認知症とともにあるウェブメディア

介護施設で、あるある探検隊♪

世界中を食べ歩いた婦人が選ぶ逸品は?あるある探検隊の活動報告28

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま介護施設をまわっています。テレビや劇場の一般客相手と違って、施設の利用者さんたちを笑顔にするのは、やっぱり難しい! そんな2人が見つけた、今日の介護現場の“あるある”は――。

レギュラーと介護施設のみなさん
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

介護レクリエーションの現場で、まず場の空気を暖めるために始める「アイスブレイク」は、利用者たちの緊張をほぐすため、「好きな場所」や「好きな食べもの」などいつも同じような簡単な質問から入る。しかし、そこからの展開はいつも驚くほどに違う。

この日の主役は、見るからにビシッとお上品な身なりの80代のご婦人。これまでに行ったことがある旅行先を尋ねると——。

「私はね、ヨーロッパはほとんど行かせていただきましたけど。ドイツなんかもよかったわ。フランスもね、オホホホ」

話し方もゆったりと上品。大阪やら名古屋やら国内旅行の答えが多いなかで、ここの人たちとは違うわ、と言わんばかりの凛とした自意識も感じる。

これは話の広げ甲斐があるぞ。そう直感した松本くんは、さらに深掘りして質問した。

「いろんな美味しいものに出会ったんでしょうね」
「ええ、その国ならではのものを食べるのが好きなんですの」
「じゃあ、世界でいちばん美味しかったものは?」

そうですねえ、あそこにも行きましたしねえ、と考えるご婦人。どんなすごい名産品が出てくるのかと、息をのんで答えを待つ会場。
すると、ご婦人が一言。

「メンマ!」

えっと、それはもしかして……。
「ええ、日本で食べたの」

ラーメンの、ですよね?
「そう、海外旅行から帰って来たときのラーメンよ」

百歩譲ってラーメンの具材だとして、それでも焼き豚、タマゴ、ナルトといろいろあるなかで、なぜメンマ!

天才的な“フリ”と“オチ”に、会場は大盛り上がり。その天賦の才能にちょっとジェラシーを感じるレギュラーの2人であった。

松本くん 僕らの介護レクリエーションを見てくれた介護施設のスタッフさんから、よく「利用者さんとの距離感が絶妙で勉強になります。どうやってあの距離感を作ればいいですか?」って聞かれるけど、これって感覚的なものとしか言いようがないんよね。

西川くん ちゃんとした方法論として伝えられたらええんやけどなあ。たしかにスタッフさんが、僕たちみたいに利用者さんたちと掛け合いをしようとしても、立場的にもなかなかうまくいかないかもしれないな。

松本くん 僕ら的には、芸人としての経験を生かして距離感を取っているだけなんやけどな。この利用者さんはネタに食いついてないとか、逆に、あんまり話はできないようだけど、ちゃんと理解して受け入れられているとか、そういう距離感を僕らは普通の人より敏感に感じてるところがあるな。なんせ、芸歴20年やし。

西川くん 介護レクリエーションの勉強をしていたときに、「サービス」と「ホスピタリティ」が重要だって教わったやん。全員に同じものを提供するのが「サービス」。で、一人ひとりに寄り添って考えるのが「ホスピタリティ」。僕らは、その感覚を“お笑い”で育ててきた感じやね。

松本くん そこがプロの技なんです(笑)。なんとなくの嗅覚というか、しゃべりかけた時の顔とか目線、あと食いつき。さらに、いろいろ話しかけて揺さぶってみて、微妙な反応を常に意識している。その感覚は、長い芸歴のなかで培ったものやね。

西川くん 利用者さんとの距離の取り方に「なにか決まりがあるんですか?」という質問もされるけど、それも同じやな。決まりというわけじゃないけど、介護レクをやっていると利用者さんそれぞれの介護度がだいたいわかる。一緒にやってくれているけど、あまり理解していないな、とか。この人は会話ができるな、とか。やりたくない人、楽しんでる人の違いも、前より察知する力がついてきたと思うで。

松本くん コンビとしての“決まり”みたいなものはあるね。僕がまずいことを言って変な空気になったら、西川くんがすかさず僕を悪者にして笑いに変える。だから、失敗を恐れずに冒険しやすい、というのはあるな。

西川くん あの日の「メンマ」っていう“斜め上”の答えをしたご婦人も、認知症の度合いはそれほど高くない感じやったね。身なりにも気を使っていて、しっかりしていた。だから、ツッコんでもおかしな雰囲気にならないってことを、松本くんは最初からわかってたんやな。

松本くん ほんま、素でおもしろい人やった(笑)。まあ、重い認知症の人も、そうでない人も、対応に区別はないけどな。笑いの意味はわからないかもしれないけど、みんなが笑ってる会場にいると、それだけで楽しい気持ちになってくれればいい。

西川くん これは、いつものステージでも同じやね。たまに、本気で「いじってはいかん」オーラを出しているお客さんがいるけど(笑)。

松本くん そういえばおったなー。先日の介護関係の講演会で、2階席にバットマンのジョーカーのコスプレをして、ずっと変な踊りをしているお客さんがいたやん。あれは「いじってはいかん」オーラが出ていた。

西川くん そうそう、お互い阿吽の呼吸でスルー。講演が終わって袖に入ってから、松本くんと「いたなー!」って顔を見合わせたな。これも長い芸歴で培った経験値や(笑)。

松本くん まあ、「ヘンな人」とひとくくりに言っても、なにをもって「ヘン」なのかなんて、誰にもわからないもんな。そんなこと言ったら、僕らだってじゅうぶん「ヘンな人」やろうし。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

(編集協力/ Power News 編集部)

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア