あるメンバーさんの卒業

こんにちは。さとうみきです。
今回は、少し時間をさかのぼり、昨年のクリスマスのことを書きます。その日は、DAYS BLG! はちおうじ(以下、BLG! )でみんなに頼られ、愛されてきた、あるメンバーさん(BLG!では利用者をメンバーと呼びます)の卒業の日でもありました。
実を言うとこの一年は、コロナ禍で持病の悪化による急な入院などがあり、私たちが面会もできないまま、卒業されたメンバーさんもいました。
でも、今回お話しするのは、そういう突然の卒業とは違い、事前に卒業が決まっていたメンバーさんとのお別れです。
そのメンバーさんと私は約一年半の時間を
BLG! はちおうじでご一緒させていただきました。
BLG! はちおうじでは「営業本部長」の肩書を持ち、メンバーさんたちが作った商品の売り込み、講演、メディア取材、地域での認知症啓発活動などを続けて来られました。
明るくて、キレのあるトークの中にもユーモアがあり、
そのメンバーさんの周りでは常に笑いが絶えませんでした。

私がBLG! はちおうじに通うようになって、
最初の出逢いで印象的だったのは、こんな会話です。
「私も認知症で、若年性認知症。みなさんと一緒なんですよ」
営業本部長に、私はそう、話しかけたかと思います。
すると
「若いのに認知症か。まだまだ半人前の認知症だから大丈夫!」
今になって思い返すと、「半人前の認知症だから大丈夫」という言葉には、不安そうな私に対するエールの意味があったように感じます。まだBLG! はちおうじになじめていなかった私でしたが、その気さくな一言から一気に、メンバーさんと「たくさん話をしたい!」と気持ちが切り替わりました。
BLG! はちおうじで、こんなに楽しそうにしているメンバーさんたち。いつかはみんな、BLG! はちおうじを卒業して、「次のステージ」へ行くのだろうか。
私自身も、BLG! はちおうじを卒業した次のステージはどうなるんだろう……。そう考えることがありました。

「営業本部長」の卒業の日には、ご家族からお手紙をいただきました。それを拝読して改めて、BLG! はちおうじが果たしている役割の大切さ、つまり
「誰かのために何かしたい」という気持ちがある元気なご本人が、仲間と共に活動する空間と時間をつくることの大切さ、そして、
社会とのつながりや、仲間とのつながりの必要性を再確認したのでした。
若年性認知症の方、まだデイサービスにはなじめない方、
そんな方々の「空白の時間」を、それぞれがやりたいことを仲間と共に成し遂げる大切な時間に変える、そんな居場所がBLG! はちおうじなのです。
BLG! はちおうじ代表の守谷さんはよく、メンバーさんと一緒に地域包括支援センターに遊びに行きます。それは、メンバーさんの近況を伝えるというメンバーさんと地域包括支援センター双方の情報共有のためでもあり、
そして、卒業が決まったメンバーさんが次のステージにスムーズに移行できるようにする準備でもあることに気が付きました。

私は当事者スタッフとして、
メンバーさんの卒業日にご一緒するのは今回が初めてのことでした。
数日前から、そのメンバーさんが社会に投げかけてきた活動を振り返り、
涙ばかりがあふれ、寂しさとともに、自分を含めた他のメンバーもいつかは通るであろう道に目を向けることへの怖さを感じておりました。
当日も朝から寂しさ、無念さ、悔しさ、怖さから涙ばかりでした……
笑顔で「ありがとう」を伝えたいのに私は笑顔にならなきゃと思うほど泣けてきて笑い泣き。
この日の私は一日中、涙があふれていました。
お昼はメンバーさん手作りのランチをいただき、
おやつの時間は大好きな豆大福をみんなで食べながら談笑。時間はあっという間に過ぎました。
先輩方の認知症の旅路は、いずれ私たちが通る道でもあります。今から私なりにできることをして、
その時までの「備え」も行う。
そして、今を楽しく生きることを先輩方から教えていただききました。
きっと次のステージでも輝き続け、みなさんに笑いを届けて下さっているだろうと、その姿を思い浮かべながら。
本当にありがとうございました!
「よっ! 元気か?」なんて、ひょっこり遊びに来てくださっているかのように、
メンバーさんとの思い出は私のココロの中で輝き続けています。

