介護の裏ワザ、これってどうよ?

レジを通さず店外へ…あわや万引き寸前回避にコメを買え? これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

買った覚えがない商品「ちょっ・・・!」

あれ? ちょっとまって、それお会計した……?

ある日、じーちゃんとばーちゃん、ゆずこの3人でスーパーで買い物をしていた時のことです。一週間分の食料を買って、さあ帰ろう! でもちょっと買いすぎちゃったなあ……と思いながら店を出ようとした瞬間。目の前を歩くじーちゃんとばーちゃんが見慣れないモノを持っていたのです。
ばーちゃんがつかんでいたのは、5個入りのみかんの袋。あれ? みかんなんて買ったけ……?と一瞬混乱するわたし。そして次にじーちゃんを見ると、手には派手なリボンを付けた、ケタケタと不気味に笑いながら動くピンク色のくまの人形がありました。

いやいや、それは絶対に買ってねえ。

絶対にレジを通していない商品を2つも持って、今にも店を出ようとしている一行。このままじゃ店を出た直後に背後から、「お客さま、何かお忘れものはないですか?」と万引きGメン(万引きを発見・取り締まる人)から声をかけられてしまう!

万引きGメンといえば、昔2時間ドラマで女優の木の実〇ナさんがよくその役をやっていて、商品の棚の影から『(犯人が万引きを)やるよ、やるよ……やったよ!!』と確保する瞬間に憧れたっけ。そして20代のとき一度だけ、『万引きGメン募集!(初心者可)』という募集を見つけてガチで応募したわたし。その結果、書類選考で落とされたわたし。無念。

意識をそらせて、手の中の“ブツ”を奪え作戦!

混乱したのかいろいろな思い出が頭の中を駆け巡ってしまいましたが、こうしている間にも二人は商品を持って外に出ようとしています。でも今までの経験上、ここで「それはまだお金払ってないでしょ!」「なんで持ってきちゃったの!」と強く正論を言ってしまうと、暴れて手が付けられなくなる可能性もあります。そこでとっさに出たのが、
「あ! そういえばお米買い忘れちゃった!」という一言。※本当に買い忘れていたのですが、フリでも構いません。
「重いから一緒にきてよ~。あとどれ選べばいいか分からないから、ばーちゃん選んで」と話しかけます(じーちゃんは黙って後をついてきます)。

そしてお米売り場についたら、「ちょっとこれ持ってて」といって2キロか5キロくらいのお米を二人に持ってもらうのです。すると自然と手からみかんや人形が離れるので、そのまま会話を続ければ、いつの間にか忘れてしまいます。
うちの場合は持っていた物に特別固執することなく、「これはなんだろう」と手にとったはいいものの、そのまま忘れて無意識で外に出ようとしてしまうことが多かった気がします。中には「私はどうしてもこれがほしい!」と固執する方もいるかも知れませんが、意識を自然と別の方に向けてみる、荷物を持ってもらうなどしてほかに何も持てないよう両手を塞いでしまうというのも一つの方法だと思います。

「あ! ちょっと買い忘れたのがあった!! ついでにコレ戻してくるね」『あぶなかった・・・!』

そしてようやく店を出て、自分の車に荷物を積むゆずこ。しかし、

「あ゛」

スーパーのカートの下に入れたトイレットペーパーと、2リットルのお茶6本入りの段ボールの存在をすっかり忘れ、精算しないで駐車場に来ておりました。やばいやばいやばいやばい、木の実○ナがくる。人のことよりまず自分じゃん……と、ふたたびトボトボとスーパーへ戻っていくはめになったのでした。

家族ができること、企業ができること

この一連の行動を、プロはどう見るのでしょうか。 認知症の在宅医療推進や認知症情報の発信に積極的に取り組み、『認知症の人を理解したいと思ったとき読む本 正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)の監修を務める、湘南いなほクリニックの院長・内門大丈先生にお話しを聞きました。

「このような場合、ゆずこさんが思ったとおり第一のポイントは「相手を刺激してはいけない」です。例え正論であっても、頭ごなしに相手を否定してはいけません。本人は万引きをするつもりがなくても、今回のように手に取ったことを忘れて持ち続けてしまったり、持ち帰ってしまうという方もいらっしゃいます。ほかのことに意識を向けて問題を解決できたのは素晴らしいです。ですが、それができるのは認知症の人を家族で介護されている人や医療従事者など、認知症の知識がある一部の人に限られます。

認知症といっても人それぞれで、会話ができる方もいればそうでない方もいます。お店の人やお客さんなど、ほかの人たちがちょっと見たり話したりするだけで相手が『認知症なんだな』と気付くのは難しいことです」
お店の人も「相手が認知症」と分からなかったら、通常の対応をしますよね。すると「怒られた」「否定された」と感じた本人がより感情的になって、さらに大事になってしまうかも……。

「そうですね。以前、『認知症の家族が、お店の商品を勝手に家に持って帰ってきてしまう』と悩まれているご家庭がありました。家族ができることとして、まずお店(個人商店)側に事情を説明したそうです。そして情報を共有した上である程度のお金を預けておいて、そこから差し引いてもらったとか。このケースは特別かも知れませんが、大切なのは大事になる前に周囲の人に相談したり、情報を共有したりすることだと思います。
これからますます高齢者が増えて、認知症も決して他人事ではない時代がやってきます。そこで企業側も負担にならない程度に、「認知症に関する研修」などを取り入れて頂けると嬉しいですね。世の中全体で、認知症に関する知識がより深まればいいなと思います」

内門大丈先生
内門大丈先生
湘南いなほクリニック院長。いなほクリニックグループ共同代表。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本認知症学会専門医・指導医。認知症の在宅医療推進や認知症情報の情報発信に積極的に取り組んでいる。『認知症の人を理解したいと思ったとき読む本  正しい知識とやさしい寄り添い方』(大和出版)監修。

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