「沖縄ひとり旅&講演会」後編
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
前回の「沖縄ひとり旅&講演会 前編」では、空港のユニバーサルデザインに関する委員会で知った「介助サービス」を利用して無事に那覇空港に到着したまでをつづりました。
今回はその続きになります。
那覇空港から直接向かったのは、空港から近くの講演会の会場でした。
企画してくださったのは、コロナ禍で普及したオンライン会議を通じて出会った支援者のみなさまでした。
昨年12月上旬のこのときは、コロナも落ち着いていたこともあり、会場での講演会が開催できました。
わたしにとっては、昨年11月の京都以来のリアル講演会でした。
やはりオンラインとの違いを感じます。
対面でのリアルな反応、会場にいらして下さっている方の表情。
全てが会場と一体になって感じられました。
はじめての対談相手をして下さった若年性認知症コーディネーターの安次富麻紀さんとの息もピッタリにできました。
安次富さんがお声かけ下さり、
県内の若年性認知症当事者、ご家族もたくさんご来場頂き、うれしさを感じました。
わたしの単独での講演会は、きっとこの沖縄がはじめてです。
タイトルも事前に候補を出し、打ち合わせを進めてきました。
そのタイトルは
「ひと足先に認知症になったわたしから伝えたいこと」
会場で、大きなタイトル幕を見上げ一瞬
「あれ? 大きく出すぎてしまったかな…」(笑)
そんな緊張感もありました。
講演終了後は、会場にいらして下さったご本人やご家族との
交流会も短い時間でしたが行うことができました。
笑い合い、仲間たちとのとても素敵な時間が流れました。
今回、企画に携わって下さったみなさまに感謝申し上げます。
そして、夕方遅くにホテルにチェックインし、
2年ぶりに滞在したホテルの関係者との再会に、思わずハグしたい気持ちを抑えました。
前回は家族と一緒だったのですが、ホテルの客室部長さんとのちょっとした会話の中で、わたしが若年性認知症であることを伝えたことがありました。
今回の宿泊では、分かりやすくアクセスしやすいお部屋に通して下さり、
また夕食でホテル内のレストランを訪れた際にはさりげないサポートがあり、
ひとり旅と感じさせないホスピタリティーが温かくわたしを包んでくれました。
この日は自分へのご褒美にエステを体験しました。
施術室からシャワールームに戻る際も、
さりげなく目印のようにそっと扉が開けてあり、
優しく誘導して下さっていることがすぐにわかりました。
そんな気遣いを感じ1日目をリラックスして終了し、
ゆっくりと窓を開けているとバルコニーから沖縄民謡が聴こえてくる心地よさの中、
眠りに就きました。
翌日は、安次富さんがホテルまで迎えに来て下さり、
「うらそえ介護福祉会」の与那覇涼さん、安保奈緒さんが、わたしがリクエストしていたパワースポットなどに連れて行って下さいました!
こんなにも良くして頂き、なんだか不思議な感覚でした。
オンラインでつながっていたものの、はじめましてのようなリアル初対面でした。
今まで沖縄を訪れたときより、
地元の方ならではの観光や今まで口にしたことがないおいしい沖縄そばを頂き、
楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
与那覇さん、安保さんたちと別れ、
安次富さんがホテルまでまた送ってくださいました。
2泊3日では足りないくらいでした。
いや、2泊以上の充実した時間を過ごすことが出来ました。
最終日、空港ではもうおひとりお会いしたかった中松光さんが足を運んで下さり、
ちょっとの時間でしたが、お話もできました。
搭乗時間が近づき、わたしはみなさんに見送って頂き、
行きに利用した「介助サービス」専用通路から保安検査場を通過し、
振り返っては大きく手を振って、
だんだんと見えなくなっていくお互いの姿にポロリ……
そして、機内搭乗後もスムーズに着席できました。
離陸し、沖縄の地を離れた瞬間にわたしの目からはたくさんの涙があふれました。
たくさんの温かいサポートを頂きながら、ひとりで沖縄に来られた!
また、沖縄のみなさんにお会いすることが出来るのか…
またひとりで、そのほかの地域のたくさんの会いたい方、当事者のみなさんに会いに行けるのか…
何とも言葉ではうまく表現できない感動と達成感、感覚に号泣してしまいました。
シートベルトランプの点灯サインが消えると
すぐに心配して客室乗務員の方が駆けつけてきました。
「どうかしましたか? 大丈夫ですか?」
わたしは何を語ったか、はっきりとは覚えてはいませんが、
先に述べたようなことを伝えたかと思います。
今回、空港のユニバーサルデザインに関する委員会への参画で知った「介助サービス」をはじめて利用して旅をしました。
みなさんがその方に合ったサポートをして下さいます。
認知症と診断を受けたご本人はもちろん、ご病気などで不安がある方、
何より私自身が、発達障がいのあった息子との旅行時にこのサービスを知っていて、
もっとちゃんと伝えられサポートして頂けていたらまた違った「思い出」ができたかもしれないと感じました。
もっと快適な「空の旅」を続けられていたかもしれません。
ぜひ、ご家族の方でも、認知症のご本人との旅行にためらっていらっしゃる方がいましたら
ご利用の空港に問い合わせてみて下さい。
(今はコロナ禍でなかなか思うような旅行が難しいかも知れませんが…)
各航空会社や空港ビルの運営会社は、様々なサービスを提供されています。
何が必要か、ちょっとした搭乗時間までにゆっくり休める場所がないか?
光や音から遮断される空間はないか?
わたしはユニバーサルデザインに関する委員会に参加した際にこんなお話もいたしました。
認知症当事者は疲労しやすく、人によっては光や音に過敏になりやすい。
息子も幼少期(発達障がいの症状が強いとき)に敏感さを感じていたことなどから
海外にある「クールダウンルーム」の必要性などを提案させて頂きました。
「介助サービス」を利用することでご家族の方もご本人と一緒に「空の旅」を楽しむことができると思います。
諦めたくない気持ちに、きっと大切な「ヒント」になると思います。
そして、サポートして頂けるはずだと願っております。
今、2022年1月3日に記録を見返してこの原稿を書いています。
東京と沖縄のコロナ新規感染者がグッと増えたニュースを目にして、
東京も心配ですが、医療機関が東京より少ない沖縄県のみなさまへの想いが…
コロナの感染状況が落ち着いていた時期にしっかりと検査をしてから沖縄入りをするなど、
自分なりにコロナウイルスを持ち込まないように常に徹底した行動を心がけ、
沖縄入りが出来たことに
改めてみなさまに感謝申し上げます。