ばーちゃんの服をあっという間に脱がせる孫ギャル これって介護の裏技?
青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!
ばーちゃんを風呂に入れるミッション パターン3
お風呂を嫌がるばーちゃんに、自分が超絶ダメ人間になってお風呂に入れてもらったり、服を着たまま入っちゃったりと、あの手この手で向き合い方を模索中のゆずこ。しかし毎回その手が使えるとは限りません。そこで新たに考えたのが「若い女子の怒涛のテンションと勢いで、有無を言わさずお風呂にいれちゃおう」作戦です。
ばーちゃんはなぜか、同居しているわたしや定期的に様子を見に来る母やおばよりも、たまにしか会わない身内の言うことはちゃんと聞くのです。久しぶりに会う嬉しさや緊張感などもあるのでしょうが、暴れないし暴言もはかないし、めっちゃ“良い子”になる。そんなばーちゃんの豹変ぶりに、どこかで「なんであんなに態度が違うのよ」と嫉妬のようなそうでないようなモヤモヤを抱えつつ、ときどき遊びにくる妹(21歳)と、いとこの女の子(18歳)に協力を仰いでみました。
若い女子のエネルギーになすすべなし!
「ばーちゃぁあああん、久しぶり~!」「え、めっちゃ若返ってない?」「ちょっと聞いてよ~」と、家に来るなりものすごい勢いのマシンガントークで、ばーちゃんのお決まりの「あんたは誰だ。出て行っとくれ」攻撃をねじ伏せます。妹といとこのテンションの高さにすぐには付いていけないばーちゃんでしたが、やっぱりどこか嬉しそう。
ご飯を食べ、お茶をし、その後お風呂に誘導してもらいます。しかし会話の中で「お風呂」というワードが出た途端、「あたしは入らないよ! 汗なんかこれっぽっちもかいていないんだからね!」と、汗をダラダラかきながら拒否するばーちゃん。
女子二人はそんな言葉を軽くかわし、「え~ちょっとばーちゃん、美肌すぎる(笑)」「ボディクリ―ムに何使ってんの~教えてよ~」「あ、みんなで恋バナしようよ」と、世間話をしながらあっという間に服を脱がせて3人でお風呂に入っていきました。……なんだその技は。
ちなみに、とくに話す恋バナもなく、ボディークリームにも無頓着なゆずこは使えない技なので、「入浴中に嫌がったらもうそこで止めちゃえばいいや作戦」をよく使っていました。私たちは当たり前のように、まず体を洗って、髪を洗って、湯船に浸かって、出る(順番は個人差あるでしょうが)という一連の動きをしますよね。でも一気にやろうとするんじゃなくて、無理なら髪だけでもいいし、体だけでもいい。もちろん、介護する側にとっては面倒だったり、「そんな手間をかけられない」と思われるかもしれませんが、無理に強制してお風呂ぎらいになってしまうよりはいいかなぁと思っていました。
入浴にルールなんてない! 自分で作ったルールに縛られないで
介護には正解なんてないし、方法も幾通りもあります。やり方を変えたり、組み合わせたり、今回のように協力をあおいだり。まるでボケ防止の脳トレのようです(笑)
認知症の人と家族の会の全国本部の副代表理事であり、『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)の著者、川崎幸クリニックの院長・杉山孝博医師は、これらのゆずこの入浴介助テクをどう見るのでしょうか。
「全身を洗ってそれから髪もと、初めからフルコースでやろうとする必要は確かにありません。相手の反応を見つつ、『今日は腰まででいいや』など臨機応変にやってみる。お風呂に入ったら絶対にこれをやらなきゃいけないというルールもなければ、順番やスケジュールにこだわる必要もないんです。
それと認知症の症状としては、どうしても身近な人にあたってしまったり強く症状を示す傾向があるので、今回のゆずこさんのようにあまり頻繫に会わない家族に協力を仰ぐのもいいと思います。施設でも入浴の担当者を定期的に変更するというのも効果的ですよ」
わたしのように「よっしゃ今回はどの手でいこうか♪」と、できる限りふざけ……いや、楽しんでしまうのも、追いつめられずに長く向き合うコツなのかも知れません。自分で作ったルールに縛られることなく、気楽に、柔軟に、そして良い意味でテキトーに。
- 杉山孝博先生
- 川崎幸クリニック院長。認知症の人と家族の会の全国本部の副代表理事であり、神奈川県支部の代表を務める。著書に『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)、その他多数。