているのかもしれません。
これに対して、「老後に支出が減ると思うもの、減らしたいと思うものは何か?」という質問に対しては、おおむね前述の増加要因と逆の結果となりました。
最多は「衣服費」(910)。定年退職後、自宅にいることが多くなることを想定しているのでしょう。すでに衣服の好みも定まり、新たな購入は不要ということもありそうです。「食費」(696)、「日常の交通費」(497)、「趣味の費用」(460)、「旅行の費用」(438)は、増加よりも、減少や削減の対象として捉えている人の方が多いようです。「子や孫に関する費用」(134)、「介護費」(261)、「医療費」(368)は、増加を見越しつつ、減らしていきたいといった思いが表れているようです。また、「減る、減らせる支出はない」(275)という切実な意見もありました。
「自身の老後に必要となるお金は、いくらぐらいだと想定しているか?」という問いに対して最も多かったのは、「2千万円以上3千万円未満」(25.5%)。次いで「1千万円以上2千万円未満」(24.2%)、「3千万円以上4千万円未満」(10.1%)、「5千万円以上」(7.9%)、「1千万円未満」(6.6%)、「4千万円以上5千万円未満」(2.9%)と続きました。「わからない」という回答も23.0%を占めました。
ほぼ、半数の人が、老後に必要なお金として「2千万円前後」を想定しているという結果となりました。それには、2019年に金融庁の審議会の作業部会による「老後に2千万円必要」とする報告書の内容が報じられたことが影響している模様です。報告書は、現役時代からの資産形成を呼びかける内容でしたが、貯蓄をしたくてもできない人は多く、世論の反発を招き、事実上、撤回されました。
しかし、「老後2千万円」のインパクトは強く、このアンケートで「老後にお金が必要だと切実に感じた出来事」を自由に記入する質問では「ニュース等で老後2千万円問題がとりあげられるようになってから」といった記述が相次ぎました。中には、政府が「慌てて火消ししたのを見て逆にリアルにいると感じた」との感想もありました。
7割弱の人が、老後までに必要なお金をためられるとは思わない
実際に「自身の老後までに必要なお金がためられると思うか?」を尋ねると、「思わない」(33.4%)、「あまり思わない」(34.3%)で合わせて7割弱の人が、必要なお金をためることが難しいと感じていることが分かりました。一方で「思う」(11.0%)、「ややそう思う」(19.8%)と、ためられそうだと思っている人は、約3割にとどまりました。「ためる必要はない」(1.6%)という声もありました。
老後に必要なお金をためることが難しい理由としては「暮らすのに精いっぱいでためることなど不可能だから」「給料が上がらないから」「給料も低く子どもも3人いてまだまだ教育費にかかるから」といった悲痛な声が上がりました。さらには「収入は変わらないものの、物価上昇などで支出が増えることが予想できるから」と、今後の物価上昇への懸念を示す意見もありました。
具体的に「どのようにお金をためているのか?」(複数回答)について挙げてもらったところ、圧倒的に多かったのは「貯金」(1409)。それに「個人年金保険」(494)、「株式投資」(441),「投資信託」(417)、「FX」(70)、「仮想通貨」(66)などを組み合わせている人が多いようでした。「その他」として「ポイント活用」に取り組んでいる人も。「何もしていない」という回答は378ありました。
退職金の使い道は「自分の老後の備え」が最多
老後の資金の一つとして考えられるのが退職金です。「退職金をどのように使う予定か?」(複数回答)も聞きました。「自身の老後の備え」(1010)との回答が最も多く、それに「趣味」(258)、「旅行」(247)、「株式投資などでの運用」(247)、「マイホームなどローンの返済」(178)、「住宅のリフォーム」(159)、「子どもに相続」(89)を加えた回答が目立ちました。一方で、「退職金はない」(752)という回答も多くありました。全回答者のうち専業主婦(主夫)が12%、自営業・フリーランスが12%、アルバイトが11%でした。退職金とは別の形で老後の資産形成を考えていく必要がありそうです。
老後のお金のあり方は、自身だけでなく家族にも大きく関わることです。「老後のお金について、家族と話し合ったことがあるか?」(複数回答)を尋ねたところ、「家族はいるが、話し合ったことはない」(986)が最も多く、家族で話し合いが行えていない状況が浮き彫りになりました。話し合った人では、「配偶者」(560)が多く、「子ども」(69)は少数派でした。
「その他の家族」(176)と回答した人は、自身の親や兄弟・姉妹と話し合った人が目立ちました。
老後に生活をダウンサイジングできるか考えて FP豊田さんアドバイス
「老後のお金をためる」と一口に言っても、現在の働き方や家族構成などが様々なだけでなく、老後の過ごし方についての希望も千差万別です。老後に必要となるお金について、具体的にはどのように備えていけばよいのでしょうか? ファイナンシャルプランナーで、終活アドバイザーでもある豊田眞弓・FPラウンジ代表は「まずは、老後の生活について、大きくダウンサイジング(規模縮小)できるのか、それとも、今に近い生活を続けていきたいのかを、明確にすることが重要」と強調します。
例えば、年金だけでは、首都圏で暮らし続けることが難しい人でも、地方の中核都市などへ移住し、家賃や生活費などを抑え、年金額の範囲内でまかなえるように生活をダウンサイジングするつもりならば、多額の老後資金をためる必要はありません。一方で、支出が年金額を上回るような現役時代と同様の生活を希望するならば、何らかの手段で資金をためていくことが求められることになります。
その際には「今、子育て中の人は、末子の中学卒業までに、その後の高等教育にかかる教育費をため終えておくことをお勧めします」と豊田さん。そうすることで、教育費が多くかかる時期に、教育ローンなどの借金をせずにすみ、さらには、次の段階として、自身の老後のためのお金をため始めることができるようになるのです。
今後は、物価の上昇も懸念されます。豊田さんは「預貯金だけでは、物価が上昇すれば、資産が目減りしてしまうため、投資信託などでも資産形成に取り組んでおく必要がある」とアドバイスします。もちろん、一定のリスクが伴うため、運用する資金は、「3年以上使う予定はない資金の内の3割ほど」にとどめるのが得策とのこと。老後の生活を支えることになるお金ですから、ハイリスクなFXや仮想通貨などではなく、中長期に運用することでローリスクな上に節税効果もある個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や少額投資非課税制度「つみたてNISA」(ニーサ)」の活用がお勧めです。
人生で最も無駄だったと思う買い物は……
最後に「これまでの人生で最も無駄だったと思う買い物」について尋ねた結果を発表します。みなさん、出てくる、出てくる……。
ギャンブルやゲーム、タバコといった浪費や不健康な習慣に使ったお金に対して後悔の声が多数。エステ関連も、効果が見えず、無駄に終わった人も多いようです。中には「たいして脱毛出来た範囲はなかったのに、130万以上かかった」「コースに入会させられ、高額の支払いをしたが、忙しくてほとんど通えなかった」という事例も。
一生の買い物とされるマイホームに対しても納得がいっていない人が多いようです。「子どもが独立するまではよかったけれど、もっと便利な場所を購入するべきだった。老後の生活には不便」「1回目に購入した住宅。勤務地から遠く不便でほとんど住むことなく何十年も業者に管理をしてもらい、ようやく手放せた」などのコメントが寄せられました。
そして、結婚にまつわるあれやこれや。結婚相談所の入会金から、指輪、結婚式、嫁入り道具まで、お金をかけたことに対して無駄だったと感じている人が目立ちました。「結婚した時に親に用意された着物一式。相手の親が見るからという理由だけで用意されたが、本当に必要なかった」など、時代にあったお金のかけ方が求められているのかもしれません。
※この記事は、「なかまぁる」とYahoo!ニュースによる共同企画です。