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教えて!あなたの健康法(前編)中高年が簡単に取り入れられる工夫とは

2019年、東京マラソンのボランティアとして参加したときのユニフォーム一式=川口さん(仮名)提供
2019年、東京マラソンのボランティアとして参加したときのユニフォーム一式=川口さん(仮名)提供

あなたにとって“健康”とはどんなことでしょう。不調がないこと? あるいは健康診断の結果で基準値をクリアしていることでしょうか。なかまぁる編集部では、4月に実施した「健康に関するアンケート」の回答者に、健康に関するお悩みや工夫をインタビュー。前後編にわけて紹介します。また東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授・診療部長の若林秀隆さんに、体のあちこちに故障や病気が出てくる中高年が目指すべき健康についても聞きました。

地道に解消したメタボがコロナ禍で元の木阿弥に

「朝の気分よい目覚めが健康のバロメーター」というのは東京都在住の川口令治さん(仮名、65)。中学校教諭を60歳で定年退職した後は、放課後の学習教室の手伝いをはじめ、地元自治体のスポーツボランティアやスポーツ推進委員、町会の役員なども引き受けて、活動的に過ごしています。現役時代から早寝早起きですが、年を重ねるごとに、いったん眠った後、夜中3時半ごろに目が覚めて、そのまま眠れず、昼間に眠くなるようなことが増えてきたそう。よく眠れて、朝シャキッと目覚め、日中はしっかり元気に動けるような体調維持がひとつの目標です。

川口さんのもうひとつの課題はダイエット。50歳を過ぎたころ、メタボ健診(特定健康診査)にひっかかったことから始めました。自宅から最寄り駅までのバスや自転車で行っていたのを徒歩に変え、片道約20分、往復40分を毎日ウォーキング。「これで最大20kg減量しました! ただそれは通勤で毎日続けられたたまもので、定年退職とともに5kgリバウンド。コロナ禍の外出自粛でさらに体重マシマシ(増し増し)。この春の健診ではついに腹囲がメタボ基準をオーバーしてしまいました」。定年後にはフレイル(注1)やロコモティブシンドローム(注2)予防を意識し、プロテインを飲んで腕立て伏せや腹筋などの筋トレやランニングも始めたそうですが、「とにかくすぐチャレンジはするけれど、長続きしなくて。元々の性格なんです(笑)」と川口さん。そしてジャンクフードがやめられないのもウィークポイントだといいます。

スイムとランを続けて行う競技の大会「小金井アクアスロン大会2019」に出場。ゼッケンは腕に直接、書いた=川口さん(仮名)提供
スイムとランを続けて行う競技の大会「小金井アクアスロン大会2019」に出場。ゼッケンは腕に直接、書いた=川口さん(仮名)提供

そんな自分を何とか奮い立たせモチベーションを維持するために、目標となるマラソン大会などに毎年参加するようにしていました。コロナ禍で軒並み中止になっていましたが、この秋は待ちに待った開催予定の知らせ! 早速エントリーしたそうです。「食べることも好き。大好きなハンバーガーでも何でも、いつまでもおいしく食べられればうれしい。そのためにもちゃんと健康でいたいと思っているんです」。

(注1)フレイル:加齢などによる身体的・精神心理的・社会的脆弱(ぜいじゃく)状態で、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすい状態。要介護状態に至る前段階。
(注2)ロコモティブシンドローム:骨や関節の病気、筋力・バランス能力の低下などにより、転倒・骨折しやすくなること。要介護リスクが高い状態。
※「フレイル」や「ロコモティブシンドローム」についてもっと知りたい方は、こちらの記事へ『心身が弱る「フレイル」 予防法やチェック方法は 専門家が徹底解説』

膝関節痛はサプリより運動で解消 座ってばかりの生活を脱却!

若い頃からあまり運動はしてこなかったという神奈川県在住の橋本結実さん(仮名、65)が、5年以上続けている健康法はヨガとアクアビクス。50代の後半から膝(ひざ)が痛み出し、整形外科で膝関節症の診断を受けました。治療法は薬か注射しかないといわれ、まず目を向けたのはグルコサミンやコンドロイチンなどの成分が入った市販のサプリメントでした。「ちょうど私のような症状に向けた商品がたくさん出ていたので使ってみたのですが、半年くらいしてもあまり効いている実感がなくて、やめてしまいました」と橋本さん。

ちょうど同じころ、スポーツジムに入会し、水中で行う有酸素運動、アクアビクスを始めました。さらに近所のヨガスタジオの生徒募集を見つけて体験入会も。運動には縁遠かった橋本さんとしては革新的な行動です。「同年代の友人と話していて、みんな健康のために何かしら“運動”を始めていたんです。私は趣味で絵を描いているので、ついつい長時間座ったまま。膝の痛みも運動不足の警鐘かもと思って一念発起しました」。そしてもうひとつ橋本さんの背中を押したのは、9年前に88歳で亡くなった母親の葬儀のときのこと。「相次いで見送った父の骨と比べてもあまりにスカスカだったのが脳裏に焼き付いています。茶道などが趣味でしたから、やはり座ってばかり。晩年は骨折などでつらい思いもしていました」と、しみじみと振り返ります。

そんな橋本さんがコロナ禍で改めて思ったのは交流の大切さです。以前はよく友人と食事や展覧会などに誘い合って出掛けていたのが、自粛を強いられて家にじっとしていると、いろいろなことが億劫(おっくう)になっている自分に気づいたといいます。「生活に張りがなくなって身だしなみにも気を使わなくなったり(笑)。これも不健康のひとつだなと思います。運動だけしていてもダメですね。心のリフレッシュも心掛けたいと思います」。

40年来続けている 「おいしく食べる」「好奇心持って楽しく動く」

「さあにぎやかにいただく」。さ・さかな、あ・あぶら、に・にく、ぎ・ぎゅうにゅう、や・やさい、か・かいそう、い・いも、た・たまご、だ・だいず、く・くだもの。東京都健康長寿医療センター研究所が開発した食品摂取多様性スコアを構成する食品群の頭文字から、ロコモチャレンジ! 推進協議会が考案。毎日の食事で7品目以上食べていればOK。足りなければ1項目でも増やせないか、考えましょう。
東京都健康長寿医療センター研究所が開発した食品摂取多様性スコアを構成する食品群の頭文字から、ロコモチャレンジ! 推進協議会が考案。毎日の食事で7品目以上食べていればOK。足りなければ1項目でも増やせないか、考えましょう。

「三度の食事をおいしく食べて、自分の足で行きたいところに行けるのが、私の目指す健康」というのは埼玉県在住の稲垣愛子さん(仮名、81)。会社勤めの娘(55)とふたり暮らしですが、お互いに頼らず、家事は基本、各自がやると決めているそう。メインの食材は生協の取り寄せを利用していますが、献立を決めて足りないものは即買いに行く、スーパーの総菜は買わないなど、こだわりの“決まり”があるのだといいます。「朝は手作りのバナナジュースと生協のちょっと高級なロールパン。昼と夜は玄米で、おかずは煮物、焼き魚、みそ汁、漬物とか、そんなものですが、毎食丁寧に作って“あぁおいしい”って食べます(笑)」。

稲垣さんの食生活を支えているのは、食事を大切にする気持ちと旺盛な食欲、さらに歯のケアだと豪語します。「80才でも自分の歯で食べたいと思い、いい歯医者を探したのが40歳くらい。その頃、年を取ってからの健康を考え始めたの。時間をかけて徹底的に口腔ケア(口の中のケア)をしてくれるクリニックにもう40年以上も定期的に通っています。おかげで81歳の今も全部自分の歯、1本も抜いていません!」。

そんな稲垣さんの目下のお悩みは膝痛。家事や買い物など、まめまめしく動くのにも支障になります。整形外科にも通いながら積極的にセルフケアを行っているそうですが、情報源はYouTube! 医師、整体師らが配信する膨大な数の動画の中から、いろいろ試して自分に合うものを探すのが日課だといいます。「なにせ時間はたっぷりありますから(笑) 最近よくやっている2~3分のマッサージがいいみたい。痛みがずいぶんよくなりました」。もっとよくなったらいちばんに、生地問屋が集まる東京・日暮里に繰り出したいという稲垣さん。「ミシンで小物を縫うのが好きなの。手提げとか袋ものを作って親しい人にあげると喜ばれるのよ」と楽しそう。こんな好奇心や意欲も稲垣さんの健康の元かもしれません。

何もしなければ衰えに加速度! 対策は「筋トレ」と「たんぱく質」

年を重ねるごとに全身の筋肉量は減っていきますが、これにより筋力や身体機能が低下することをサルコペニアといいます。知らず知らずに落ちる筋肉量ですが、「横断歩道の黄色信号などで急いでいるのに渡り切れない」「徒歩でよく人に追い抜かれ、追い抜けない」「上り階段がきつい」「よく転ぶ」などは、動くのに重要な下肢の筋肉量や筋力低下に気づくポイント。脚を早く動かすのが難しくなり、バランス力が落ちるので広い歩幅も維持しにくくなるそうです。東京女子医科大学リハビリテーション科教授の若林秀隆先生は「普通に活動的な生活をしている人でも加齢により筋肉量は“1年で1%”ずつ減っていくといわれますが、あまり動かない生活をしているとさらに筋肉の衰えは加速します。中高年は意識して筋肉を鍛えることが大切です」といいます。

筋肉を鍛えるにはやはり筋トレが必要。スクワットや腿(もも)上げなどが有効ですが、日常生活の中で転びそうにならなければ階段を1段飛ばしで上るのもよいです。また体脂肪の燃焼効果や呼吸循環器系の機能向上が期待できるウォーキングも筋肉を鍛えるためにはコツがあるようです。「ただのんびり歩くだけでは筋肉を鍛える効果はありませんが、少々息が上がるくらいの早足なら、筋肉への刺激になり筋トレ効果も期待できます」と若林先生。ここで大切なのは、“鍛える”だけでなく“栄養”も合わせて考える必要があること。「筋肉の材料となるたんぱく質、体を動かすためのエネルギー(炭水化物、脂質)を取っていることではじめて、運動した効果が筋肉合成につながります。健康のための運動と栄養は別々ではなく、常にセットで考えましょう」。

【嚥下おでこ体操】1・手のひらの付け根をおでこに当てる。2・おへそをのぞき込むように頭を斜め下に向け手のひらと頭で力比べをするようにグッと押し合う。3・喉に力が入っているのを感じながら10秒キープ。 10秒×10回を隙間時間に何回でも
若林秀隆先生への取材をもとに作成

中高年にとってもうひとつ重要な筋トレは“喉”。40代になってから若林先生もむせやすくなったと苦笑されますが、これも喉の筋肉の衰えの兆しだそう。「食べ物を飲み込むのも喉の筋肉の働きによるもの。しっかり栄養をとり続けるためにも、喉が気になる人は鍛えましょう」。先生もちょっとした隙間時間に励行しているという『嚥下おでこ体操』、さらにたんぱく質を中心にバランスよく栄養を摂るための合言葉『さあにぎやかにいただく』(上部イラスト参照)もすすめてくださいました。

“健康”に関してはさまざまな考え方や情報も飛び交いますが、中高年が目指すべきは太りすぎず痩せすぎない状態を示す標準体重【計算式:(身長m)2×22kg】で、BMI【計算式:体重㎏÷(身長m)2】が22~25という数値が信頼できる目安になると若林先生はいいます。「若い頃は、健康面では高みを目指して向上する一方のような感覚ですが、中高年は平坦から徐々に下り坂にいることを自覚することも大切です。この長寿時代、100歳を超えれば誰でもサルコペニアやフレイルにはなりえます。やみくもにあらがうのではなく、衰えを少しでもより遅らせるような精神でいきましょう。

若林秀隆医師
若林秀隆(わかばやし・ひでたか)
東京女子医科大学病院 リハビリテーション科 教授・基幹分野長
横浜市立大学医学部卒、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科臨床疫学研究部修了
専門はリハビリテーション栄養、サルコペニア、サルコペニアの摂食嚥下障害。リハビリテーションと栄養の両面からサルコペニア、生活機能を評価し介入し、フレイル高齢者や障害者の生活機能とQOLを最大限高めるリハビリテーション栄養(リハ栄養)を提唱。日本リハビリテーション栄養学会を設立して、現在は監事として活動中。

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