「おじいちゃんクサイ」とは言わせない においのトレンドはガラムマサラ!?
アルツハイマー型認知症のタカオさん。スケッチされたその不思議な世界観を、間学(あいだ・がく)さんがコレクションしています。日本のみならず、海外の人の注目も集めている作品の数々。タカオさんのガイドつきで紹介します。ようこそ、タカオ美術館へ。
- 作品名:朝風呂の後で
- ニッポンの高度成長期を共に戦ってきた仲間たちの間では、においの三原則と言えば「ポマード」「メンタム」「仁丹」と決まっておった。わしらの時代のアイデンティティーと言ってもいい。それが可愛い孫たちの「おじいちゃんクサイ!」の一言で世の中は激変したんじゃ。シャンプーにボディーソープ、アフターシェーブローションにスキンケアクリーム。何層にも塗りたくった薬草系のにおいが全身を覆い、わしの野性の古いアイデンティティーは居心地悪そうに体のどこかに雲隠れしちまった。それがどうじゃ、最近になってひょっこり顔を出したんじゃ。それもマトリョーシカのように何体も。決まって朝風呂の後で鏡をのぞいている時に、やつらは鏡の向こうからわしにこう言うんじゃよ。
「ラベンダーや海藻系は飽きたから、ニンニクか山椒系にして欲しいんだけど」「問題あるなら胡麻風味でもいいよ!」「いやオレはガラムマサラがいいな!」
そうだ、昼飯は久しぶりにカレーが食いたいな。それともニンニクをたっぷり利かせたボルシチも悪くないか。
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