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教育費がかさむ時に夫は定年 コロナ禍の影響も……老後のお金 リアルな声

咲き誇るひまわり/2021年、夏休みは毎日のように家族で散歩に出かけ、普段通らない道などを探検して楽しんだ=高輪はなさん(仮名)提供
2021年、夏休みは毎日のように家族で散歩に出かけ、普段通らない道などを探検して楽しんだ=高輪はなさん(仮名)提供

「老後に2千万必要か?!」などと話題になったこともあり、いずれやって来る老後にどのように備えていこうかと思い悩んでいる人も多くいることでしょう。とはいえ、子どもの教育費や、コロナ禍の影響など、今の暮らしで精いっぱいという声も多く聞こえてきます。 認知症を専門とするウェブサイト「なかまぁる」が2022年2月、「Yahoo!ニュース」を通じて、65歳未満の2千人のYahoo! JAPANユーザーを対象に実施した「老後に必要なお金に関するアンケート」の回答者にインタビューしたリアルな声をお届けします。

40代後半で子育て真っ最中 将来のために節約の日々

「本当は家族でもっと今を楽しみたい。旅行やレジャー、おいしいものを外食したり、子どもたちの心に残るような思い出を作ったりしてやりたい。でも将来の不安が大きくなってきて、やめておこう、諦めようということばかり。子どもたちにも我慢をさせてしまっているなって」と話すのは福岡県在住の高輪はなさん=仮名=(47)。会社員の夫(53)と長女(11)、長男(9)の4人家族です。

若い頃は仕事や趣味に邁進しながら、“35歳くらいまでには子どもを”という夢を抱き、結婚したのが31歳。36歳で第1子、38歳で第2子に恵まれました。今でこそ特別に遅い結婚という印象はありませんが、結婚当時の統計では初婚の平均年齢が夫30.0歳、妻28.2歳、初産の平均年齢が29.2歳。お金に関する人生設計としては「スタートが遅かった」と、ため息をもらします。結婚当初は子育てや老後にお金がかかるとは思いながら、具体的な貯蓄計画まではできなかったといいます。意識が変わったのは子どもが生まれてから。ボーナスは全額貯金、月3万円はためて残ったお金でやりくりするようになりました。それでも、「年間100万円貯金を目標にしていますが、なかなか思うようにはいきません」。

7~8年前には老後の住まいを考えてマイホーム購入も検討しましたが、これから教育費がかかるという段階で40代半ばだった夫がローンを組むのは難しいと断念。5年前からははなさんもパートを始めました。パート代は、子どもたちが大学を出るまでの教育費や夫婦の老後の備えにするつもりです。「まだ教育費がかかる時期に主人は60歳の定年を迎えてしまいます。今の収入を定年まで維持できるのかが第一の不安。私たちの老後も不安だらけですが、今はとりあえず目の前のことで手いっぱい。もっと早く結婚してお金のことも計画的にしていればと、つい思ってしまいますね」。

博多駅の大きなクリスマスツリー/2017年、家族で出かけた博多駅の大きなクリスマスツリーに子どもが大興奮=高輪はなさん(仮名)提供
2017年、家族で出かけた博多駅の大きなクリスマスツリーに子どもが大興奮=高輪はなさん(仮名)提供

子どもたちが社会人になるまではと、日々の生活より貯蓄の比重を大きくするように努めているはなさん。かつては楽しんでいたフラワーアレンジメントやフラダンスなど自分の趣味はすべて封印。夫も好きだったアウトドア、マリンスポーツなどは諦め、映画鑑賞や絵を描くなど手軽な趣味に変えてきたといいます。「今は、身近なお出掛けなどを工夫し、家族の時間を大切にするようにしています」。

コロナで雇用延長ができず! それでも目の前の小さな楽しみを大切に

富士明菜さん=仮名=(60)は夫(63)とともに鳥取県在住。35歳と30歳の息子はすでに独立し、31年前に建てた家で夫婦ふたり暮らしです。

21歳で社内結婚し、1年間は共働き。そのときの明菜さんの収入をほぼ全額貯金し、退職した直後に車の買い替えの時期が来たので貯金を使って一括購入しました。この経験が夫婦のお金の考え方の基本になっています。「住宅ローン以外はすべて現金購入。欲しいものはお金をためてから買う。壮大な貯蓄計画もなく低収入でしたが、無駄な利息に煩わされず、収入の範囲の中で身の丈にあった生活を続けてきました」といいます。

これだけ堅実に生活をしてきた明菜さんですが、これからの生活に不安を感じていないわけではありません。

10年ほど前には、夫が転職して収入が激減しました。明菜さんは17年専業主婦で子育てに専念した後、再就職。本当は65歳まで雇用延長をするつもりでいたのですが、コロナ禍で、実質仕事がなくなり、会社に残る気力が失せたといいます。仕事は若い人に譲っていかなければという思いもあり、21年勤めた会社を定年退職しました。

 2014年からつけ続ける家計簿/夫の転職で収入減が予想された2014年からつけ始めた家計簿。レシートを貼るだけの簡単なものですが、収支が数字で把握できることが安心感につながっています=富士明菜さん(仮名)提供
夫の転職で収入減が予想された2014年からつけ始めた家計簿。レシートを貼るだけの簡単なものですが、収支が数字で把握できることが安心感につながっています=富士明菜さん(仮名)提供

そこへ自宅の修繕時期が重なったのです。唯一ローンを組んで購入した自宅。夫婦で暮らしていた賃貸住宅が、子どもができて手狭になり、住み替えようと広めの部屋を探したものの家賃は高額。急に思い立って自宅を建てたとのこと。「少し広い家をと、少々不便な場所に買ってしまいました。自然豊かで伸び伸び子育てできたのはよかったけれど、時がたてばリフォームが必要になり、不便な場所の一軒家は相続問題も深刻。子どものために建てたつもりが、最終的には子どものためにならないと気づき、一時期鬱々と悩みました」と明菜さんは話します。

家の修繕はなんとか済み、あと20年は暮らせるようになりましたが、車がないと暮らしにくく、夫が免許返納した後のことなど懸案事項は山積。「それでも日々できることをするまでだ」といい切ります。

「結婚以来、少額でも必ず毎月貯金するのが習慣になっていますし、夫の転職をきっかけに家計簿もつけ始めました。低年金を憂える声も聞きますが、考え方次第。平和なこの日本で、ぜいたくでなくても普通にご飯が食べられるのは幸せです」

実は結婚前に夫の難病が見つかり、以来40年以上、通院での治療を続けています。幸い、奇跡的に症状が軽く生活や仕事が続けられていますが、だからこそ、目の前の小さな楽しみ、喜びが大切に思えるそう。

お金の問題は誰にとっても切実ですが、自分や家族の幸せのためのものであることを忘れてはいけないのかもしれません。

 打ち上げ花火/2016年の夏の小さな思い出。こどもたちが初めて見る打ち上げ花火の音にびっくりしてずっとしがみついていました=高輪はなさん(仮名)提供
2016年の夏の小さな思い出。こどもたちが初めて見る打ち上げ花火の音にびっくりしてずっとしがみついていました=高輪はなさん(仮名)提供

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