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夫の幻視「否定しないように」話を合わせ…疲れます【お悩み相談室】

介護支援専門員(ケアマネジャー)の長澤かほるさんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.1年前に夫(70歳)がレビー小体型認知症と診断されました。「知らない子どもが布団の上にいる」「猫が窓からたくさん入ってきた」など幻視があるのですが、医師からは「否定しないように」と言われているので話を合わせています。二人暮らしなので、毎回話を合わせていると、疲れてしまいます。(65歳・女性)

A.私の父もレビー小体型認知症でした。そのきっかけもあり、現在「レビー小体型認知症サポートネットワーク東京」の代表を務めていて、こうしたご相談はよく受けます。

相談者はもしかしたら医師の「否定しない」というアドバイスを「話を合わせる」ことだと解釈されたのかもしれません。幻視は、レビー小体型認知症では60%程度の人にみられる典型的な症状で、基本的な対応は「否定も肯定もしない」ということです。肯定して話を合わせてしまうと、妄想に発展してしまうことがあります。また、「否定しない」というのは言い方のことを指していて「そんなもの、いるはずがない」「気持ち悪いことを言わないで」など、本人を拒絶し、混乱させるような感情的な言い方をしないということです。

では、どのように対応すればいいのでしょうか。重要なのは、「病気だから見えてしまう」ということ、そして「私には見えない」という事実を伝えることです。相談者にしてみればただ話を合わせるだけでは、ご自分の感情に蓋をするようなものですから、ストレスがたまる一方だと思います。でも事実を伝えるのであれば、それほど負担にはならないのではないでしょうか。レビー小体型認知症サポートネットワークでは、レビー小体型認知症の本人や家族、専門家たちが集まる交流会を開いています。以前その交流会で本人が自己紹介するときに「私には幻視があります」とはっきりおっしゃっていて、出席者一同驚いたことがありました。レビー小体型認知症について、今ほどは知られていなかったころのことです。娘さんによく話を聞くと、お母さんに幻視が出始めたころは病気のことがよくわからず、「おかしいんじゃないの!」と否定しては、毎日のようにけんかをしていたそうです。そんなある日、娘さんがインターネットで検索して、お母さんの気味の悪い発言がレビー小体型認知症による幻視ではないか、と気づき「お母さん、幻視が見える病気だったみたい。本当に見えていたのね。今までごめんね」と説明したところ、お母さんも病気のせいで自分だけが見えていると理解でき、それ以降はけんかすることもなくなったそうです。

ただ、病気の症状だと説得するだけではなく、見えているものに対して、本人がどう感じているのかということをぜひ、聞いてあげてほしいと思います。幻視の種類によっては、見えても特に支障がない場合もあれば、見えると気持ち悪かったり、怖かったりする場合があります。「私には見えないけれど、それが見えると気持ち悪いよね」など、感情を共有するような言葉をかけると、本人のつらい気持ちに寄り添えると思います。

そして幻視によって本人がつらい思いをしているのであれば、できればなくしてあげたいですよね。幻視は部屋の環境によって錯覚が起きる‶錯視″のこともあります。私の父も幻視があったのですが、夜中にトイレに行くときに通るスペースに「男の人が座っていて気持ち悪い」と言うのです。ちょうどそのあたりに母の手芸用品を入れた段ボールが置いてあったので、そのせいではないかと思い、父と一緒に段ボールの上にいらなくなったシーツをかけてみました。また、父には必ず照明をつけるようにと言いました。すると翌朝「おかげで男の人が消えたよ」と電話で伝えてくれました。見えているものがある場所に、幻視(錯視)につながるようなものがないかどうか、確認してみるといいと思います。

幻視は、見えているそのものに意識して近寄ると見えなくなったり、実際に触ってもらうと実体がないことに気づいてもらえたりします。そうしたことを繰り返し経験してもらうことで、幻視だということをより理解できるかもしれません。工夫次第でお互いの日々のつらさが解消されることもあるので、受け身になるばかりではなく、いろいろと試してみるといいと思います。

【まとめ】いるはずのないものが「見える」と言われたときの対処法は?

  • 否定も肯定もせず、「病気だから見える」という事実を伝える
  • 見えるとどんな気持ちになるかを聞き、気持ちに寄り添う
  • 幻視(錯視)につながるものがないかどうか、環境を見直す

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