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介護の裏ワザ、これってどうよ?

脱がぬなら、脱がずに入ろう祖母と風呂 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

褒めていたら、毎日自分からモチ肌アピールするようになった・・・

「ダメ人間になる!」のほか、使える入浴テクニック

段々暑さも厳しくなってきた今日この頃、お風呂に入れてあげたいのに、どうしても嫌がられてしまうことがあります。
以前、入浴を拒否されるときには「プライド高い認知症のばーちゃんにダメ人間作戦」という方法もご紹介しましたが、そのほかにも、とにかく相手を褒めまくるという策も併用しておりました。方法は簡単、褒めるだけ。しかし、褒めるといっても相手を観察して、どんな褒め方をされたら一番喜ぶか、どこを褒められたいかを見極めて、その“ツボ”を突くとより効果がアップします。

服を着たまま「いつのまにか」入浴しちゃう!

うちの場合は、昔からばーちゃんはモチ肌と肌の白さが自慢だったので、「え、ちょっとまって。ばーちゃんの肌がキレイすぎる」「もっとよく見せて。美肌の秘密はなんなの?」と褒めちぎります。
その褒め方も重要で、ばーちゃんの場合は甲高い声でまくしたてるより、ゆっくりと目を合せてこちらが本当に関心しているように低めの声で少々オーバーリアクションで褒めると、照れながら喜んでくれるのです。

じーちゃんは反対で、「よっ大将! 調子はどうよ!」「広い背中を見せておくれよ!」とテンポと勢いよく褒めまくると、コロッと言うことを聞いてくれる(笑)

いずれにせよ、話しながらさりげなく一枚二枚と服を脱がせます。
肌がきれいになる秘訣を聞きつつ、流れで“しれっ”とお風呂に一緒に入ってしまいます。誰かと話しながらおもむろにテーブルを拭いたり、自分の周りを片付けたり、気が付いたらついでにやっている行動に近い感覚です。
「さあ、今からお風呂に入ろう!」と意気込まずに、話しながら気が付いたら湯船に浸かっていた……という感じでしょうか。

また、さりげなく脱がしている途中でも、なぜか下着や靴下だけは「絶対に脱ぎたくない!」と強く拒否されることがありました。そんなときは無理して裸にしようとせず、そのままゆっくり入浴をうながします。結局洗濯機に入れてしまうのだから服が濡れたって変わらないし、「お風呂は絶対全裸で入らないとダメ!」ルールもありません。
「脱ぎたくない!このまま入る」と言い張るばーちゃんに、
『なにそれ面白そう。あたしもやってみよ(笑)』と乗っかるゆずこ。

そんな超大ざっぱな性格なので、結構な頻度で一緒に自分もTシャツや靴下をはいたまま湯船に浸かっていました。そして湯船にプカプカと浮かぶ二人。傍から見たら異様な光景かも知れません。小中学校時代に、いざというときに呼吸や体勢を確保するために習った「着衣水泳」みたいで、これが意外と楽しいのです。

ちなみに、おフロにオレンジジュースを浮かべてのんだこともあります

プライドは傷つけないで! 臨機応変にゆる~く構える

認知症の人と家族の会の全国本部の副代表理事であり、『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)の著者、川崎幸クリニックの院長・杉山孝博医師いわく、入浴を拒否する方に一番やってはいけない対処法は「相手の気持ちを無視したり、自尊心を傷つけること」だといいます。

「『お風呂に入らないと不潔だよ』というような声掛けも、本人のプライドを猛烈に傷つけて、より反発を強めてしまいます。汚い、臭い、などの言葉はご法度。入れば気持ちいいことは分かっていても、私たちだって面白いテレビがやっていたり、どうしても気分が乗らなくて入りたくないときもありますよね。認知症の方もそれは同じです。
『何時までにお風呂に入れなきゃ』『ちゃんと体の隅々まで洗わなきゃ』などの決まりごとも、かえって介護する人の負担になる場合もあります。また、無理に入浴を促すと、お風呂=プライドを傷つけられたり強い言葉を言われて急かされる嫌なもの、と認識されてしまう可能性もあります。

だからこそ臨機応変に、今回のゆずこさんのように一緒に下着で入浴してもいいでしょう。相手を持ち上げて褒めるのも有効ですね。僕は昔、元々は温泉巡りが好きだったのに入浴を拒否するようになってしまったおじいさんに対して、温泉の素を色々持ち込んで“温泉うんちく”を教えてもらいました。すると、それまでの拒否がウソだったように『ここはアルカリ泉で肌がすべすべになってな……』と語りながら機嫌よく入浴してくれました。強制せずに相手をじっくり見て何が効果的か考えてみてもいいかもしれませんね」

ゆずこのマイブームは、服を着たままお風呂でばーちゃんとスイカを食べること。どうせ汚れるし、すぐに洗えるし。工夫とズボラは違いますが、結果オーライです。

杉山孝博・川崎幸クリニック院長
杉山孝博先生
川崎幸クリニック院長。認知症の人と家族の会の全国本部の副代表理事であり、神奈川県支部の代表を務める。著書に『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)、その他多数。

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