賞味期限切れでも「うまいうまい」。口から滴らせているのは何でしょう
アルツハイマー型認知症の「タカオさん」。その不思議な世界観を、間学(あいだ・がく)さんがスケッチしました。作品の数々は、日本のみならず海外の人の注目も集めています。ところで間さん、タカオさんは何と言っていたんですか?
わしらが記憶を食らって生きているように、万年筆はインクを食って生きておるんじゃよ。だから時々、美味いインクをあげたりすると、お返しに美味い言葉や線や図を返してくれるんじゃ。そうそう、わしが愛用していた製図用のカラス口なんかはよくしゃべる愛想のいい奴でな。大したご馳走なんかあげてないのにわしをよく助けてくれておったよ。それで久しぶりに机の引き出しを覗いたら、まだちゃんとそこにいるんだな。だから久しぶりに、本当に久しぶりにインクを食わしてやったんじゃ。そしたら美味い美味いって喜んでおったよ。賞味期限切れのインクじゃったがね。奴は広告の裏によれた字で「ありがとう」だってさ。
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