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介護施設で、あるある探検隊♪

まったく笑いがない…凍てつく現場を救う新システム あるある探検隊の活動報告19

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま介護施設をまわっています。テレビや劇場の一般客相手と違って、施設の利用者さんたちを笑顔にするのは、やっぱり難しい! そんな2人が見つけた、今日の介護現場の“あるある”は――。

レギュラーと介護施設のみなさん
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

とある施設の介護レクリエーションで、会場を盛り上げる“鉄板”のオリジナルゲーム「満腹アヒルの大冒険」を始めたレギュラーの2人。両手で唇をアヒルのように押さえながら料理名を言って、それを当ててもらうゲームだ。
この時の正解は「おにぎり」。ところが……。

「せーの♪ 満腹アヒル、なに食べた? 『ん・ご・ん・ん』。はい、わかる人いますか?」

そんなテンション高めの松本くんの問いかけにも、会場の反応はほぼゼロ。「聞こえへん」という答えばかりで、いまいちノッてこない。

「じゃあ、ヒントです。外で食べることもありますよ。ツナが人気かな。では、もう1回。ぼ・ぐ・ぐ・り。わかった人は手を挙げてください!」

シーン……。
間違った答えでもいいから誰かがなにか言ってくれないことには、まったく盛り上がらないのが、このゲームのウィークポイントだ。

「だれもいませんか? それでは最後。これならどうですか? はい、いきますよ! お・に・ぎ・り!」

いつもならここで、どこからともなく「答え言ってるやん!」などのツッコミが入って、盛り上がるはずの場面。ところが会場は、相変わらずシーンと静まりかえっている。
仕方ない。こういう時もある。

そんな凍てつく会場で、一呼吸置いてから1人、「ハハハハ」と声を上げて笑い始めた男性利用者がいた。そして、真顔でこうつぶやくのだった。

「なるほど、そういう笑いの取り方か……おもしろいね(棒読み)」

この方いったい何者!?
あまりに冷静な分析に、自分たちの“ベタな笑い”を見透かされたようで、思わず恥ずかしさを感じるレギュラーの2人だった。

松本くん 介護レクリエーションの会場は、当然のことながら高齢者が多いから、“わかりやすい笑い”のほうがウケると思いがちやろ。でも、やってみると「おにぎり」のときみたいに妙に冷静に分析されることもある。難しいなあ。劇場の笑いも難しいけど、高齢者の笑いもほんま、難しいわ。

西川くん これこそ介護レクリエーションの課題やね。介護度が高い利用者さんが多いと思ってベタなことやりすぎると、しっかり分析されて、おー恥ずかし……みたいな。

松本くん そうそう。ターゲットを見極めるのが難しい。単純にわかりやすいことをやりすぎてもダメなんや。利用者さんの介護度や人数によっても、会場の質はぜんぜん変わるしな。“さじ加減”を試行錯誤しながら、進めていくしかないってことやね。

西川くん まあ、「わかりやすさ」のさじ加減が難しいのは、普段の舞台でも同じやね。

松本くん そうや。わかりやすければいいってわけじゃない。これは永遠のジレンマやな。普段の舞台で「あるある探検隊」をやるときも、実はこう見えて、僕ら葛藤しているしな(笑)。

西川くん そのままストレートな「あるあるネタ」がいいのか。ちょっとひねってアレンジした「あるあるネタ」のほうがいいのか。

松本くん むしろ最近では「あるある」じゃなくて、一回転して「ないない」を放り込んで笑いを取りに行くこともある。

西川くん だけど、こうした“考えすぎ”の笑いは介護施設ではダメやね。

松本くん そうやね。そこで編み出したのが、人生の大先輩である施設の利用者さんたちから「教えてもらう」というスタンスを、「あるある探検隊」に取り入れるワザや。

西川くん 前にも言ったけど、介護レクリエーションでは「教えてあげる」じゃなくて、「教えてください」というスタンスが鉄則やからね。人生の後輩になりきることが重要や。

松本くん そう、そう。たとえば、「あるある探検隊」のネタで「買ったその日が消費期限」っていうのがあるやんか。ところが、それを普通にやっても、利用者さんたちは「ふーん、よくある話だね」っていう感じで、まったく笑いが起きない。その失敗から、西川くんの“おばあちゃん好き”という面を押し出すようになったんやね。

西川くん あるある探検隊に、「僕のおばあちゃんから聞いたんですけど……」という前フリを入れるやつね。自分らの話じゃなくて、僕のおばあちゃんが言っていたんですけど、これって本当なんですか? という体で投げかける。そうしたら、ものすごい盛り上がったな。「ボットン便所に人落ちる」とか「ゴキブリ出たら、足で踏む」とかな(笑)。

松本くん ほんま、この“おばあちゃんシステム”を導入してから、「あるある~」とか、「昔あったわ~」とかいう声が客席からあがることがグンと増えた。

西川くん 「あるある」って、いわゆる共感やからね。あばあちゃんの豆知識を共感する時間、ってことやな。

松本くん 逆に「そんなのあらへんわ~」みたいな話で盛り上がれば、僕が「西川くんのおばあちゃん、ウソついちゃダメやないか」みたいに突っ込みを入れて、おばあちゃんのせいにして逃げられるのもいい(笑)。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな……て、なんや、ぜんぶうちのおばあちゃんのおかげやないかい!

(編集協力/ Power News 編集部)

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