「万引き」繰り返す認知症の夫 お店とどう付き合えば…【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
見守り支援を行う梅澤宗一郎さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の夫(67歳)が、近所のあちこちの店で万引きを繰り返します。私が謝りに行き、最初は理解してもらえましたが、何度も繰り返すので「病気だからと言って許されるものではない」「もう店に来させないようにしてほしい」などと言われてしまいました。ずっと監視しているわけにもいかず、どうすればいいのかわかりません。(65歳・女性)
A.アルツハイマー型認知症や統合失調症などでも、お店の物を持って出てしまうことはありますが、認知症という診断や“繰り返す”という点から、認知症の一つである前頭側頭型認知症(ピック病)の可能性が考えられますね。
ここでは、ピック病であるという前提でお話しさせていただきます。
人にもよりますが、特徴としては、社会的ルールを守ったり他人に配慮したりすることが難しくなり、衝動的な行動をしてしまいます。お店の物を持ってきてしまったり、こだわりが強くなったり、同じ行動を繰り返すといったさまざまな症状がみられます。
一般的にはその特徴が知られていないため、周囲に理解されにくく、行動が活発なのでご家族も困惑してしまうことが多いですね。
現在、ピック病を完全に治したり、進行を止める薬はありませんが、生活環境を調整したり、場合によってはその特徴を活かして、ご家族の負担を軽くすることはできると思います。
たとえば、同じパターンを繰り返すという行動的な特徴があります。私が関わった男性は、散歩で通る道や利用する店を限定していき、なじみの店を増やし、理解を得る事で落ち着いていかれました。
それでも物を持ってきてしまうことがやめられないときは、お店に事情を説明してあらかじめお金を渡しておくなど、地域に協力をお願いすることも一つです。ケアマネジャーなど第三者に付き添ってもらい、病気について伝えてもらうと、お店側も受け入れやすいかもしれません。
理解してもらえるお店を見つけられず、この方法が難しい場合は、デイサービスに通ってもらうなど、家族だけでどうにかしようと思わずに、特徴的な症状に対して適切なケアができる介護サービスなどと連携して、協力体制を得られると良いですね。
中には、本人も悪いことだとはわかっている人もいますが、それでも衝動を抑えられずに、苦しんでいるはずです。本人の衝動や行動を抑えつけようとすると、逆に症状が悪化することがあります。抑えつけず、少しずつでも周囲の理解を得られるといいですね。
【まとめ】認知症の人が万引きを繰り返す
- 行動パターンを限定して顔なじみと理解を増やす
- 衝動や行動を抑えつけない
- 専門職や介護サービスと連携する