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寝たきりや認知症で「障害者控除」の適用も おむつ代には医療費控除

ベッドの上でヘルパーの支援を受けながら食事をする高齢者

高齢の親の要介護度が高くなってくると、必要となる介護費用も多くなっていきます。とはいえ、いずれも生活を維持していくために必要な介護サービスであることが多く、介護サービス自体を削るのは難しい場合が多いものです。そのようなときに、家計の支出を少しでも抑えるためには、どのようなことができるのでしょうか。架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに、納税額を減らしたり、医療や介護の自己負担割合の引き下げにつながったりすることもある「障害者控除」について解説します。アドバイスしてくださるのは、高齢になっても安心、安全に財産管理や契約など経済活動を円滑に行える社会の実現に向けて取り組む一般社団法人「日本意思決定支援推進機構」の理事で、社会福祉士の上林里佳さんです。

【今回のエピソード】
東京で働く朝日太陽さん(52)。地方で一人暮らしをしている母の月子さん(80)は2年前、骨折をきっかけに介護保険サービスを使い始めました。自宅でひとり暮らしを続けているものの、今では、歩くことが難しくなった上に、認知症も進み、1日の大半をベッドの上で過ごすようになり、要介護4になりました。介護保険制度のサービスをめいっぱい利用してなんとか生活を支えていますが、おむつが必要になるなど、様々な費用も加わり、支出は増えていくばかりです。これまでは月子さんの年金から費用をまかなっていましたが、「これ以上、支出が増えれば、息子の自分が金銭面で支援する必要が出てくるかも……」と太陽さんは気がかりです。そんなとき、高齢者の場合、状態によっては税法上の「障害者控除」を受けることで、支出を抑えられることもあるという話を聞きました。どういうことなのでしょうか。

備えのためのアドバイス

障害者控除というと、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳(以下、障害者手帳)を取得している人だけが対象だと思っている人が少なくありません。しかし、所得税法上、障害者控除の対象となる障害者は、「精神または身体に障害のある65歳以上の人で、障害の程度が知的障害者または身体障害者に準ずるものとして、市町村長等の認定を受けている人」などと規定されています。このため、障害者手帳を取得していなくても、障害者控除の対象と認められることがあるのです。

障害者手帳がなくても控除対象に ただし、申請が必要

自治体のホームページなどでは「ねたきり状態にある高齢者」や「認知症のある高齢者」が障害者控除の対象になり得るなどと示されていることが多いようですが、認定されるかどうかは市町村が個別に判断することになっています。

障害者控除の対象に該当すると認定されれば、所得税では「障害者控除(27万円)」、より重い障害があると判断された場合には「特別障害者控除(40万円)」を受けることができます。住民税では「障害者控除(26万円)」、「特別障害者控除(30万円)」が受けられます。

ただし、介護保険制度の要介護認定を受けているだけでは自動的には障害者控除は受けられません。この控除の対象となるには、まず市区町村に申請する必要があります。市区町村は、介護保険制度の要介護認定時の調査結果などをもとに障害者控除の対象となるかどうかを判断し、認められれば、「障害者控除対象者認定証」が交付されます。税の確定申告の際に、この認定証を提出することで、控除を受けることができます。障害者控除対象者認定証については、介護保険や高齢者支援を担当する部署に相談してみるとよいでしょう。

控除の適用で、非課税世帯に変わることも

所得税や住民税は、「課税所得」に応じて納税額が算定されます。所得税では、公的年金や厚生年金といった企業年金などを受給している場合、雑所得として課税対象となります。ただし、まずは、年齢や年金額に応じて決まる公的年金等控除額を差し引いた後に残る額が課税所得となります。その課税所得をさらに減らすことができるのが、障害者控除などの所得控除の制度です。所得控除の額が多ければ多いほど課税所得が減ります。課税所得が一定以上減れば、適用される所得税率が下がることもあるので、結果として大幅な納税額の減少につながる可能性もあります。

また、所得控除の適用を受けることで、課税所得に応じて決まる医療保険の自己負担割合(1~3割)が下がったり、医療費や介護費が高額になっても一定の限度額までしか支払わなくてもよい高額療養費制度(医療保険)や高額介護サービス費(介護保険)といった負担軽減策を受けやすくなったりもします。場合によっては、障害者控除などの所得控除を受けることで、課税世帯から非課税世帯へと変わることもあり、より様々な負担軽減策を使えるようになる可能性が出てきます。

おむつ代が医療費控除の対象になることも

薬局でおむつや薬を買う男性
薬局でおむつや薬を買う男性

所得控除には様々なものがありますが、「医療費控除」も利用できる可能性があります。医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に払った医療費について、一定の金額を所得控除できるというものです。病院に入院したり、外来を受診してかかったりした医療費や、薬局で購入した風邪薬などについて医療費控除を受けられることは、比較的よく知られています。このほか、高齢者のおむつ代も、医療費控除の対象になる場合があります。医療費控除の対象となるのは、6カ月以上にわたり寝たきりで、医師の治療を受けている方のおむつ代です。

初めて控除を受けるときは、その人の治療を行っている医療機関が発行する「おむつ使用証明書」と、おむつを購入時の領収書をもとに作成した「医療費控除の明細書」を、確定申告の際に添付したり、提示したりすることが必要です。2年目以降は、「おむつ使用証明書」に代えて、市町村が介護保険法に基づく要介護認定の際に用いた主治医の意見書の写しなどの書類があれば、医療費控除の対象となります。

こうした所得控除を適切に活用することで、介護や医療にかかる費用を抑えつつ、必要な医療や介護のサービスは受けられるようにしていきたいものです。

上林里佳さん
上林里佳(かんばやし・りか)
京都市出身。上林里佳社会福祉士事務所代表。日本意思決定支援推進機構理事。成年後見人。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、証券外務員。元証券会社・元地域包括支援センター職員。福祉、医療、法律、金融機関に対し「認知症高齢者対応実践編」「認知症高齢者の意思決定支援」「シニア層の健康と医療」「成年後見人」「高齢者虐待対応」等の講演を行う。「認知症の人にやさしい金融ガイド~多職種連携から高齢者への対応を学ぶ」等、共著多数。

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