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日韓で認知症の介護語り合うシンポジウム 課題は「家族主義」の克服

「認知症の人と家族の会」と「韓国痴呆協会」が2019年12月19日、交流・連携事業の一環として国際シンポジウムを開催しました。この交流・連携事業は今回が2回目で、1回目は約1年前に日本の認知症本人や家族、専門職が訪韓する形で開催されました。東京都新宿区で開催した今回のテーマは、「日韓における家族介護の現状と未来」。両国の認知症介護の現状を情報交換する中で、共通点や違いが見えてきました。

認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫さんは「両国の明るい未来に向けて力を合わせていく」と挨拶
認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫さんは「両国の明るい未来に向けて力を合わせていく」と挨拶

開会の挨拶は、認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫さんと、韓国痴呆協会代表のウ・ジョンインさん。
「このシンポジウムが家族介護を巡るさまざまな施策や取り組みの充実と友好関係の発展につながると確信しています。両国の明るい未来に向けて力を合わせていくことを表明しまして開催の言葉とさせていただきます」(鈴木さん)
「韓国の認知症問題を解決するのはもちろん、世界の高齢化問題を解決するのに、今回の交流が役に立つと思います」(ウさん)

韓国痴呆協会代表のウ・ジョンインさん
韓国痴呆協会代表のウ・ジョンインさん
立命館大学産業社会学部特任教授の津止正敏さん
立命館大学産業社会学部特任教授の津止正敏さん

第1部の講演・発表ではまず、立命館大学産業社会学部特任教授の津止正敏さんが、「日本の家族介護者支援の現状と課題」について講演しました。津止さんは、家族介護の実態が変容していることを指摘。同居の主たる介護者として、家事に不慣れな夫や息子など男性介護者の割合が増えていること、別居や遠距離で通いながら、子育てしながら、働きながらなど、「ながら介護」が介護の典型となっていることを指摘しました。
しかし現行の介護保険制度では、同居家族がいると生活援助サービスの利用が制限されることから、家族介護者の支援方策を検討していく必要性を訴えました。

KNID認知症相談コールセンター部長のチェ・ギョンジャさん
KNID認知症相談コールセンター部長のチェ・ギョンジャさん

次に登壇したのは、韓国国立認知症研究所(KNID)認知症相談コールセンター部長のチェ・ギョンジャさん。「韓国の家族負担~現状分析と結果」をテーマに、認知症の本人や家族からの相談を受け付けているコールセンターの取り組みを紹介。相談者の特性や相談内容の現状などについてのデータを発表しました。

忠南大学教授パク・ミョンハさん
忠南大学教授パク・ミョンハさん

続いて登壇した忠南大学教授パク・ミョンハさんの講演テーマは「家族負担解消のための韓国認知症家族支持プログラム」。韓国における認知症家族のための地域社会プログラムのほか、外出できない家族のための家庭訪問プログラム、ウェブベースのプログラムなど、個々の事情に合わせた家族支援などについて紹介しました。
第1部の最後には、認知症の人と家族の会東京都支部代表の大野教子さんが同会の歴史や活動を紹介しました。

認知症の人と家族の会東京都支部代表の大野教子さん
認知症の人と家族の会東京都支部代表の大野教子さん

日本も韓国も苦しみや葛藤は同じ

第2部のパネルディスカッションでは、「これからの家族支援で求められることは何か」をテーマに、認知症の母を父や姉とともに介護しているチャン・ソンウンさん、若年性認知症の妻を15年近く介護している高沢保さんが、それぞれ自身の介護体験や思いを語りました。両者は暮らす国も認知症本人との関係も違いますが、排便のトラブルや夜間の徘徊など、同じように悩まされる心身ともにつらい時期があり、苦しみや葛藤を経ていることがわかりました。

チャン・ソンウンさん、高沢保さんともに介護者。国は違えども悩みの種は同じ
チャン・ソンウンさん、高沢保さんともに介護者。国は違えども悩みの種は同じ

チャンさんが、ソウル市支援の「認知症家族介護休暇制度」によって有給休暇と介護支援費用を取得して家族旅行に出かけた話や、認知症の人を介護している家族が“療養保護士”の資格を取得すると家族に現金が給付される「介護療養保護制度」について話すと、会場から驚きの声が上がりました。
一方、高沢さんの「今もっとも心配していることは妻の看取りについて。妻は認知症末期の状態に入っていて、延命措置はしたくはないけれど、まだ考えがまとまっていない」という発言に対して、チャンさんは「今のお話を聞いて、私もこれから母の状態が悪くなったときのために、どんな心の準備をしたらいいのか考えたい」と話しました。

韓国痴呆協会事務局長のソン・チクンさん
韓国痴呆協会事務局長のソン・チクンさん

また、韓国痴呆協会事務局長のソン・チクンさんは、韓国も日本と同様に核家族化が進んでいることに触れました。現代の核家族化の中で独身の高齢者と大学生がともに暮らす「世代間のホームシェアリング」や「レンタル家族」など、日本にみられるスタイルを例に“新家族”について言及しました。

最後に冒頭で講演した立命館大学の津止さんが「家族主義をどう克服するのかが、日本と韓国の共通の課題。介護が社会化していくのは望ましいことだけれど、無機質で機械的になるのはよくない。どんな形であれ、家族が介護に関わっていけるような介護環境が重要です。介護に出会った人生は、より深い人生になるのかもしれない。これから皆さんと歩いたことのない道を歩こうとしているわけですので、一緒に試行錯誤していきたいと思います」とまとめ、会場は大きな拍手で包まれました。

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