介護+○○=私のシゴト

歌って踊る、謎の赤ジャケ集団。伝えたいのは「特別じゃない。普通の仕事」

東京ケアリーダーズのメンバー 番本鷹也さん(左)と中井政宗さん
東京ケアリーダーズのメンバー 番本鷹也さん(左)と中井政宗さん

歌やダンスのパフォーマンスで介護の仕事の魅力を伝える「東京ケアリーダーズ」。東京都高齢者福祉施設協議会に加盟している特別養護老人ホームやデイサービスなどで働く若手の介護福祉士26人が集まり2016年に発足しました。メンバーの番本鷹也さん(31)と中井政宗さん(25)に話を聞きました。

――東京ケアリーダーズでは「歌って踊れるユニットを目指した」と伺いました。

番本 東京ケアリーダーズの目的は業界のイメージアップや仕事の魅力を現場から伝えること。メンバーは、おおむね30歳くらいまでの介護福祉士です。私は施設長に声をかけられて参加しました。いきなり赤いジャケットを着て、歌って踊る、と聞かされた時は驚きましたけどね。

中井 振り付けが難しくてスタジオを借りてダンスの練習もしました。福祉系の大学やイベントに出向いて歌って踊る、という活動が最初は多かったですね。

――中高生向けに出張授業や介護体験もしていますね。活動の手応えはありますか。

番本 研修でフリーアナウンサーの町亞聖さんや芸人さんから話し方やプレゼン方法を習いました。伝えることは難しいですが、面白いなと感じました。

東京ケアリーダーズ 集合写真(東社協提供)
東京ケアリーダーズ 集合写真(東社協提供)

中井 介護の現場にこういう元気な若者がいるんだよ、っていう活動がメーンでした。それだけだと続けられなかったかもしれないけれど、やっている側にとっては施設間の「横のつながり」ができて視野が広がったこと、仕事に対して違う良い面が見えたことが貴重な体験になっています。

番本 自分の施設以外の情報って本当にないんです。その中で、燃え尽きたり視野が狭くなったりして辞めてしまう人もいると思う。同業の同世代で、上下関係がない仲間が愚痴も悩みも100%共感してくれる。心が軽くなるし、価値観が変わることもあります。この活動の「裏設定」と思うくらいいい経験になっています。

中井 隔月の研修や会議後に飲み会もしますが、メンバーは面白い人が多くて違う視点の考え方ややり方を聞くと刺激になります。改めていい仕事だなって思うようにもなりました。

面白いメンバーばかりと言う番本さん(左)と中井さん(右)
面白いメンバーばかりと言う番本さん(左)と中井さん(右)

――お2人が介護の仕事を選んだ理由を教えてください。

番本 介護に興味を持ったのは高校生の時です。ホームヘルパー2級(現在は介護職員初任者研修)の資格がとれるカリキュラムがあって軽い気持ちで参加しました。2日間の実習に行った特養で、はじめて認知症の方と接したのですが、何も話せないし出来ない。1日目はただ座っているだけ。色々な人と話すのが得意だと思っていたのでショックでした。そんな中、職員の方は楽しそうに高齢者の方と話している。「かっこいいな」「すごいな」と。それで介護福祉士を目指して専門学校に進みました。

中井 6人きょうだいの長男で子供には慣れていて、保育士になろうと思って専門学校に行きました。そこで、保育士と幼稚園教諭だけでなく介護福祉士の資格もとりました。将来的なことや給与など現実的なことを考えて介護を選択しました。

――普段の仕事内容を教えてください。

番本 うちの施設は五つの勤務体系があって、22人の入所者さんをシフト制で担当しています。朝番は午前7時~午後4時、一番遅い勤務は午後1時~午後10時。食事、排泄、入浴の「三大介護」のほか、施設内のイベントなどを手掛けています。

「社会福祉法人大三島育徳会 博水の郷」所属 番本鷹也さん
「社会福祉法人大三島育徳会 博水の郷」所属 番本鷹也さん

中井 職員の中には子育て中の職員もいますよ。夜勤は入らず、産休をとって戻ってくる職員も多いです。

――きつい仕事というイメージについてどう感じていますか。

番本 そういう質問はよくされるんですが、きつい、大変だという気持ちはないんです。毎日楽しく勤めているし、自分が成長できるし。業務に慣れた3年目くらいから感じているんですが、メディアがネガティブな情報ばかりを発信しているんじゃないかなって。施設がテレビ取材をされた時、放送では実態とぜんぜん違った編集をされていました。キャリアを重ねるほど介護の仕事って面白いし誇りもあります。ですが、その自分の実感と世間のイメージとがどんどん離れていっている気がします。人に携わる仕事ってクリエーティブな要素も多いし、逆に大変じゃない仕事ってあるんですかって聞きたいですよね。

中井 僕は介護の仕事を選んで良かったなと思っていますし、特別な仕事をしているつもりはありません。普通に職場に来て、働いています。自分なりに工夫したり観察したり、ほかの仕事と同じです。介護の仕事が汚いとか悪いイメージがあるのかもしれないけれど、それに反発する意見が「介護の仕事は素晴らしいですよ。みんな頑張っていますよ」というばかりなのには違和感があるんです。例えば一般企業が「素晴らしい素敵な仕事です!」って声高に言ってばかりだったらちょっと怪しくないですか(笑)。楽しいこともそうでないこともある普通の仕事だと思っています。

「特別養護老人ホームケアポート板橋」所属 中井政宗さん
「特別養護老人ホームケアポート板橋」所属 中井政宗さん

――仕事のやりがいや、印象に残っているエピソードはありますか。

番本 看取りは、ある意味でやりがいにつながるのかもしれません。人の死に立ち会うことって自分の親戚でもなかなかないことです。はじめての看取りは働いて1カ月目くらいの時、職員に人気がある105歳の女性でした。人の死に立ち会う衝撃的な体験で不思議な気持ちがしました。仕事をはじめて6年目のころには、「自分の家を見に行きたい」と希望している入所者の方がいて、看護師などにも相談して吸引器を持って一緒に家を見に行きました。泣きながら喜んでくださって、一緒に家の前で写真を撮りました。お亡くなりになる半年ほど前です。

中井 自分にとっては職場だけれど、入所者さんにとってここが人生の生活の場なんだということを強く自覚してから、すごい仕事をしているんだなと感じています。人の生活の場に自分が介入している。それはなかなか面白い仕事ですよ。食事をとらない方が、自分の工夫で食べてくれた、というようなことももちろん嬉しいです。

――東京ケアリーダーズの今後の活動予定を教えてください。

番本 現場の声を伝えることをもっとやっていきたいです。4月から新メンバーも加わって、それぞれが企画を持ち寄って話し合いをしています。まず伝えたいのは、中高生よりも下の小学生くらいの子どもたち。介護福祉のイメージがないうちに良いイメージを与えられるといいなあと。YouTubeで発信していく、という意見も出ています。

中井 福祉や介護にまったく関心がない人たちに興味をもってもらうのは課題かもしれません。介護職につくには優しい人じゃなきゃダメ、とかないですから(笑)。いつも笑顔でなければダメという人もいるけど、人生は笑っているだけのはずはなくて、泣いたり怒ったりもしますよね。人間味のある人、いろいろな経験を持つ人が業界に来ることが入所者さんにとってもいいことだと感じています。

番本 介護はチームケアだからあまりにも自分勝手で人の意見を聞かない人はやめたほうがいいかもしれないけど……。まあ、それはどんな仕事でもそうですかね(笑)。みんな知らないですもん、介護や福祉のこと。「楽しいよ」「悪くないよ」と自分が感じている事実を伝えていきたいです。    

東京ケアリーダーズのメンバー 番本鷹也さん(左)と中井政宗さん
東京ケアリーダーズのメンバー 番本鷹也さん(左)と中井政宗さん

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