介護の裏ワザ、これってどうよ?

あの白いやつ食わせろ!認知症のじーちゃんは今日も… これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

一食で1万円使うことも・・・

寿司と中華の繰り返し。うらやましいけど大丈夫?

毎日の食事も、人生を充実させる大切な要素の一つ。わたしがじーちゃんばーちゃんと一緒に住む前から、二人がずっと通っていたお店があります。それは、近所にある寿司屋と中華料理屋。いつも頼むものは決まっていて、寿司屋では二人ともまぐろセット。中華料理では、ばーちゃんが五目焼きそばで、じーちゃんが麻婆丼を頼みます。わたしが同居した当時は二人とも介助なしで歩ける状態だったのですが、それにしてもほぼ毎日決まって同じ店に行き、毎回同じものを食べ……。経済的にもかなりの負担となり、「年金の大半は食費に消える」という脅威のエンゲル係数を叩き出していました。
なにより、栄養の偏りが心配という思いもありますが、次第に「今かかっている食費よりも節約して、安くて美味しい料理を作ってやる!」という謎の闘志が芽生えてしまい、遂にお客さん(じーちゃん、ばーちゃん)奪還作戦を開始しました。

じーちゃんばーちゃん奪還作戦! あの料理で寿司屋に勝つ!

わたしも仕事があるので、しっかりと栄養を考えた料理や凝った料理は作れません。
そこで考えたのが、さっと作れて栄養もガッツリ取れる、しかも食べやすい(じーちゃんはあまり飲みこむ力が強くないので)と三拍子そろった料理、そう「シチュー」です!

入れる野菜で栄養バランスが調整できますし、なによりご飯にかけて食べるとリゾットやお粥のように柔らかく、一体化してすごく食べやすい。トマトやチーズを入れたり、ブロッコリーを細かく切ってグリーンシチューのようにしたり。味にバリエーションも付けられます。

「シーチューウ!! チッチューウ! シーチューウー!!」

特にじーちゃんはこのシチューが大のお気に入り。「今日もあの“白いの”作ってくれ」と、なんと最大6日連続でリクエストされました。

そのうち私の方がシチューに飽きてしまい、「今日こそはカレーにしてやる! ここが分かれ道だ」とカレーのルーを手に取ると、背後から「シッチュウ!」『あの白いの』「シッチュウ!」『白いやつを食わせろ』と、シチューコールが鳴り止まないではありませんか。
そしていつも根負けし、2日に1度は朝昼晩のどこかでシチュー(残りは冷凍したり、グラタンにしたり)という献立になっていたのです。

食べたいものが献立、食べたいときが食事の時間

栄養のバランスなど食の悩みは尽きませんが、「認知症の人と家族の会」全国本部の副代表理事であり、『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)の著者、川崎幸クリニック院長の杉山孝博先生は、「食事に対して、そこまで細かく気を遣わなくても大丈夫です」と言います。

「もちろん栄養バランスが偏りすぎていたり、ほとんど何も食べたがらないなど極端なケースや事情もあるので一概にはいえませんが、『ものすごくきちんと管理しなきゃ』と頑張り過ぎてしまうと、介護は長続きしません。朝、昼、晩と、決まった時間に食事をとるというのは私たちにとっては当たり前のことですが、その“当たり前”を認知症の方々にまであてはめる必要はないのです。大切なのは、『健康のために無理やりでも〇〇を食べさせよう』『栄養をコントロールしよう』と押しつけすぎないこと。相手のために良かれと思ってやったことでも、こちらに対して負の感情を持ってしまいます。
あまり神経質にならず、“相手の食べたいものが献立”、“食べたいときが食事の時間”というくらいに、良い意味で大ざっぱに、余裕を持って向き合ってみてください」

食べすぎて若干シチューが嫌いになったわたしですが、いい意味で“適当”に、栄養と食事の楽しみ方を模索していこうと思います。

杉山孝博先生
杉山孝博先生
川崎幸クリニック院長。認知症の人と家族の会の全国本部の副代表理事であり、神奈川県支部の代表を務める。著書に『認知症の9大法則 50症状と対応策』(法研)、その他多数。

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