介護の裏ワザ、これってどうよ?

認知症のばーちゃんに女中扱いされた孫の逆襲 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

「女中さん、女中さんや」「は!?」

孫を本気で女中扱いするばーちゃん

認知症の方と接する中で、「あなたはだあれ?」と我が子を他人と間違えたり、家族を認識できなくなったりするという例もよく聞きます。
そんな私もよく母と間違われていましたが、一番多かったのは家事や雑用をする女中(じょちゅう)さんです。ご飯を作ったり洗たくをしていると、背後から、「おい女中さんや。仏壇の掃除と、風呂も洗っておくれ」などと命令されます。

もちろんばーちゃんにとって、それは孫をいじめていたり、嫌がらせとしてわざと言っているわけではありません。あくまでも、心の底から「目の前の相手は本当に女中さんなんだ」と本気で思っている。
認知症の症状に、家族や友人を認識できなくなる「見当識障害」という症状がありますが、だからといって毎日顔をあわせるたびに、「おい女中さんよ!」なんて言われ続けては、こっちもストレスが溜まる一方です。そこで、意を決してある反撃をしてみました。いわば、女中の謀反(むほん)。やられっぱなしは性に合いません……!

「おばあさま、ちょっとよろしいでしょうか」女中の逆襲

いつものように、庭掃除や洗いものをしているゆずこに向かって、「女中さんや。もっと早く手を動かしてもらえるかねえ」「それが終わったら障子も貼り替えておくれよ」など、ばーちゃんは色々と注文を付けてきます。
いくら本気で「ゆずこは女中」と思い込んでいるとはいえ、もの凄い勢いで色々命令をされていると、「あれ? 命令ばっかりしてきて、もしかしてばーちゃんて結構『性格に難あり』なんじゃ……?」と、なかなか黒い感情がよぎることも多々ありました。もちろん誰にも言わないけれど。

そんな命令をしてくるばーちゃんに対して、しずしずと正座をし、三つ指をついてこう語りかけます。
ゆずこ「おばあさま。大変恐縮なのですが“おひま”を頂きたく思います……。つきましては、お給金として5000円を頂戴できますでしょうか」
ばーちゃん「うっ……!」
ゆずこ「女中と呼ぶからには、頂けるんですよね……?」

女中、泥酔!

この方法は、あまりにも孫を女中扱いすることが増えたときや、当たりがきつくなるなど、存在を虐げられている(?)と感じたとき限定で発動します。もちろん家事は家事でちゃんとこなしているので、経済的虐待にはあてはまらない(はず)。

そして、ゆずこは無事に5000円のお給金をゲットし、「女中クビになっちった(はぁと)」「女中辞めたから飲もうぜー!」と、友人にすぐさま電話をしました。適度なストレス発散法として女中は5000円を握りしめ、立ち飲み居酒屋でビールをあおるのです(生中よりもビン派です)。

ツラいときには、第三者を装ってみる

これまでの認知症の向き合い方と同様に、いくら正論で「私は女中じゃないんだよ」「女中呼ばわりしないで!」と訴えても、効果はあまり期待できません。長年、高齢者医療に取り組んでいる横浜相原病院の院長で、『認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)の著者・吉田勝明先生に聞きました。

「正論を突きつけてみたところであまり効果はありません。たとえ『そうじゃないでしょ!』と本当のことを伝えても、その内容よりも『くどくどと説教された』『怒られた』という感情だけが残ります。それならば、相手に合わせた演技をしてみるのも一つの手でしょうね。訂正するのではなく、臨機応変に立ち回ってみる。
ただ、いくら演技とはいえ、ずっと女中呼ばわりされたらツラいですよね。演技もいいけど、そんなときは『あら? 女中さんは先ほどお帰りになりましたよ』『今度会ったときにちゃんと伝えておきますね』と、第三者として話してみてください。相手に合せるといってもすべてを受け入れる必要はなく、ツラいところ、しんどいところは上手く受け流す。心に余裕が持てる距離感を心掛けてみてください」

わたしも時々、「女中さんはお休みでーす」「しばらく故郷(クニ)に帰らせていただきまーす」と言って、おせんべボリボリ、ゴロゴロ転がりながら、女中業をサボりまくっておりました。
追い込まれないよう、頑張りすぎないよう、適度にちょうどよくが肝心ですね。

〈つぎを読む〉「いいから座ってて」でヘコむばーちゃんを活性化 これって介護の裏技?

吉田勝明先生
横浜相原病院院長。日本老年精神医学会専門医・精神科専門医。「今を楽しく」をモットーに、認知症の患者と全力で向き合う。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)など。

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